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03.押し寄せるレベルアップはすごいです。

「よっしゃー!!」


魔物の森に喜びの叫びが木霊する。既に切られた足の痛みなど忘れていた。

自分のステータスを表示する魔法の石版でさらっとレベルを確認する。



オルト・クラーク


Lv1→Lv2



おー!

ちゃんと上がってる。


苦節15年やっと手に入れたレベルアップ。クラスのみんなはとっくに10レベルくらいになっているだろうし、かなり出遅れているがこれは俺の人生で大きな一歩だ。


しかし、一つの疑問がある。


「あんたが助けてくれたのか?」


俺は背中の盾に問いかける。


『…』


やはり返答はない、そこで俺は良く良く考えてみた。


「盾が話すわけないよな…」


人が身につける武器や防具が意思や感情を持つわけがない。況してや話しかけてくるとか、可笑しい話だ。

俺は死の恐怖で幻聴を聞いたのだと自分の中で言い聞かせた。


でも、この盾に不思議な力があるのは間違いない。現に俺は何もしてないのに、急にゴブリンたちが苦しみ出し動かなくなったわけだから。


コイツを大切に使おう。


新しい決意を胸に、再び一行を探そうと歩み出そうとすると目の前に先ほどとは比べ物にならない数のゴブリンの集団がいた。


8…9…10…20体以上はいるだろうか…。


ゴブリンの集団は明らかに俺を標的にしている。それもそうだ、同胞の死体が人間の目の前で転がり、剣には同胞の体液と見られるものがこびり付いているのだから、疑う余地もない。

まあ、疑うも何も犯人は俺なのだが…。

ゴブリンの集団は憎しみの表情を俺に向ける。


こ、これは無理だ、逃げよう!特に奥にいた体のデカいゴブリン、アイツはやばい。


俺は全力でゴブリンの集団から逃げようと後方へ走り出した。しかし、背負っている盾がものすごく重い。結果、すぐ追いつかれることになる。


「「「ギキャキャー!」」」

「「ガキャー!」


何体かのゴブリンが鈍足な俺の行く手を阻む。


「ゴキャ、ゴギャギャー!」


体の大きなゴブリンは叫び、何かの命令を子分たちに下す、その声は太く大きかった。

命令の内容はアイツを殺せだのそんなところだろうが。

体の大きなゴブリンが持っている斧を俺に向けた。


「ゴギャー!!!」

「「「ギキャキャー!」」」

「「ガキャー!」


ゴブリンたちが一斉に飛びかかってくる。俺は近くの樹木を背にし、盾を構えた。盾は持ち主を守る為しっかり仕事をした。烈火のごとく襲いくる、ゴブリンたちの攻撃を不動にて受け止める。不思議と受け止める衝撃は強くなかった。普通の盾だとかなりの衝撃だったであろう。さっきの戦いで切られたこの足では耐えられなかったと思う。


『あの体のデカい奴はホブゴブリンじゃな。何体かのゴブリンを付き従えておる小型の魔物じゃ』


盾が喋った?


『人の小僧よ、主にはちと荷が重いかもの。』


かかかっと盾が笑った。

やっぱりコイツ喋るのか。


「ちょ、どうにかならないかな?この状況」


歪んだ表情で助けを乞う。今日だけで何回死にかけてるんだか。


『今どうにかしとるぞ?このまま儂に隠れていれば、どうにかなるわい。さっき実演しとっただろ、主はちと頭が固いな」

「そうだけど、数が…あと頭が固いは余計だ」

『そうじゃのう、まだ増えとるみたいだしのう。だがまあ、もう少し待て」


危険な状況だが、盾の言った通りこのまま我慢することにした。何度も命を救ってくれた盾だし、悪いことにはならないだろうと信じて。

すると、またしてもゴブリンたちが悲鳴をあげ、地面をのたうち始めた。ついさっき起きた事と同じ光景が目にうつる。目の前で倒れたゴブリンは腕が紫色に変色し、朽ち始めていた。既に痙攣し動かない個体もいる。


『ほらの。後は頑張ってみなされ」

「ちょ、ちょっと待って!この後どうすれば?」

『ふむ、教えるのは簡単だがの。1番身に付くことは、自分で考えて自分で行動して自分で責任を負うことじゃ。その方が人生楽しかろ?それに失敗した方がより身に付くもんじゃ』


いや、失敗したら死んじゃうじゃないですか…盾のおじいちゃん…。


「…ちょっと!?」

『…』


また、喋らなくなるんかい!


