8章 王国潜伏編 2話 新たな拠点
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商人ギルド長のラニアが準備した馬車に乗り王都を出る。商人ギルド所有馬者は止められることなく南門を通過して行く。
「すげぇ、検査免除かよ・・」
街道を走り続けて行くと小さな集落に入る。そして集落の通りの奥に小高い丘が見えてきた。今から見に行く物件はそこに存在している。
「あの坂道を登った先の丘の頂上にありますから〜」
御者台からラニアの声が聞こえる。
「わかりました〜」
とりあえず、俺は返事をする。そして馬車が丘を上りきるとゆっくり速度を落とし止まり荷台から俺達は降りると目の前に立派な塀があった。
「こちらが、資料で見た物件です。境界線の塀は完成していますが、建物はありません」
「本当に途中で止まっているんですね・・」
とりあえず塀を見て答えていると、リル達が走り出し高さ4メートル程の高さがある塀を軽く飛び越えて敷地へ姿を消して行く。
「あっ!勝手に入っちゃダメだろ!」
俺の注意を気にする様子のないリル達に溜息をついていると、ラニアが苦笑いしながら正面入り口の門へと案内してくれて俺も敷地へと入って行く。
広い敷地は手入れがされていないため荒れ放題だった。だけど、ソレを忘れさせるほどの絶景がその先にある。
「おぉ、コレはなかなかの景色ですねラニアさん」
「はい。他には無い景色だと思いますよ」
「・・・・ここなら、王城ごとぶっ飛ばすこともできるな。いや、範囲魔法で囲って街に被害を出すことなくイケるか?・・ん〜悩むなこれは・・」
心の思惑が口から溢れていたようで、ラニアが引きつった顔で説明を続ける。
「えっとですね、夜になると夜景も素晴らしいようです。ただ、街への買い物が不便になりますね。水源の井戸がありますので生活魔法が使えれば苦にならないと思います」
「そうですね〜」
俺の心の中では、この物件に決まっている。あとは、4人の反応次第だ。
「「「「 ハル〜〜 !!!! 」」」」
クウコを先頭に4人が全身にいろんな草や花を身に付けて戻ってきた。みんな笑顔だから答えは決まっているだろう。
「おかえり。見た感じ楽しそうだったけど、どうかな?」
「クウコは、ここが良いな」
「リルもそうする」
「「ご主人さまミオ(ミリナも)ここが良いです」」
自分たちの思いを告げると4人は、キャッキャ騒ぎながら走り出して姿を消して行く。
獣人だから人族の子供と違い戯れて走る速さが尋常じゃない。
「ハルさん、あの子達は全力で遊ばれているのでしょうか?」
「まさか・・あれでも半分も力を出して走っていませんよ」
「ぬぁっ!・・」
すでに目で追うことが出来なくなっているラニアはリル達の身体能力の高さに驚愕し、少し青い顔をしている。
「ラニアさん、まだ1件目ですがココに決めました」
「・・・・」
「ラニアさん?」
「・・あっはい。・・はい?良いんですか?」
ラニアは目の前の光景を見て、こころここにあらず状態だった。
「はい・・彼女達もココで良いと決めたようですし」
「わかりました。それでは、仮契約と新居の間取などを決める必要がありますのでギイルドに戻りましょう。
走り回っている4人を呼び寄せると、全身泥だらけで帰ってきたため、生活魔法クリーンで綺麗にしてギルドの馬車に乗り王都へと戻った。
道中にお腹がすいたと言い始めたため、予め準備していた肉串を大皿に盛って揺れる荷台の床に置くと4人で器用に皿を持って仲良く食べ始める。
「お前ら、どんだけ肉串が好きなんだよ・・他に食べたいの無いのか?」
「「「「 お肉ぅ〜〜 」」」」
4人から出た答えは、肉一択だった。聞いた俺がバカだった・・。
大量の肉串を完食した頃に商人ギルド前と到着したらしく馬車が止まる。
満腹になった4人は睡魔に襲われ眠い目を擦りフラフラな足取りでついて来て、案内された部屋に入りソファの周りで寝転び床で丸くなって寝てしまう。
「すいません・・躾・・教育はしているんですが、どうしても理性が獣人の本能に勝てないようでして・・」
眠る4人を見るラニアは、微笑みながら気にしないでと言ってくれるため甘えることにしてソファに座る。
「それでは、仮契約を進めさせていただきますね」
「あぁ、よろしく」
ラニアから契約に関しての説明を受けて、違反した場合はかなりの違約金を支払うことになると聞く。
「それでは、契約の説明を終わります。まず、仮契約として金貨100枚と登録手続き代行手数料として金貨50枚の合計金貨150枚をお願いします」
俺は即金で金貨150枚を、アイテムボックスから出してテーブルに置く。
「た・・確かに金貨150枚を確認しました。あとは、家を建てる職人との契約及び建築費が必要になりますね」
テーブルに置かれた契約書に互いの血を数的垂らし仮契約完了の儀式で、ラニアが契約書を小さく折り一気に燃やす。
「コレで仮契約は無事に完了しました。家の間取りはどういたしますか?」
「そうですね・・家の間取りは、こんな感じでお願いします」
俺は、大きな紙に大まかな間取りを書いてラニアに説明する。
1階は、大きな湯浴み部屋と隣に服だけを脱ぐ部屋。それと食料とかを保管する倉庫と地下室へ繋がる階段。あとは、来客用の応接室とトイレと寝室が数部屋。
2階は、多勢で食事ができる食堂と大きめのキッチン。廊下を挟んで大きな部屋を1つ。
それと寝室を数部屋作れるだけ。出来たら食堂横に広いバルコニーを頼む。コレは王都が見える側で。
3階は、主寝室を大きく頼む。その部屋に併設するように湯浴み部屋と服を脱ぐ部屋ね。
残りのスペースにトイレと寝室をたくさん頼む。
最後に地下室は、こんな感じで・・。
全ての希望を紙に書いてラニアに伝えると、最初は驚いていたが途中から納得してくれていた。
もちろん、大金を見せていたので予算の心配はされない。
「上級貴族を遥かに凌駕する豪邸ですね・・住みたい・・いやいや、予算は問題ないと思いますが工期がそれなりに必要ですよ・・」
「それなら、たくさんの職人を集めてくれ。1人に対し1年分の報酬を一括で払うから」
「わかりました。ギルド公式の緊急依頼として、他の街にいる職人にも声をかけていきます」
「ありがとう、ラニア。コレは前金だ」
白金貨100枚をテーブルに置く。
「・・ハルさん、あなたは何者なんですか?こんな大金をあっさり出すなんて・・」
「ただの冒険者さ」
寝ているリル達を叩き起こし、その日は商人ギルドから出て長期利用している宿屋に戻る。
それから数回ほどラニアと会い細かな建築工程を職人リーダーと調整し決めて行くこと40日で、俺たちの新居が完成した。
引き渡し予定日の前日に家の完成状況をラニアと職人リーダーと確認したところ、手直しが必要な場所が一つも無いことに驚き、王都に戻り持ち込む家具を買い揃える。
そして、ラニアと約束した時間に商人ギルドの前に着くと、いつものように馬車が止まっている。
そして、なぜかラニアがギルド職員達から花束を受け取り涙目になり挨拶をしていた。
「なんのイベントなんだろ・・」
そう思いながらイベントが終わった頃合いを見てラニアに声をかけた。
「おはよう、ラニア」
「おはようございます、ハルさん。出発の準備は整っています」
「ありがとう、行こっか」
「はい」
今日も御者をするラニアに任せ、俺達は完成した新居に向かい王都を離れるのだったのだ。




