ライバル
「ごきげんよう、ナギ・ミスティアさん。いいえ、わたくしのライバル!」
「…」
ナギは完全に動きが止まり、金髪ロールの人の顔をじっと見ている。。
「な、なんですの?何か言ったらどうですの!?」
「…」
動きは止まったまま無言を貫いている。
「失礼ですよナギさん!大体、あなたは昔から…!」
「いや、えと、そうじゃなくて、どちら様ですか…?」
「ぶはっ!」
ソウマが吹きだした。
「なっ…!な、なっ…!なな…!」
「あ、ごめんなさい!確か中等部が一緒だったのは覚えてるけど…えと、えと…」
「わ、わたくしを…覚えて…ない…?」
信じられないという顔をしながらゆっくりと下がっていく。
「あぅ、そうじゃなくて…そ、そうだ!中等部のB組の人!それで名前は…アメ…アメ…」
「そ、そうですわ!思い出しましたか!?ええ!忘れるなど言語道断!その名前を言ってごらんなさい!」
「アメ…アメロワ…エリザベル…れい…何とか!」
「アメリア・エリザベス・レインボーロードですわ!!」
「ごめん!そうだった!アメルアさん!」
「ア・メ・リ・ア!!」
「あうぅ…」
「…ザベス」
ぼそりとつぶやく。
「そこの黒髪ロングの方!誰がザベスですって!?」
この人面白いかも。
「おいソウマ、笑いすぎだろ…」
「くくっ…ぷっ…ぐぐ…ザベスって…」
ソウマはずっと笑っている。
「それで~アメリアさん~?どうしたの~?」
ミーネが言うとアメリアは思い出したかのようにこちらを睨む。
「そうですわ!さっきの言葉、聞き捨てなりませんわ!」
「さっきの?」
「アルカディア対抗祭についてです!優勝と言いましたでしょう!?」
その言葉にテオがアメリアに近づいていく。
「あー、確かに言ったがてめぇに関係あんのか?ケンカなら買ってやんぞ」
「ちょっ…テオ君!?」
「まぁ怖い。しかしあなた、小さいのに度胸がありますのね。わたくしの傘下に入れてあげてもよろしくてよ」
「なっ!てめぇ!」
「いずれにせよ優勝するのはわたくし達A組です!それをあなた方のようなF組、ましてはナギさんがおっしゃるのは黙ってはいられません」
間髪入れずに宣言をするアメリア。
「バカにしやがって。てめぇはどれだけ…!」
飛び掛かりそうなテオをナギが止める。
「待ってテオ君!えと、アメリアさん?わざわざそのことを言いに来たの?でもなんで私をライバルって…」
「あなたがそれを言うんですの!?ライバルと認めた日。そう、始まりは初等部の時のかけっこの時!あの屈辱、忘れたとは言わせんわ!」
「だから…え、初等…?かけっこ…?」
思ったより昔すぎてナギの背景に宇宙が広がっている。
そしてソウマは笑いすぎて使い物にならなくなっている。
「そこの笑っている方!失礼ですわよ!」
後ろを向き、こっそりとナギに話しかける。
「(ナギかけっこって…)」
「(そんなの覚えてないよ~…。初等部でしょ?運動は得意で上の方ではあったけど普通だったよ?)」
「(でもああ言ってる)」
「(初等部だよ!?何年前の話で…)」
「何をこそこそしているのですか!わたくしの方を向きなさい!」
「ご、ごめんなさい!」
「それで?覚えてらっしゃいますよね?」
ジッとナギの方を見つめる。
「あ…えーっと…そう!覚えてるよ!初等部の…ね!かけっこで…ね!熱かったね!」
冷や汗をかきながら答えるナギ。
「…覚えているのであれば結構です」
「う、うん…」
絶対忘れてる。
「あの争い以降、今後わたくしはあなたにだけは負けないと心に誓っていますの!そしてその範囲は同じクラスであるあなた方も含まれます!よろしくて?」
そのもの言いは完全なる宣戦布告だった。
「くくっ…ふぅ…。つまりは僕らには絶対負けへんってことでええ?」
まだ笑いから立ち直ってないのかソウマは半笑いだ。
「え~そういうこと~?負けないよ~?」
「優勝は…僕たち…」
「あまり舐めない方がいい」
