表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたが欲しくて。  作者: Mayu
15/16

第十五話 外れた愛

ある一組のカップルを見送った後、由紀は少しぼーっとしてしまった。何とか手を動かすが、あまり集中している状態ではなかった。


「門倉~?もう上がって平気よ。あなたここのところ働きづめでしょ。」

高塚たかづかさん…。ありがとうございます、お先に失礼します。」


チーフに許しをもらえたので、彼女は帰宅した。

人気のあるところからは少し離れた場所にある、十階建てのマンション。ここで由紀は、幼い頃に引き取ってくれた父の弟、叔父と共に暮らしている。五歳の時に両親を亡くし、身寄りがなかった由紀を真っ先に引き取ってくれたのが、叔父である門倉かどくら 大志たいしだった。


「叔父さん、まだ帰ってきてないんだ…。」


早めに上がらせてもらったとは言え、通勤場所から家まで帰って来ると六時は過ぎていた。

今は同居という形をとっているが、それはあくまでも一時的で、一人暮らしの資金が貯まったらここを出て行くことになっている。正確にはそういう話は出ていないが、それが筋というものだろう。


しかし、 嫌だ。


二十二にもなって子供みたい。


彼女は、今年で三十九になる叔父を、好きになってしまったのだ。

見た目は三十前半スラッとしていて、父にはあまり似ていない。父親が違う兄弟らしいので当然と言えば当然かもしれないが。


「ただいま。」

「あ、おかえり叔父さん。」

「由紀…帰ってたのか。ただいま。」


出迎えに行くと、頭をなでられる。


「やめてよ、もう子供じゃないんだから。ご飯は?」

「食べてないよ。」

「そっか、今から作るね。」


嘘をついた。

本当は、その大きな体に抱きしめられたい。

深く口づけて、その先も。


こんなこと考える私は、間違ってる?


