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黒鷹湖の王!
誕生、慶応元年。
百年以上生き延びた、キッカイ(機械、奇っ怪)魚。
国の重要文化財に指定、間違いなし!?
もう、話題性十分だ。そこからの展開はまさに、一気呵成だった。
敦さんが県庁にて大々的に発表する。とたん、大森町にマスコミが大襲来だ。
真っ先に作者が調べられ、驚いたことに、町の蔵元、田中酒造のご先祖様であったことが判明する。
“からくり儀左衛門記念館”なる構想を町役場がぶち上げて。
にわかにスポットライトを浴びた現・田中家当主の小父さんが鼻息荒く、新銘酒“魚王”を製造販売すると高らかに宣言し。
まるでお祭り騒ぎだ。わっしょいわっしょいと、あっという間に、大森町は、全国にその名を轟かせたのだった。
一度遠目に田中小父さんと目が合ったことがある。とたん、脇役でも見るかのように鼻で笑われて、嫌な気持ちにさせられた。
敦さんはその田中家に足繁く通い、愛想笑いを振りまき――
一人、斉藤家は、蚊帳の外。
だれからも顧みられることなく、ただの一町民として、“祭”の騒ぎをよそに。その存在感を埋没させていくのだった。
仕方ない。
だって、なんの関係もないのだから。
釣り上げてもいないんだ!
出しゃばったまね、できるわけない。
口を結ぶ。
観光地化による弊害、ゴミ問題にしたって、町中に記念館建ててくれるって話なら、問題なし。魚王のレプリカを目玉に展示するって話だし、お土産用の魚王オモチャもそこで販売するという。となると、わざわざしんどい思いしてまで黒鷹湖に足を運ぶ酔狂な観光客は、いないだろう。もちろんだけど、主がいなくなった湖に、釣り人は魅力を感じないだろう。これまで通り、綺麗なままだ。まさに願っていた通りの、ことの運びだ。文句の付けようがなかった。
ま、これが分相応。人は、その人なりに生きることが肝要なのである。
不満を言ったところでだれも相手にしない。そもそも、何に対しての不満なのか。
結果的に帳尻が合ったということで、一篇のお終い。
“魚王”の話は、これにて完結、なのであった。
めでたし、めでたし。




