僕アルバイトォォォォォ!
「あ、でも、世界樹の木材? って言うのって、すごく高いんですよね? それを売ればいいんじゃないんですか?」
うん、至極まっとうな意見だ。
高く売れる以上、それを売ってお金にしようと言うのは当然の考えだ。
「無理」
しかし、それは出来ない。なので無理。
「なんでですか?」
「世界樹は乱伐されて現存数が少ないから、伐採した地所の証明書と伐採許可証を同時に提示しないと売れない。そしてそんなものは無い」
世界樹の木材が異常に高いのは、枝を落としたりした奴くらいしか出回らないからだ。
ゲーム世界から持ち込んだ世界樹の木材には、そんな証明書やら許可証は無い。
そう言うわけで、世界樹の木材は売る事が出来ない。
「……なぜ証明書と伐採許可証を持ってないのだ?」
「まぁ、色々とあるんだ。後ろめたい事をして手に入れたわけではないから安心しろ」
さすがにゲーム世界から持ち込んだのでないんです、とは言えないだろう。
というか、言ったとしても信じて貰えないと思う。
「じゃあ、オリハルコンは? そのオリハルコンって言うのも凄く高いんでしょ?」
「オリハルコンの方は許可証や証明書は要らないね。ただし、問題がある」
「問題?」
「買い手がつかないんだ……高すぎて……」
これがインゴットじゃなく、指先くらいの欠片だったらよかった。
それくらいだったら余裕で売り飛ばす事が出来るのだ。
しかし、このインゴット丸ごととなると、一千万ゴルは下らない。
そして、たとえ丸ごとじゃなく、欠片だったとしても面倒な事になる。
「それに、こんなもんをいきなり売りに出したら、もっと持ってるんじゃないか? なんて疑われて大変な事になる」
一度オリハルコンを売ってお金にした事があるのだが、その後が大変だった。
家には泥棒が毎日のように入り込み、道行けば美人局。
詐欺師は毎日のように話しかけて来て、見知らぬオッサンがお前は俺の息子なのだー、とか言い出す。
散歩に行こうと家を出れば、変な奴らが恵まれぬ者に恵みを……とか言い出して寄付を求めてくる。
人間不信になりかけましたね。あの時は。
今度はアリシアちゃんとかシエルちゃんも居るわけで、誘拐されて身代金を要求されたりするかも……。
そう言うわけで、オリハルコンは絶対に売れない。
「お金って大変なんだね……」
「そう、大変なのさ……」
目の前には大金になり得るものがあるのに、それをお金に変える事が出来ない。
漂着した無人島で、金銀財宝の山を発見した気分ってこんな感じなんだろうか。
「という訳で、これらはお金に変える事が出来ません。だから仕事をしてお金を稼がなくてはなりません」
「お前のことだから、何か売れそうなものをアイテムボックスに死蔵していたりしないのか?」
「無い事は無いが……やっぱり出所を疑われるようなものばっかりだからな」
一応、そんなに疑われるようなものでもないものもあるのだが、そう言うのは額が少ない。
ポーション数万個とか買い取ってくれるところないだろうし、自分でも使うし。
もっと管理体制がずさんな世界だったらよかったのになー。
武器は商売道具だからあんま売りたくないし。
それに強力過ぎて戦争の火種になりかねない武器がたくさんあるからな……。
「とにかく、仕事をしなくてはならない。しかし、仕事が無い。どーしろってんだチクショウ!」
「落ち着けタカヤ」
魔王を倒した勇者が就職難。不況の波は異世界にすら押し寄せてるって言うのかよ。
「悪い。落ち着いた。まぁ、そう言うわけで、お仕事を探します。オレとレンは冒険者ギルドで仕事を探してみる。シエルちゃんとアリシアちゃんはお留守番してて。この家なら安全だから」
この家の防犯体制はそれなりに整ってる。
家に誰かが入れば家全体に警報が鳴り響くし、オレも察知する事が出来る。
オレが察知出来れば転送魔法で帰って来れるしな。
「いえ、私も働きますっ! 私も台所を壊してますし!」
「つってもなぁ、働き口ないし……」
なによりアレだ。十歳の女の子に働かせるってどーよ?
レン? ああ、こいつは別。十歳は十歳でも魔王倒した十歳だから。
なにより一番ぶっ壊してる下手人なので馬車馬の如く働いてもらう。
「トモエさんのところでお手伝いしてみます。トモエさんのところがダメでも、色々とやりようはありますよ。物乞いはバイタリティがすごいんですから!」
「う、うーん……まぁ、それはいいけど……アリシアちゃんは出来ればトモエさんのところでお手伝いしててほしいかな」
誘拐でもされたらたまったもんではないからな。
「うん、わかった。料理を運んだりお掃除なら私でもできるもん」
「オレからもトモエさんに頼んでみるよ。頷いてくれるかは分からないけど」
元々、あの店ではバイトは募集してないしな。
まぁ、子供を預かるとかくらいならやってくれるから、ダメなら預かって貰おう。
そう思いながら、オレたちは家を出て行動を始めるのだった。




