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7章 王国マリア編 22話 最終地の王都へ・・③

アクセスありがとうございます。



 マリアに治癒魔法能力を強化し攻撃と支援魔法をチート化させた日の夜に俺の方も魔力が回復して、いつも通りの野営の夜を過ごした後の旅は順調に進み9日目の朝を迎えた。


「旅も、あともう少しだな・・」


 そう呟き支度を終わらせ、野営地を出発する。


「マリア、もう王都に近いかな?」


「うん・・もう見慣れた景色になってるから今日には着くと思うわ」


「そっか・・帝国から出会って始まった旅も、もう終わりなんだな・・」


 荷台で会話をするマリアの表情は、少し寂しそうに感じる。


「・・・・」


「王女様が、そんな顔したら民衆が不安がるぞ?」


「うん・・でも、私は第3王女だから国の王女になんて・・」


「平民の俺が言うのもアレだけど、マリアなら大丈夫さ」


 王都に近づき俺達と別れる時が、現実味を帯びてきたことを理解するマリアの口数が減っている。


 しばらく、マリアとの会話も途切れ景色を見ていると山の裾野の向こうに王城のような建物が見えてきた。


「マリア、あの山の向こうにある白い建物は?」


 マリアは顔を上げ、場所を移動し俺の指差す方を見る。


「王国の王城よ」


「あそこに王国の王都があるのか・・」


「えぇ、そうよ!王都の中心にあるの・・王都である象徴なの」


 自慢げな表情をするマリアを見て苦笑いしていると、彼女が不満げな顔をする。


「なによ・・王城の自慢をしちゃダメなの?」


「そんなことないさ・・王女様らしい顔になってたなと思っただけだよ」


「もう・・」


 そう呟きながら反対側に座るマリアは機嫌を損ねたのか、俺を見なくなりずっと景色を眺めている彼女の横顔を見ていると心が穏やかになる。


「大きな街が見えてきたぞ〜!」


 御者をしているアルシアが大きな声で伝えてくれる。その声にもう1度、王都の方向を見ると白く大きな王城がはっきりと見えた。


「これが王都の王城か〜立派だな〜」


「でしょ?」


 いつの間にか隣に笑顔のマリアが座っていた。


「あぁ、そうだな・・くっ・・なんなんだコレ・・・・ヤメロ」


「ど、どうしたの?ハル!大丈夫?・・馬車を止めて!早く!アルシア、シェル!!ハルの様子が・・・」


 突然、俺から周囲の音が消える・・。



 さっきまで初めて見る王国の王城を見て国家権力の象徴なんだなと感心していた時だった。突然胸が締め付けられ苦しくなり、穏やかな感情に包まれていた感情の底から違和感を感じる。


 感情の奥底から急に溢れ出す負の感情に突然掻き乱され、視界が暗転し見覚えのない膨大な物語が一挙に走馬灯のように目の前で流れ強制的に見せられ脳内に刻み込まれる。



 そこにあったのは・・愛しさ・幸せ・絶望・喪失・怒り、そして復讐という深い感情。



 ただ目覚める直前に残っていた感情には、王族が憎い・・勇者が憎い・・騎士団長が憎い、冒険者ギルド長が憎いただそれだけだった。



「クソがっ!!」


 そんな言葉を発したと同時に意識が覚醒し、飛び起きると誰かが俺の体を必死に押さえ付けてきた。


「放せっ!」


「「「 ダメっ!!! 」」」


「行かせない! 落ち着いて!」


 3人に抱き留められた俺は、力んでいた全身の力を抜いて深く溜息をつく。


「なんなんだコレは・・悪い、しばらく1人にさせてくれ」


「「「 ・・・・・・ 」」」


 黙り込んだ3人は、掴んでいた腕を放し下を向いたままで俺と視線を合わせようとはしなかった。


 俺は、止まっていた馬車の荷台から飛び降りて歩き、馬車から離れ誰にも見えない場所で野外イスを出しゆっくり座りながら雲1つない青空を見上げて、今は誰にも近寄って欲しくないと思い隠密スキルを発動し気配を消す。


