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龍翔記  作者: GIN
524/693

0524話 教会の騒乱

「はぁぁぁっ!」


ガブリエルの拳が迫りくる覆面信者の顔面に決まる。


続けてもう一発。


更に迫る別の覆面信者の側頭部に蹴りを決めるとガブリエルは再び構えを取る。


「……くっ……天使とはいえ相手は一人……さっさと取り押さえなさい!」


アスピアの怒声に反応した覆面信者が襲いかかってくる。


「コ、コロセェ!、ワシに逆らうものはミナゴロシダァッ!!」


発狂したように叫んでいるのは司教と呼ばれていた男だ。


「ああ、私のペットが!、誰か、早く連れ戻して!」


奥方と呼ばれていた女も取り乱した声を上げている。


いまはイムロット教の教会は大混乱に陥っていた。


少し前までも狂ったような大騒ぎをしていたが、それはあくまで異端者への罰が行われることへの興奮だった。


だが、いまはその異端者が連れ去られ、司教のペットの獣人も攫われた。


そして仲間だと思っていた天使がイムロット教会を裏切り、信者を叩きのめしているのだ。


覆面の信者たちも司教やアスピアの言葉に従い、ガブリエルを捕らえようとするが、いくら全盛期の力がないとはいえガブリエルに敵うはずもなく打ちのめされている。


マルタンに倒された信者たちも徐々に意識を取り戻してきてはいるが、体が痺れていたり、意識が混濁していたりして一人で立ち上がることもできない。


何が起きているのかを把握できていない信者も多く、中には混乱して泣き叫んでいる信者もいた。


「こ、このまま逃げ切れると思うのか!」


アスピアが苦し紛れに叫ぶ。


「そうか、余裕でいけそうだが?」


ガブリエルは軽く返す。


「くっ……!、い、異端者を逃がすとは……前代未聞の不祥事だ……!、どうしてくれる!」


「ふん……お前らの事情など知った事か」


「審問官どのが異端者認定した者を逃したんだぞ……いまに天罰が下るぞ!」


「……審問官ね……」


そう言ってガブリエルはアスピアに向かって手を上げて、その言動を制する。


「その審問官というのは……」


教会の扉の傍らにある藪のような場所に手を突っ込むガブリエル。


そしてぐっと持ち上げる。


「なっ!」


「……これのことか?」


ガブリエルに持ち上げられているのはテレーザを担当した審問官だ。


すでに痛い目に合わされた後のようで、意識を失ってダランとしている。


「そ、それはまさかお前が!」


「……神のご加護がどの程度なのか試しただけだ……」


そう言って審問官をポイッと投げ捨てるガブリエル。


「もっとも加護はなかったようだがな」


「こ、この!、審問官どのの仇を取れ!」


アスピアがガブリエルを指さしながら言う。


「……死んではいないがな」


そう言って襲撃に備えて構えるガブリエル。


だが、覆面の信者たちは誰も動かなかった。


審問官が異端と認定した事実は絶対。


この事実があるからこそ、異端者に対してどのような拷問をしようとも神は喜んでくれるし、許されると思っている信者たちにとって、その根拠となる審問官がボロボロになっている姿というのは衝撃が大きかったのだろう。


神の言葉を伝えると言われるほどに神に近い審問官。


審問官の判断に間違いなどあるはずがなく、神の加護を最も受ける者。


その審問官が目の前の天使によってボロボロになるまで痛めつけられたということは神の加護がなかったということを示している。


この状況を受けて覆面の信者たちは自分たちの行動が間違っていたのではないかという思いに至ったのだ。


間違った行動をしていた?


神の加護は受けられない?


それどころか神の怒りに触れるのでは?


異端者認定が誤っていた?


いままでの異端者はどうだったんだ?


もし間違えていたのだとしたら自分たちのしてきた行動を神が許してくれるのか?


神の言葉だけを信じて異端者を痛めつけてきた覆面の信者たちの心を恐怖が染めていく。


もし神に許されないのだとしたら自分達はどうなるのか?


「うっ……」


「か、神に……」


「……うううっ」


「許しを……」


「……い、祈り……」


ガブリエルからジリジリと距離を取る覆面の信者たち。


「うわあぁぁぁぁっっ!」


「神を!」


「許しを!」


教会の中にある神を模した像に向かって一斉に跪く信者たち。


膝を付き、手を合わせ、一心不乱に祈りを始めたのだ。


「お、おい!、お前ら、何をしている!」


アスピアが必死に信者に向かって指示を伝えるが、誰の耳にも届いていなかった。


「神よ!」


「救いを!」


「お、おい!、お前らが救われるのはアイツを捕まえたときだ!」


必死に信者たちをガブリエルに向かわせようとするアスピアの努力も虚しく信者たちは祈りをやめようとする者はいなかった。


「く、くそっ……キサマ……いつのまに」


「……さっきお前たちがテレーザに対して大盛りあがりしていた時だ……おかげでリュウのカッコいい姿を見逃したがな」


「審問官どのに手を出すとは……罰当たりめ」


「そうだな、審問官が神イムロットの加護を受けているのであれば私などとうに消滅しているはずだが……」


言いながらガブリエルはアスピアにニヤリと笑いかける。


「……なぜかまだ生きている」


ガブリエルは戦闘の構えをとく。


もはや戦おうとする信者はいないからだ。


「これは私が信じる神が神イムロットではないからなのか……それとも……」


黙って見ているアスピアに向かって言う。


「お前たちが神を信じていないかのどちらかだな」


「コロセッ!、コロセッ!」


教会の中から叫び声が聞こえる。


司教が狂乱して声を上げているようだ。


「ワシの言うことをキケェ!」


「ぐわっ!」


「きゃぁっ!!」


「や、やめっ!」


続けて教会の中から叫び声が聞こえる。


「な、なんだ……」


アスピアが苛立ちを含めた声を上げながら教会の中を覗き見る。


そこから姿を見せたのは剣を持った司教だ。


その剣からは血が滴っていた。


「信者に手を上げたのか……やはりお前らに芯はないようだな」


ガブリエルが呆れた声をあげる。


「し、司教様……」


「ワ、ワシの言うことを……キケェ!」


司教は振り上げた剣をアスピアに向かって振り下ろす。


「ぐっ、ぐぇぇ……!」


その剣がアスピアに当たる前にそのでっぷりとした腹に拳をめり込ませるガブリエル。


うめき声を上げて倒れる司教。


「……なっ……どうして?」


アスピアがガブリエルの行動に驚きの声を上げた。


「別にお前を助けたわけじゃない……コイツをこれ以上、野放しにしていれば教会の外の住民にも被害がでるかもしれないからな」


アスピアが教会の門の外に目をやると、そこには教会で起こっている騒ぎが何事かと見に来ている住民たちの姿があった。


「くっ……もう……モントロワのイムロット教は終わりだ……」


住民たちが口々に騒いでいる様子を見てポツリと漏らすアスピア。


倒れた司教の覆面が脱げているのを見て住民の一人が声を上げる。


「あれって……りょ、領主……ヘンドリス様だよな」

お読みいただきありがとうございます。


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