前へ目次 5/5 5終 「もう、いいわ」 声は小さいが、確かに自分のものだった。最後の確かさは、誰にも観測されない形で、ただそこにある。 窓の外では暗雲が変わらず空を覆っている。朝と夜の境は曖昧なまま。部屋の中の気配は薄くなり、やがて均される。足音も、呼び声も、ここを通り過ぎるだけになる。 それでも、静かに理解する。 わたくしは、最初から誰でもなかったのだから。 ―――――――――― 「……この部屋、何か忘れている気がする」 侍女は小さく首を傾げたが、すぐに何事もなかったように窓を閉めた。