0526話 脱出への準備
「龍星剣術奥義:縮地」
俺は一瞬でマクシミリアンの屋敷の前まで移動する。
「リュウ!」
「テレーザ!」
屋敷の門を潜った俺の前に現れたのは多数の馬や馬車。
先頭の馬に跨っている男が馬上から俺に声をかけてくる。
「待っていましたよ、リュウ」
「ラウル!、無事だと信じていたぞ」
「ああ、皆に助けてもらいましたからね……その代わりにフォルカとマクシミリアンが……」
「旦那、後にしやしょう、リュウも戻ってきたことだし、さっさとこの街を出ましょうや」
「そうでしたね……リュウに馬を!」
ラウルの言葉を受けて一人の男が馬を引いてやってくる。
騎士のようだが見たことのない顔だ。
「初めまして、オレはグランツ……縁あって部下ともどもチーム:龍翔<ドラゴニア>に加えてもらうことになったもんですが詳しい話しはまた……」
「ああ、分かった……馬をありがとう」
俺はグランツから預かった馬に跨る。
テレーザは馬車に乗り込んだようだ。
「おにーさん!」
「シェリィ……いままでどこに!、……リュウと一緒だったんですね」
「あの時は一緒にいけなくてごめんなさい……リュウに助けてもらって私もチーム:龍翔<ドラゴニア>と一緒に行くことにしたの」
「そうですか……ですが詳しい訳はまた後ほど、まずは馬車へ」
「うん!」
「シェリィさん、こちらへ」
テレーザが馬車からシェリィに声をかける。
「はい!」
シェリィがテレーザと同じ馬車に乗り込むのを見てから、馬をラウルの横につける。
「おねーさん!」
「シェリィちゃん!」
馬車の中からレータとシェリィの声が聞こえる。
二人も別で知り合っており、ここで再会したのだろう。
そんな声を聞きながら後方に控える馬車などを見つつ、ラウルに向かって言う。
「準備万端だな」
「ええ、勝手ながら進めさせてもらいました……物資なんかもレムに収納済みです」
「ああ、俺も急ぎ街を出ようというつもりだった……まさかその準備が済んでいるとはな、さすがだなラウル」
「リュウも街を出るつもりだったんですね」
「ああ、こちらで行ったことなんかはカスミやミカエルから聞いていたからな……モントロワに留まるのは危険だと感じたんだ」
「同感です……更にこの一連の騒ぎにはモントロワの領主も関係しています」
「だったら決まりだな」
「ええ……それでどちらに抜けますか?……ブラウカ王国方面に抜ける手もありますが……」
「……いや、ブラウカ王国側だと、スーシアンに残る仲間との合流が難しくなる、スーシアン内部に抜けるぞ」
「ええ、リュウならそう言うと思いました」
「……じゃぁ、聞くがラウルならモントロワを抜けた後の行き先にアテがあるんだろう?」
「お見事……私の領地に向かいます」
「なるほど、その手があったか」
「ええ……あとリュウ、あちら側の馬車に乗っているのはこの街の住民たちで私達との同行を選択した人たちです」
「……モントロワを捨てて行くということか?」
「ええ、ここの領主は思ったより住民から拒絶されているようです……ここまで準備しておいてなんですが、同行に問題はありませんか?」
「ラウルがいいと判断したんだろ、だったら問題ない……あとは全員を連れてラウルの領地まで向かうだけだ」
「……リュウ……同行する住民は避難民が27名、孤児が9名です」
「分かった」
俺は住民たちが乗っている馬車に目をやる。
その馬車から数名の住民が不安そうな目で俺を見ていた。
街を捨ててついて行くと決めたものの、その冒険者たちのリーダーである俺のことは初めてみるのだ、
どういった人物なのかは気になるだろう。
「リュウ、旦那、そろそろ……全員、乗り込み完了していますんで」
シゲンがそっと声をかけてくる。
「そうだな」
「そうですね」
俺は馬を一歩前に出すと皆の方に向き直す。
「俺たち冒険者クラン:チーム:龍翔<ドラゴニア>はこれよりモントロワを脱出する!」
皆は黙って俺を見ている。