「・・・・」


 しばらく孤独の時間を過ごしていると、驚異的な速さで接近する4人を気配探知スキルが捉え教えてくれる。その4人は迷うことなく真っ直ぐ馬車へと向かっている。


「そうか、飯の時間か・・あいつら、リルとクウコは俺が出した飯しか食べないんだったよな」


 何気なく溢した言葉に、知らないはずの彼女達の情報があった。


「・・消えた?」


 もう数秒で4人が馬車に到着する距離で2人の気配が消える。思わず馬車の方に視線を移動させると。同時に笑顔で走り寄る銀髪のリルと金髪のクウコを視界に捉える。


 だがしかし・・笑顔のまま2人は減速しない・・・・。


「おい、まさか・・」


「「 ハルッ!! 」」


 2人同時に笑顔で胸元に飛び込んで来た。


「マジか!?」


 胸元から鈍い音を2発響かせながら、2人を抱き抱えイスごと後方へ倒れ込む。


「いてててて・・」


「「 お腹すいたよ、ハル!! 」」


 胸元に顔をスリスリ擦り付けて甘えている。なぜか、2人の長い髪がパサパサしていることに気付き手入れをしてやらないとなっと言う思いが浮かんでくる。


「わかった、わかった。でも、なんで俺の居場所がわかったんだ?」


「んふ〜!元気になったリルから隠れることはできないよ!」


「そうだよ、ハル!」


「どう言うこと?」


「前にも言ったじゃん!だから、教えなぁ〜い。早くご飯にして」


「仕方ないな・・よっと」


 リルとクウコを抱き抱えたまま立ち上がり、蹴り上げたイスが落ちてきたのをそのままアイテムボックスに収納する。


 2人を抱き抱えたまま歩いている俺はふと気が付く。やけにしっくりくることに・・そして2人が歩く動作を妨げないように抱き付いていることにも。



「ハル!」


 戻ってきた俺を見つけたアルシアが名を呼び駆け寄って来た。


「ゴメン、待たせたね」


「そ、そんなの全然問題無いんだ・・ただ、あの凄まじい光景とハルの感情が私達にも流れ込んできていてな。それでマリアが・・・・」



「・・そうか。それだと、マリアとの関係修復は難しいかもな」


「それは!・・それは、私達が口を出す問題じゃないことは理解している。だがな・・」


「いいよ、アルシア。この先の事は、アルシアが感じたまま決めてくれ。俺は、その判断を否定しないし無理強いもしないから」


「ハル・・」


 俺は、アルシアから少し距離を取って話を続ける。


「マリアと俺は、もともと立場が違いすぎた人間なのさ・・それはマリアも理解しているんだ。まぁとりあえず飯にしよう。腹が減っていては、まともな考えもできないだろ?」


 複雑な表情を浮かべるアルシアの前を歩き馬車へと向かう。


「「 ご主人さま〜!! 」」


 馬車の近くにある切り株に座っていた、黒髪のミオと茶髪のミリナが立ち上がり俺の側に来て何かを期待する表情をしている。


「わかってるって、ちゃんと作るから待ってて」


 抱き抱えているリルとクウコをおろし、馬車の荷台を覗くと座っているシェルと視線が重なる。


「やっと戻ってきたか。マリアならあっちだ」


「あぁ、ありがとう」


 普段通りに接するシェルにマリアの居場所を教えてもらい、俺はその場所へと向かうと彼女の後ろ姿を見つける。


「・・マリア」


 ビクッとするマリアの反応を見てこのまま近寄るかそれともこのまま距離をとるか悩み、もう1度声をかけてから決めることにした。


「マリア、あのさ・・」


 結果は、彼女は俺に振り向くことはなかった。その姿を見て距離をとる選択肢を選び、そのまま踵を返し馬車の方へと歩き出す。


 心の中でマリアに呼び止められることを期待していたが、それも叶うこともなく足を止めることなく馬車へ近づいて行く。


 なんだか視界が滲んでいるような気がする。それを心が認めたくないと訴えている。


 わかっている、わかっていると脳が同意しそれを肯定しようとするが本能が許さなかった。


「ハル・・泣いているのか?」


 いつのまにか目の前にアルシアが立っていて指摘されてしまう。


「泣いてる?・・俺がか?」


 不意に頬に伝わる何かを感じ、指先で触れてみると濡れていることがわかる。


「・・なんで?・・あぁ、そうか。そうだったな。ありがとうアルシア」


「ハル?」


「シェル、ちょっとこっちに来てくれるか?」


「・・ハル、どうしたんだ?」


 俺に呼ばれたシェルが荷台から降りてきて、アルシアの横に立つ。


 俺はアイテムボックスに収納されていた10才くらいの子供の背丈ぐらいある大きな袋を1つ取り出し荷台に載せる。そして、彼女達から預かっていた荷物を次々に積んだ後にアルシアとシェルの方を向く。


「アルシア、シェル・・今までありがとう。さっきマリアの意志を確認してきた。彼女の意志は・・拒絶だった。だからさ、マリアを王都へ連れて行く旅に俺が行けるのはここまで・・」


 突然の別れにアルシアとシェルは驚き固まっている。


「もちろん、アルシアとシェルが帝国へ安心して帰れる分の資金がさっきの大袋に入っているし、旅に必要な日用品も積んでいるから安心してくれな」


 こんなことを言っている自分がこんなに冷静でいられるのが不思議と思えるほど感情に起伏がない。そして、伝えたいことを言った俺は最後に笑顔を意識して告げる。




「アルシア・・シェル・・大好きだ。そして、マリアのことを頼みます」


 

 深く頭を下げ一礼した俺は、目の前にいるアルシアとシェルの顔を見ることができず背を向けて歩き出し、隠密スキルを発動し気配を完全に2人の前から消した。



 背後でリルとクウコがアルシア達に何かを言っていたが興味の無い俺は、そのまま皆と離れて行く。


「これからどうしよっかな〜」


 そう呟きながら、街道沿いにあった小さな村に泊らせてもらおうかと考えていると、左右から俺にリルとクウコに抱き付かれ背中にはミオとミリナがくっついている。




「な・・なんで俺の場所がわかるんだよ・・」


「ふふっ・・だから、ハルのことならなんでもわかるの」


 左にいるリルが笑顔で告げる。


「そうだよ、ハル。なんでもお見通し。だから、ずっと側にいるよ」


 右にいるクウコも笑顔で言う。


「「 ご主人さま・・私達は、ずっと一緒だよ 」」


 背中にいるミオとミリナも言ってくれる。



「そうか、ありがとな。4人と出会えた記憶もなんだか少し思い出してきた感じだし、改めてヨロシクな・・リル・クウコ・ミオ・ミリナ」



「「「「  うん!!!! 」」」」






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