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だらり異世界生活記  作者: 国後要
郵便配達編
32/128

やっちゃったぜ……

 飛んで飛んで飛んで……回ったりはしない。

 回ったらゲロ吐いちゃう。

 

「あー……なんてか、ヒマだねー」

 

「そーですねー……」

 

 ただひたすらに突き進んでるだけなので、景色も変わり映えがしなくてつまらん。

 あと五時間近くもこれとかいろいろと耐えられない。

 

「……マジカルバナナー!」

 

「ひゃ!? な、なんですか?」


「うー、バナナと言ったら黄色。黄色と言ったら?」


「え、あ、えっと、たまご!」


「タマゴと言ったら殻がある! 殻があると言ったらカタツムリ!」


「あ、え、えっと、えっと……」


「失格!」

 

「ええーっ!?」

 

 突発的に始まったマジカルバナナ。

 まあ、それにいきなり対応できるわけも無く、シエルちゃんはすぐさま失格に。

 そこで改めてルールを説明し、マジカルバナナをやってみる。

 

「マジカルシエルちゃーんっ! シエルちゃんと言ったら茶髪!」


「ちゃ、茶髪と言ったらトモエさん!」


「トモエさんと言ったら喫茶店!」


「喫茶店と言ったら紅茶!」


「紅茶と言ったら三時!」


「三時と言ったらおやつ!」


「おやつと言ったら甘いもの!」


「甘いものと言ったら砂糖!」


「砂糖と言ったらサトウキビ!」


「えう、えっと、サトウキビと言ったら……」


「ブブーッ! 失格ー!」

 

「あうぅ、ずるいですよう! サトウキビなんて知らないです!」

 

「ありゃ、そっか。んー、マジカルバナナは難しいな」

 

 次はしりとりでもするかな?

 

 

 

「ル、ル、ル……ル、ルビー!」


「ビール」


「あうっ、またル! ル、ル……ルガルバンダ!」


「だんびら」


「ラッコ!」


「コール」


「あう、あう……ずるいです! ルばっかり言って来てずるいです!」

 

「ずるいんじゃない、汚いんだ」

 

「うなずいちゃうんですか!?」

 

 だって汚い真似してるのは本当だし。

 

「分かった分かった。ル攻めするのはやめるよ」


「もうっ! えっと、じゃあ……ルピー」


「ピーラー。ラね」


「ラッパ」


「パーラー。ラね」


「ラ……らっきょう」


「うし」


「白菊」


「クーラー。ラね」


「ラ、ラ……今度はラ攻めしてきてるじゃないですかー!」

 

「大人は汚いんだ」

 

「もうっ! タカヤさんなんかきらいですっ! ふんだ!」

 

「えー。嫌いなんて酷いなぁ」


「ふーんだ! 口なんかきいてあげませんから!」

 

 ありゃ、怒っちゃった。

 さて、どうしたもんかな。

 まぁ、とりあえず放置か。

 

「…………許してあげないんですからね」


「あれ? 口聞かないんじゃなかったの?」


「あう。や、やっぱり、許してあげてもいいですよ?」


「許してくれるの?」


「と、特別に許してあげますよ?」

 

「シエルちゃんは優しいねー。許してくれたら嬉しいなー」


「特別に許してあげます!」

 

 これだから子供ってやつはかわいい。

 そう思いつつ、シエルちゃんの頭をなでなで。

 

「そろそろ正神殿が見えて来てもいい頃なんだけどなー」

 

「どれくらい走ってるんですか?」


「もう三時間過ぎかな。山の頂上に建ってるからよく見えるんだよ」

 

 もうそろそろ見えて来てもいいはずなんだけどな。

 そう思っていると、地平線の向こう側から少しずつ山の頂上が見え始めて来た。

 

「ああ、見えて来た見えて来た。ほら……あれが正神殿。アシュテリア教の総本山だよ」

 

「アシュテリア教の……あれ、アリシュテア様じゃありませんでしたっけ?」


「どっちでもいいよそんなもん」

 

 あんな女神に払う敬意は要らん。名前間違えるくらい許容範囲だ。

 それに馬鹿だから、噛みました、って言えば納得してくれんだろ。

 

 

 

 

 

 神殿が見えてくれば、だいぶ気分も変わってくるもので。

 マジカルバナナやしりとりではなく、アリなんとか教についての話になったりと会話が弾む。

 そうしてシエルちゃんと雑談をしているうちに、神殿へと辿り着く。

 

「神殿よ、私は帰って来た……」


「なにかいいました?」

 

「いや、なにも」

 

 ちょっと言ってみたかった。

 でも大声で言うとめんどくさいからやめといた。

 よし、では、手紙を届ける。

 適当な、下っ端っぽい奴に手紙を渡す。

 それでオーケーだ。

 勢いで押し通せば何とかなる。

 

 たとえその手紙が渡されるべき人に届かなくても、オレはちゃんと神殿に手紙を届けた。

 いや、待てよ。オレが頼まれたのは神殿に届ける事だけ。

 神殿の適当なところに放り捨てるのですらミッションコンプリートと言えるのではないか?

 

「いや、さすがにそれは拙いか……」

 

 そう思いつつ、神殿の中へと入って行く。

 さすがに神殿はでっかい。

 一度に千人くらい入れそうな礼拝堂とかあるし。

 地下墳墓はこの数倍以上デカいけどな。

 しかもなんでか知らないけど、地下墳墓はゾンビたくさんいるし。

 

「えーと……」

 

 きょろきょろと見渡して、ちょうどよさそうなのを……お、よさそうな子発見。

 柱の陰に隠れて礼拝しているのを眺めてる子だ。

 あの子ならちょうどいいだろ。

 

 そう思いつつ、その子に近づいて声をかける。

 

「そこの君」


「え? え!? な、何か……?」

 

 なに驚いてんだ?

 

「これ、手紙。たぶん、偉い人に渡さないといけないみたいだから」

 

 そういって無理やり手渡す。あとは頼んだぜボーイ!

 

「……分かりました。確かに受け取りました。驚くほどの眼力の持ち主ですね、あなたは」


「え? なにが?」

 

 めぢからがどうしたって?

 

「いえ、なにも……よろしければ、お祈りを捧げて行かれてください。それでは、私はこれで……」

 

「え、ああ、うん。おつかれさん」

 

 立ち去って行った少年を見送り、オレは礼拝堂を眺める。お祈りねー……。

 あの女神にお祈りを捧げるのはあんま気進まないんだけど……。

 

「ああ、そうだ。せっかくだから祈ってこうか、シエルちゃん」

 

「そーですね、せっかくですから」

 

 礼拝堂の適当な長椅子に腰かけ、祈りをささげる。

 隣のシエルちゃんを盗み見ると、けっこう真剣にお祈りしている。

 オレも真剣にお祈りするか……魔王に。

 

「(魔王様……あのクソ女神アリ何とかをぶちのめす為にどうか復活成されてください。どうか、どうか……)」

 

 たぶん、オレは人生の中でいちばん真剣に祈ったと思う。

 この眼で見たことがある存在なだけに、その祈りも中々真に迫っただろう。

 

『クク……よかろう。そなたの祈り、受け取ったぞ』

 

「…………シエルちゃん、今なんか聞こえなかった?」

 

「はい? みんなのお祈りの声なら聞こえてますけど」


「いや、そう言うのじゃなくて……まぁいいや」

 

 ……オレ、もしかしてやっちゃった?

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