「最初の目的は街を無事に脱出することだ……門は固く守られているが、そこを強行突破する!、その後は仲間と合流し、追手を撃退しつつスーシアン内を進んで安全地帯まで行くぞ!」
「おおっ!」
俺の言葉を受けて皆が一斉に返事をする。
「ラウルは全体の指揮を頼む、シゲン、さんじゅーろー、ミナトはラウルのサポートを」
「リュウはどうするのですか?」
「俺は先頭を行くぞ」
「……駄目だと言っても無駄なんでしょうね」
「分かってるじゃないか」
俺の言葉にラウルは少しだけ肩を竦めて苦笑いを浮かべる。
そしてラウルは俺の横まで移動してくると皆の方に向き直して各自に指示を伝える。
「……モントロワからの避難民を含めた非戦闘員たちの馬車を中央へ、ハルは結界でその馬車たちを頼みます」
「うむ」
ハルが馬車の中から顔を出して頷く。
「馬に乗れるものは各自騎乗して馬車群の周囲に……街を出る際と出た後の追手に対応を!」
「ああ、任せろ!」
馬上での戦いを得意とするグレンが代表して答える。
更にアイリーンにアーガス、カミュ、マークに先程のグランツとその部下らしき者達が武器を高く掲げる。
「身軽に動けるものは馬車の屋根などから全方位の警戒と支援をお願いします」
「任せな!」
答えたのはリュドミラだ。エイルやニコルも一緒のようだ。
「魔法が使える者も同じく馬車の屋根から支援を」
「任せてくれ!」
ハインが答える。
アルスにゴブナ、ミーレス、ステフもいる。
「ララァ、リリィ、ソフィア、ハンナは非戦闘員たちの乗る馬車の前面を!」
「……分かったわ」
「……任せて」
「はい!」
「引キ受ケタ!」
「カルロス、アスカ、ルイーザ、モイスは非戦闘員たちの取りまとめを、カトリー、ロラを含め何人かでサポートを、ムギとイネッサ、ペトラ、リネットは子供たちをお願いします、こちらも何人かサポートを」
「うむ……」
「はい!」
「フォライー、ヴァラファール、レラージェ、シルフィ……君たちは怪我人や瑠璃、ミリル先生の保護を」
「お任せを」
フォライーが優雅に一礼をする。
「マルタン、トリスタン……また大変な仕事ですがお願いします」
「それが仕事だしね」
「任せて」
「泰然はあたなにしかできないことを頼みます」
「ああ、存分に腹を空かせるように戦ってくれ」
「ラルガンス、アスタ、セラ……全体の確認と支援を頼む」
「心得た」
ラルガンスが代表して答える。
「イヴ、リサ、ベル……最前線を……リュウの横を頼みます」
「待ってました!」
「うむ、引き受けた」
「ああ!」
ラウルの指示を聞いた仲間たちがバタバタと体制を整えはじめる。
「それにしても俺が戻っているとよく分かったな」
「トリスタンが報せてくれました……そのトリスタンはマルタンから聞いたようです」
「そうか……ガブリエルは後から合流するはずだ、ガイル、ミノス、ミカエルは街の外にいる、そしてアイリス達も無事だから街を出れば後から合流できるだろう、あと新しい仲間もいる、そうそうスー一緒についてきていたんだ」
俺は簡潔にパーシルの森側の状況を伝える。
「分かりました、スーに関しては姿が見えないかったのでそんな事ではないかと考えていました……ではまず、街を出ましょう」
そう言ってラウルは仲間たちに目をやる。
そこには体制を整え終えた仲間たちが俺とラウルを見ていた。
「リュウ、一言……」
ラウルの言葉を受けて俺は皆に向かって言う。
「街を出たら暫く強行軍で進むことになる、そして外の仲間と合流し、その後、一定の距離を取るまでは一気につもりだ、馬車の皆は窮屈だろうが暫く我慢してくれ」
俺の姿を黙って見つめる仲間たち。
「さぁ、行くぞ!、まずは街からの脱出だ!」
「「「「「「おおっ!!」」」」」」
力強く答える仲間たちの力強い声が響き渡った。
お読みいただきありがとうございます。
もし気に入られましたら、
ブックマーク登録や★評価、いいねを頂けると
モチベーションに繋がります!
よろしくお願いします!!




