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だらり異世界生活記  作者: 国後要
台所大往生編
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ホームレス魔王

 魔王はこれから強く生きて行くだろう。

 物乞いとして頑張って、いつしか世界を恐怖に陥れる魔王が復活するに違いない。

 復活した後は、物乞いとして苦労した経験を本に書き綴って出版だな。

 ……ホームレス幼女か、きっと大ヒットして大金持ちになるに違いない。


「さて、そろそろ午後の仕事探して来ますわ」


 一家の稼ぎ頭は大変なのだ。主に台所の蘇生費用を稼ぐために。

 台所も魔王みたいに祈って復活する便利仕様になればいいのに。

 そう言うわけで、トモエさんにサンドイッチ代を支払って店の外に。

 

「いってらっしゃい、お仕事頑張ってね」


「タカヤー、お仕事頑張ってねー! 私も頑張るよ!」


「無理しないでくださいね、タカヤさん。晩ごはん作って待ってますから」


 みんなの送り出しを受けて、少し気恥ずかしく感じながらも店を出る。

 さーて、みんなの応援も受けたし、がんばって仕事に励むとするか。


「さて……まずは仕事探そう」


 あ、やべえ、今のセリフはリストラされたサラリーマンみたいだ。

 いや、オレの年齢的に内定貰えない高卒か……?

 そんな事を考えつつ冒険者ギルドに――


「そう言えば、レンはどうしてんだろ?」


 ――行く前に、ちょっと思い立ったのでレンの様子を見に行こう。

 レンの事だから、子供泣かせておたおたしてるに違いない。

 年下の弟が居たオレの子守のうまさを見せつけてやるとしよう。

 場所は分かってるからな、さーて、行くとするか。






「……あれは、誰だ?」


 あれは誰だ? 誰だ? 誰だ?

 赤ん坊を抱いて優しげに微笑んでいる女の子は一体何者だ!

 レンによく似ているがアレは別人に違いない!

 だってほら、あんな優しそうな美少女がレンとかありえないだろ。


「……あれはデビル! そう、悪魔に違いない!」


 おのれ! レンの皮を被って、赤ん坊の子守が出来る美少女と言う悪評を広めるつもりに違いない!

 くっ、なんて恐ろしいんだ! さすがは悪魔だ……!


 いや、それはねーわ。


 つうか、赤ん坊の子守が出来るって言うのは間違いなく悪評じゃない。

 どっちかって言うと、優しい女の子ですのね、オホホホホ、って言う褒め言葉だよな。

 オレはオホホホホ、なんて笑ったりしないけど。


 くそう、レンの事が余計に分からなくなってきた。

 まぁ、とりあえず顔出すか。


「うーす、レン。調子はどうだ?」


「む? タカヤか。うむ、順調だ」


 自慢げに無い胸を逸らすレン。

 まぁ、それは抱き抱えてる赤ん坊がすやすや寝てる辺りからも分かる。


「うん……かわいいな」


「な、な、い、いきなり何を言う!?」


「いや、赤ん坊ってのはかわいいもんだろ。特に寝てるとこなんかさ」


「な、なんだ、赤ん坊のことか……」


 生まれたばっかの赤ん坊とかまるっきりサルだけどな。

 弟が生まれた時に見たのはサルそっくりって言うか、何らかの動物そっくりだったし。

 いや、生まれたばっかの赤ん坊こえーわ。

 かわいく見えてくるのは、首が座る辺りかね。


「オレ保育士になりたくてなー。保育短大目指してたんだが……」


 気付いたらこの世界に居たんだもんなー。

 元の世界でオレってやっぱ失踪扱いなんだろうか。

 高校、退学になってんだろーなー……。


「保育士、とはなんだ?」


「ああ、そう言うのなかったか。こっちで言うと、なんだっけな……めのと、だっけか」


 漢字で書くと傅。簡単に言うと乳母の男バージョン。


「つまり赤ん坊を育てるような仕事に就きたかったのか」


「ちょっと違うけど、まあそんなもんだ。そのための勉強もしてたし、そのための学校も目指してたし」


 あれこれと本読んだなぁ。

 知的ボーダーラインの本とか。

 今となっちゃあんま意味ねーけど。


「学校か。タカヤも学校に通っていたのか」


「まぁな。も、っていうことはお前も通ってたのか?」


「無論だ、私の故国には女学校があるのだ」


 女学校ねー。

 なんか大正時代の女学生みたいな服着て通ってたんだろーか。

 ……意外と似合うかもしれない。

 でも、レンってツリ目だから雰囲気がそぐわないかもなぁ。


「うにー」


 レンの目の左右に指をあてて、うにー、と下げてみる。


「……何をしている?」


「いや、目がツリ気味だから、ちょっと下げてみたら雰囲気が柔らかくなるかな、と……」


 つい突発的にやってしまった。


「ツリ気味だと何か悪いのか?」


「いや、別に悪くはないんだが。お前、振り袖とか似合わなさそーだなーって」


「似合わなさそうで悪かったな」


 あ、拗ねた。


「そんな怒るな。着れば似合うかも知れんぞ。あ、セーラー服なら間違いなく似合うな」


 セーラー服が制服の小学校ってあるんだよな。

 その制服ならレンも似合うに違いない。

 まぁ、制服ってたいてい誰でも似合うように出来てるけど。


「ふん、機会があれば私の振り袖姿を見せてやる。目玉が飛び出るほど驚かせてやる」


「ビックリして耳がデカくなる程の衝撃を頼むぞ」


「耳……?」


 突っ込むな、そこはギャグだ。


「さて、んじゃ、オレはもういっちょ仕事探してくるわ。お前も頑張れよ」


「うむ、まかせろ」


 再び無い胸を張って自慢げにするレンの頭を撫でて冒険者ギルドへと向かう。

 午前中の間に新しい仕事来てるといいんだけどなー。

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