「クソっ、やってやろうじゃないか。腹くくったぞこのやろう」


ザシュッと剣を突き立て、足元にいたゴブリンにトドメを刺す。


「自分で考えて自分で行動して自分で責任を持つ。いいね、ただ殺されるより抵抗して死んだ方がマシだね。足掻いてみせますよ」


俺は盾を構え直し、ジリジリの前進を始めた。

進みながらも足元に転がるゴブリンにトドメを刺していくのを忘れない。


この盾は優秀だ、ゴブリンくらいの攻撃ならすんなり受け止めるし、理由はまだ分からないけど攻撃してきたやつから勝手に倒れていく。

でも気負うな、いつでも冷静に確実に仕留めて行こう。調子に乗って深追いしたらいつのまにか天国だ。授業で習ったことを口ずさみ、実戦で復習を重ねていく。

途中、俺の体が何回か光った。レベルアップだ、構える盾や手に持つ剣が軽くなった気がした。


30体近く倒しただろうか。倒れているゴブリンのほとんどにトドメを刺した。

あとは驚愕の状況に信じられないといった表情で固まる、ホブゴブリン一体とゴブリンが3体。


「ギキャ!」

「ガキャキャキャ!」

「ガキャー!」


取り巻きのゴブリン3体が飛びかかってきた。

俺は確実にゴブリンたちの攻撃を盾で受け止める。一筋縄ではいかないと感じたのか、ゴブリンたちは俺を囲むような陣形を取り、気を伺い始めた。少しずつ距離を詰めてくる。


今度は動く敵だ、やつらの動きをしっかり追うんだ。いや、違うなさっきはどうくるのか待っていたからやられたんだ。なら、やられる前にやるだけだ。


「今度は俺の番だ!」


俺はゴブリンに向かって突進し、盾ごと体当たりした。ゴブリンは面白いくらい飛んでいき、樹木にぶつかって動かなくなった。

すると、後方に2体のゴブリンが後ろに迫っていた。俺は振り向きざまにその2体に向けて、横一閃に剣をなぎ払うと、ゴブリンたちの体が二つに分かれた。

そして、盾の体当たりによって飛んでいったゴブリンにトドメを刺す。

また、俺の体が光った。


「あとはお前だけだホブゴブリン!どうする?」


精一杯脅しているつもりだった、出来ればこのまま逃げて欲しかった。怪我した足は痛むし、極度の緊張で心身ともに疲れ切っている。


「ガギャギャァアア!!」


やる気なんですね、そりゃそうですよね。今日の私やりすぎですもん。


先制はホブゴブリン、手に持つ斧をものすごいスピードで投げ込んできた。

ドゴっと凄い音がしたが俺は無事それを受け止める。やはり、この盾を警戒しているようだ。次々に子分たちが倒れていく光景を目にしたのだから、それはこの盾が原因だと何となく分かるのだろう。だが覚悟を決めたのか落ちている子分の剣を拾い、切りつけてきた。俺はその一撃を盾で受け止める。


「ぐっ…重い…」


腕力がゴブリンの比じゃない、人間の子供と大人くらいの差がある。そこから俺の盾とホブゴブリンの剣の押し合いが始まった。

俺は疲れ切った体に鞭打って、この力比べに全力を注ぐ。しかし、足の怪我もあるせいか徐々に押され始め、片膝を付く体勢になる。

圧倒的ホブゴブリン優勢の中、突然後方に飛び退き、ホブゴブリンは俺から距離を取った。

すると、いきなり吐血し、前屈みに地面に手を付く。


盾が効いてる?


ホブゴブリンの腕が微かに紫色に変色し始めていた。よく見ると、腕以上に足が変色している。


なるほど、ゴブリンたちの体液か!


地面に目を向けるとそこに広がるゴブリンたちの血溜まりが紫色に変色していた。


でも、俺も血溜まりを踏みつけているんだが…。

!?、これはもしかして、この盾が敵に与えているのは…毒?


俺はホブゴブリンに近づき告げる。


「ありがとう、俺は勇気という強い武器を手に入れられた」


ホブゴブリンは俺の手によって崩れる、その時体が2回光った。


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