由紀は自問に入るが、そのトンネルからは決して逃れることは出来ない。開けることのないトンネルを、ずっと彷徨い続けるのだ。


ただ、分かっていることはある。

身内を好きになるなんて、絶対にあってはならない禁忌だって言うこと。


料理中、スーツから部屋着に着替えた大志がリビングに出て来る。2LDKのこのマンションは二人で暮らすのにも十分広く、それが少し、由紀は物寂しくもあった。


「叔父さん、出来たよ。」

「あ、悪い、煙草買ってくる。買い忘れた。」

「じゃあ待ってるよ。」

「え。良いよ、先に食べてなさい。」

「せっかく作ったのに。」

「ごめんな、行ってくる。」


一人で食べる夕食は寂しい。

ご飯はみんなで食べたほうがおいしい。そう教えてくれたのは大志なのに。

コンビニまでは結構時間がかかる。あぁは言われたものの待っていようと思ったのが、先に胃の方が根を上げた。


「うぅ…。無理だ…。」


仕方なく食べようとすると不意に、窓の外でポツポツという小さな音が聞こえ始めたかと思うと、いつの間にかそれは大粒になって行った。


「…叔父さん、傘持って行ってないよね?」

「ただいまっ」


玄関で慌てた声が聞こえたので、由紀も急いでそちらに向かう。そこには、びしょびしょに濡れた大志が困った顔で立っていた。


「叔父さん、大丈夫!?」

「…いや…ずぶ濡れだ。」

「…っ…」


言いつつ、玄関で部屋着を脱ぐ大志は、仕事の合間に通っているジムのせいでたるんではいない。逆にそれが色気を煽り、由紀は目が離せなかった。


「…?どうした?ジッとみて。また筋肉ついただろ。」


視線に気づいた大志が自分の上腕二頭筋を触る。今度こそ目を離す。


「そ、そうだね。お風呂入れて来るから待ってて。」


風呂場に行き、湯船にお湯を張る。ヘリに肘をつき、頭を抱え込む。


駄目。駄目なのに。


「ありがとな由紀。夕飯悪かった。今度美味い飯でも食べに行こう。」


それには何も答えられず、軽くうなずくことしかできなかった。由紀が脱衣所を出るとシャワーの音が聞こえ始めた。


駄目。もう無理。


由紀は駆け出し、風呂場の扉を扉をガラッと乱暴に開け、気付いた時には大志に抱き着いてしまっていた。部屋着が、シャワーのお湯でどんどん濡れていく。

最初は目を見開いていた大志も、眉間に皺を寄せて静かに呟いた。


「…由紀。何してる。やめなさい。」

「叔父さんが好き!…好きなの…!」

「早く離れなさい。」

「嫌!」


背中は大きくて、腕を離させようとする手も大きかった。


「由紀」


語調が強いものになっていく。それでもかまわなかった。ひっぱたかれようが、突き飛ばされようが。


「叔父さん…キス、して…」

「由紀、っん…」


唇を重ねて。愛を囁いて。


してって言ってしてくれないのならこちらからするのみだ。


「んっ…叔父さん、口…開けて…んは……ん…」


もっと。

もっともっともっと。


「由紀…!駄目だ。」

「…どうして?」


濡れた服を身に纏っている由紀からは色気が漂い、大志は思わず目を逸らした。下着が透けていて、目のやり場に困る。


「……叔父さんじゃなきゃ、嫌なの」


今にも泣きだしそうな由紀に、大志はどうすればいいのか分からなくなってしまう。


「叔父さん、お願いだから…私の事好きになって」


自分は、叔父であるということを抜きにして。

私の事、どう思ってるの?


「それは…」

「姪としてなんて見たら…嫌。」


由紀は服を脱ぎ棄て、今度は真正面から大志に抱きつく。ここで突き放さないということは、嫌いではないようだ。


「…由紀」


信じられないほど迫って来る罪悪感。

最低なことを言い出そうとしているという背徳感。

苦しくなりそうなほど膨らんでいた、ある想い。


それらに、大志は押しつぶされるような感覚に陥っていた。


「…由紀」

「なに?」

「知らないからな。」

「……うん、良いよ。」


そういうと、大志はゆっくり由紀に顔を近づけていく。一度躊躇うが彼女の後頭部に手を回すと、距離は自然とゼロになった。

深い口づけに、由紀は声を漏らす。舌が絡み、お湯が時たま口の中に入る。


「んぁっ…おじ、大志さん…っ、ん…んぁ、んはぁ…」

「…由紀。もっと舌を出しなさい…早く」


嬉しい。求められている。


言われた通り舌を出すが、口づけが来ない。


「叔父さん…、早く、キスは……?」

「え?いや…、由紀がこんな顔するようになるなんて、おもってなかったから。」


他人に向けるはずだった顔が、今目の前で、俺に。


「…ずっと叔父さんが好きだったんだよ」

「あぁ。気付かなくて悪かった。もう一回、舌を出して。」

「ぁ……」


今度はそれが、きちんと絡めとられる。溶けてしまいそうなくらい熱い口づけに、由紀は膝の力が抜けてしまった。


「おっ…と…。どうした。」

「ち、力入んなっ、あ、ちょっと、大志さ…!!」


急に抱っこされ、風呂場から出される。大志は下着とスウェットのズボンを履き、膝のあたりに腕を回し、再び抱っこして下から見つめる。


「どうしたい?このままベッド行くか?」

「えっ…!?大志さん、」

「別にこのままご飯でもいいぞ。ご飯食べるか。」

「う、ぅん…」

「よし。にしても軽いな由紀。痩せすぎだ。」

「やだ、大志さん降ろして!」

「嫌だ。その大志さんっての良いな。そうやって呼んで。」


大きな子供みたいにお願いをする大志に、由紀はぐっと口をつぐんでしまう。


「大志、さん…」

「よし、いい子だ。」


なぜ、イケナイ恋なのにこんなにも幸せなのだろう。なぜ、世間から見ればおかしいのに、こんなにも愛してしまっているんだろう。


「大志さん」

「ん?」

「私の事…好き?」

「……実はな。」

「いつから?」

「さぁ、いつからだったかな。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