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龍翔記  作者: GIN
531/693

0531話 門前の戦い その3

「……っ!」


考えるよりも早く身体が勝手に動いた様子で、ベルはその刃を受け止める。


受け止めたのは短剣。


ベルは受け止めた短剣を押し返しながら剣を振るって反撃する。


だが、その短剣使いはヒラリと舞い上がるように宙で一回転してベルの攻撃を躱す。


そのまま後方で回転して着地するとスッと短剣を構えた。


逆手に二刀というスタイルだ。


「お前は誰だ?」


「……」


短剣使いはベルの問いに答えない。


ただ黙って短剣を構えている。


隙無く様子を伺うその姿は先程まで戦っていた騎士とは異質の雰囲気を持っていた。


「おい、ベル」


「コイツは我に任せてもらうぞ、リュウ」


ベルはこちらを見ないまま、そう言った。


相手に異質な雰囲気に視線を逸らす危険性を感じ取ったのだろう。


「……油断するなよ」


「ああ」


「うぉぉぉっ!」


俺に向かってくる騎士の叫び声が聞こえる。


気合を入れるためなのかもしれないが声を出して攻撃するなど、自分の位置を相手に知らせているようなものだ。


俺はその攻撃を簡単に躱すと峰打ちで相手の武器をはたき落とす。


「ぐぁっ!」


腕を強く叩かれ、骨が折れたのか騎士が腕を抱えて膝をつく。


ベルと対峙している短剣使いと比べ物にならないほどの低い実力だ。


とても同じ騎士団とは思えない。


「リュウ!」


俺が倒した大柄な騎士の背中側にある死角から飛び出してきたのは再び短剣使いだ。


「……!」


その短剣使いは正確に俺に喉元を狙ってくる。


当たれば一撃必殺の攻撃。


「……はっ!」


咄嗟に居合で短剣を弾き返す。


ベルの時と同じようにヒラリと跳ぶと俺と対峙する位置に着地し短剣を構える。


二人の短剣使いは全く同じ構えだ。


「お前たちは……騎士ではないな」


俺はこの二人の短剣使いは騎士団の人間ではないと判断する。


武器が短剣だから、という単純な理由からではない。


もちろん武器が短剣なのは騎士らしくはないが、それよりもこの二人の振る舞いのほうが気になっていた。


油断なく構え、様子を伺う。


喉元のように一撃で相手を殺せる箇所を狙った攻撃。


そして明らかに高い戦闘経験。


ドォンという轟音が響く。


「……!」


大柄な格闘家が地面を強打したことによるもののようだ。


対峙するリサが後方に跳びその攻撃を躱す。


「……フフフッ」


短剣使いとは異なり、大柄な格闘家は僅かながらに感情を見せている。


リサは黙って槍を構えていた。


「はぁぁっ!」


イヴが気合を入れる声が聞こえる。


その視線の先には魔法使いを思しき者がいた。


火球を放つ魔法使い。


イヴはそれを横に飛んで躱す。


「ハッ、あたいの相手はあんたかい?」


「……」


魔法使いも感情を見せないタイプのようだ。


ただ黙ってイヴを見つめている。


「こいつら……」


イヴは何かに気づいたようだ。


「リュウ……コイツらは騎士じゃないさね」


「……ああ、プロ……だろうな」


「そうさね……あたいらがいたガジャース一家と同じ……裏組織の者だろうさね」


俺たちと対峙している短剣使い、格闘家、魔法使いの様子を見る限り、イヴの言う通り戦闘のプロ。


だが、冒険者といった感じでもない。


だとすると裏のプロ。


裏組織に所属するプロ、ということだろう。


「目的が分からないな」


「ああ、あたいたちを止めるにしちゃ、大げさな話しさね」


裏社会と関係を持つことはメリットもあるが、当然デメリットもある。


メリットは正攻法ではどうにもならない問題を解決する手段を得れること。


デメリットは金銭、そして関係を持ってしまうこと自体だろう。


契約で繋がっている間はいいが、一度それが切れるといつ敵になるか分からないのだ。


そのような者たちと関係を持つことはある程度、為政者にとってデメリットも多いということになる。


そんな裏組織の者たちが俺たちを止めようと目の前にいる。


もちろん領主の私設部隊という可能性もあるが、だとするとマクシミリアンの屋敷への襲撃時にも同行しているはず。


その時にはこれほどの実力者はいなかったということなので、あの襲撃のあとに雇った可能性が高い。


「しかし、ここまでやるかね」


「どうしても行かせたくないんだろう」


俺のことにニヤリと笑うイヴ。


「はん、嬉しくないお誘いだねぇ」


「そうだだ、だからさっさと倒して先へ進もう」


「賛成だね」


イヴは自分の拳と掌をぶつけてパァンと音を鳴らす。


ベル、リサもそれぞれ武器を構えて相手と対峙している。


騎士団は俺たちの様子に及び腰になったのか誰も動かない。


門前での戦いは騎士団から裏組織の刺客との戦いへと移っていった。

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