それに続き、私達も前に出る。
そしてテオがゆっくりとアメリアに近寄っていった。
「マジでなんだかわかんねぇが対抗祭で喧嘩売ってるってことだな。俺らF組がてめぇなんかに負けるわけ…」
「それ以上はお嬢に近づかないでもらおう!」
突然どこからか2人の男子生徒が目の前に現れてテオを遮る。
「んだ?てめぇら!」
片方は緑髪メガネのいかにも真面目そうな青年。
もう片方は赤髪で竹刀を持った体育会系っぽい生徒だ。
「小さい!圧倒的に小さい!本当に我々やお嬢の相手が務まるのか、君たちは!」
「兄貴の言う通りだ!お嬢!こんな奴ら俺らだけで十分ですぜ!」
明らかな敵意を持って私たちを見る。
「あなたたち!一体どこから!?」
予想外な登場だったようでアメリアも驚いている。
「…この人たちもナギの知り合い?」
「あぅ…えと、あの…」
ナギが迷っていると真面目そうな方が手を差し出す。
「君が噂のナギ君か。僕の名前はバジル、赤髪の彼はエドガーだ。安心したまえ、我々は初対面だ」
「えと…ご丁寧に…?」
ナギが手を差し出して握手する。
「そして全くの期待外れだった!僕たちは猛烈にガッカリしている!」
「えぇ!?」
「パン千切り田舎少女じゃあ物足りないって言っていんだよ!お嬢と張り合うならもっと鍛えてからこい!」
「え?パン千切…はっ!私いつの間にこんな!?」
ナギの皿を見ると、グダグダしている間ずっとパンを千切っていたようで完全にパン粉のような状態になっていた。
「あなたたち!失礼ですわよ、下がりなさい!」
「「はっ!」」
アメリアが一言発すると二人は即座に下がっていく。
「…申し訳ございません、邪魔が入りましたわね。わたくしを想うあまりつい言い過ぎただけかと。謝罪いたしますわ、ナギさん、F組の方々」
そう言ってアメリアは頭を下げる。
「い、いいよ!気にしてないから頭上げて!」
「えらい丁寧やな」
「何か~企んでる~?」
「あくまで対等で勝負をしたいんですの。本気でやってもらわないと困るんですの」
「…?そこまで…こだわるの…なんで…?」
するとにやりと笑いながら腰に手を当てる。
「意味がないからですわ!」
「意味?」
「ええ!正々堂々戦って、対抗祭に収まらずどこまでも勝ち続けていくことに意味がありますの。そしていずれわたくしは学校のトップとなり、天上の力に選ばれるのが目標なのですわ!」
「!!」
その言葉に空気が凍り付く。
「…あら、皆さま?どうしましたの?」
どうしても我慢ならず私は前に出た。
「天上の力に選ばれるの、私達。あなたには譲らない」
「…あなたが?学校のトップになると?」
私は首を横に振る。
「違う、私とナギで。私だけじゃ足りない。ナギだけでも。でも二人なら一番になれる」
「ナギさん?これは本当のことで?」
「…!」
ナギを見ると一瞬迷っていたが、すぐに意を決したようで口を開く。
「うん、本当。私一人なら無理だけど、渚と一緒ならどこまでも行ける気がするの」
そして決意を込めてアメリアの方を向いた。
「だからアメリア、あなたにも負けない!それに対抗祭は私達だけじゃなくF組のみんなもいる。だから優勝するのは私達!」
みんなも笑っている。
「…なるほど、面白くなってきましたわ!叩きのめしてさしあげますので覚悟してくださいませ!」
そう言い残してエドガーとバジルもつれて去っていった。
「おもろいボスと取り巻きやったなぁ」
「…絵に描いた…よう」
「戦うの~楽しみ~」
「ムカつくやつらだったが、俺らの火はついたぜ」
今のやり取りでみんなのやる気がさらに上がったようだ。
「天上の力は私たちが…!」
私も改めて決意を胸にする。
「渚、みんな、ありがとう!優勝目指して頑張っていこう!だから今は早く食べて…ってあぁ!!これどうしよう…!」
パン粉状態となったパンを見てナギは絶望していた。
「ナギ、締まらない…」




