05.爺は呪われた盾です。
『やっとここまで戻って来たわい、全くとんだ方向音痴に使われておるわ、儂』
背中に背負う盾が軽く俺をディスりながら、心の中に問いかけてくる。この喋る盾は、俺が呪われた湖に落ちたときに湖底で出会った防具だ。
出会った時は、錆びや苔で汚れた古い盾だったが、コイツに何度も命を助けて貰ったお礼に毎日汚れを拭き取ったお陰で苔が剥がれ元の金縁で黒塗りの艶のある盾に戻った。錆びはどういうわけか盾を使うたびに綺麗になった。
盾の中央にはお城?のような絵に大きな鳥が重なる金色の装飾が施されている。
「あっ久しぶり、色々話したいことあるけどとりあえず…今まで命を助けて頂きありがとうございます」
俺は盾を樹木に立てかけ、頭を下げ素直に感謝の気持ちを伝えた。またいつかこの盾が話しかけてきたら言おうと決めていた。
感謝の言葉は大切なんだと子供たちにも教えているし、それを俺が出来なきゃダメでしょ。
「それと、呼び方はモンテウスでいいかな?」
『ほう、図々しい生意気な小僧だと思ったが、見当違いだったようだな。まあ、助けたのはお互い様じゃし儂は気にしとらん』
盾は俺の感謝の言葉に驚きを見せた。やっぱり印象はそんなに良くなかったみたいだ…。
生意気だと思われていたから今まで話してくれなかったのか?
『モンテウス…モンテウス…それは儂の持ち主だった者の名前だな。もう300年前に死んでおるわ』
とにかく名前はモンテウスでは無いようだ。
『儂のことは爺で良いわ』
「爺って、まありょーかいした」
盾の呼び方が決まった。それと謎深い爺のスキルについて確認しておきたかったので、話してくれている今のうちに聞いておいた。
「爺を装備した時からスキルを所得したけど、まずレベルってどゆこと?」
『レベル…レベル…ああこれは信頼度を表しておるな、詳しくはわからんが…通常のスキルレベルは経験や成長によって上がったりするが、これは別らしいのお』
なるほど、爺と仲良くなることで上がるのか?
好き好んでじいさんと仲良くなろうとは思わないが…それに防具だし。
「それじゃ、スキルについては?解放条件の(呪)とかレベルっていうのは?」
『え?ちょっと待つんじゃ小僧。儂、呪われとるの?』
「ええ、呪われとるよ」
『一度ステータスを見せてみい』
オルト・クラーク
Lv8 → Lv11
HP:192/192→ 243/243
MP:128/128→165/165
攻撃:62→89(+15)
防御:60→72(+5010)
魔力:30→48
魔防:30→48(+2510)
敏捷:34→54
右手:学校支給の剣
左手:モンテウスの盾(呪:毒、痺)
頭:
腕:
体:学校支給の戦闘服(上)
足:学校支給の戦闘服(下)
飾:
スキル
【毒耐性】:Lv8
【モンテウスの盾】:Lv1→Lv2
『弱いのお…』
「うるせえ!」
『儂、呪われとるね…』
「うん…呪われとるよ」
無機質なはずの盾が悲しみのオーラを纏っている。何となく爺が落ち込んでいるのが分かったような気がした。
『なぜ儂は呪われておるのかのう』
恐らく、爺が呪われているのは湖の水のせいだと思う。湯気のように立ち昇る濃い毒素、それを生み出す湖の水はそれ以上に濃い毒があるに違いない。300年もその中にいれば毒が盾に染み込んでいてもおかしくない。
「そういえば、爺のスキルレベルが上がってる」
さっきまでレベル1だったモンテウスの盾のレベルが上がっている。
『それは小僧が素直に感謝の意を儂に伝えたことと、お主毎日儂のこと布で磨いておったろ?錆びは魔力でどうにかなったが、苔はな…まあなんだ、少しばかしお主のことを認めたからだろうの』
なるほど、少し読めてきた。爺に認められたり、信頼されることによってレベルが上がるのかもしれない。
『小僧、スキルの詳細を開いてみい」
【モンテウスの盾】:Lv2
【呪の衣】:解放条件(呪:毒、痺)
盾に近づく者全てに状態異常:毒を与える。体力が減ると状態異常:痺を与える。
【侵食】:解放条件Lv1
盾が攻撃を受けると一定のダメージを与える。
【奪取】:解放条件Lv2
盾が与えたダメージを自身のHPに転換する。
新しい爺スキルが増えた!しかも他の爺スキルとかなり相性がいい!
『計らずもこの呪いは儂のスキルと相性がいいみたいだのう。それにお主は光魔法が使えずとも傷を癒せるようになったわけだ』
新たに取得したスキル【奪取】俺のダメージソースである盾でダメージを与えながら、傷も癒していく。さらに盾は通常、身を守るために使う防具だ。
守りながらダメージを与え、回復する…。
「無敵じゃないかっ!?」
『まあ、使うものによっては無敵になるかものう、でも以前儂を使っていた者は世界でも有数の実力者であった。結局戦いに破れて死んだがのう』
爺の昔の持ち主はそんなすごい人だったのか、どんな人だったのか気になる。
『だから気をぬくなと言うことじゃ、お主を一撃で葬る敵や視認できない速さで動く敵、それにお主のような耐性持ちが現れたときお主はどう対処する?今のままでは死ぬだろうの。まだまだ無敵ではないわい』
確かに爺の言う通り強い敵が現れたとき、殺されるのは俺だろう。驕らず、調子に乗らず、確実に実力を付ける。これから努力して強くならなければいけない。はじめての戦闘で覚悟したはずだ。
「それじゃあ、爺。これからも力を貸して欲しい、俺は強くなりたい」
『儂、特に目的ないしお主が死ぬまでは一緒に居てやるつもりじゃったよ』
改めて爺に礼を言った。落ちこぼれだった俺をここまで強くしてくれた盾だ、今まで以上に大切にしよう。
よし、心強い仲間を手に入れたことだし街に戻ろう。またララさんの飯が食えるぞ!木の実や果物じゃ全然満たされなかったもんな。
そういえば…爺の呪われたスキルはどうすればいいのだろう。街に戻れば周囲の人々を巻き込んでしまう。
「俺はこれから家に帰ろうと思うんだけど、爺の毒やばいよね?」
『ああ、それ?儂、コントロール出来るよ?』
え?そうなの?だって呪われてるんでしょ、それ爺がコントロール出来ちゃうの?
『魔力で包んでしまえば何ちゃらないぞい』
最強の盾だな…。
それと、魔物を倒したことで手に入れた魔石。
街に戻ったら換金してみよう。
えっと数は…。
魔石(極小)×78
魔石(小)×1
(極小)はゴブリンや狼の体をした人型のコボルトという魔物を倒して手に入れた物だ。
コボルトと始め対峙したときは少しビビったが、非常に好戦的であったため、あっさりと盾の餌食になった。
(小)はホブゴブリンを倒した時に手に入れた物だ。魔石の換金レートはまだわからないが数はあるため、少し期待している。
「肉体労働しなくても済むかもしれない」
森を出た俺と爺は少し休憩を挟んだあと、家路を急ぐ。
商業都市ヘロニスに。




