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86 相変わらずミリーがお兄ちゃんと言ってくれません!ネルカ先生!どうすればいいですか!!!

ファーノと落ち込ミリーが平民寮で食事中、ゲイルとネルカは校舎の方にある食堂で向かい合っていた。


「なあ。どうしたらミリーはお兄ちゃんって言ってくれるんだろ……」


「…………え?私が相談に乗る方なの?」


ネルカがゲイルの相談に乗っていた。


「だってお兄ちゃんって呼んでって言ったら……、言ったら…………」


剣術決闘の時のトラウマが甦り、ゲイルが泣き崩れてしまう。


ネルカを励ますために声かけたとみんなが思ったのになー。まさかその相談に乗ってもらうために声かけたんじゃないよな……?


ネルカは若干呆れながらもとりあえず相談に乗ってあげることにした。


「そもそもミリーちゃんがなんで呼びたがらないのか、その理由を知る必要があるんじゃないかな?」


「なんで?」


「知らない」


ネルカ即答。


知ってるけど知らない。実質これはミリーの問題であり、ネルカの口から言うべき問題ではない。


ゲイルはガクリと肩を落とした。


「私だってミリーちゃんからお姉ちゃんって呼んでもらいたいなー」


思わず本音が漏れた。


「ミリーは渡さん」


「それ、ミリーちゃんの前で言ってあげなよ。まあ、妹としてと言うよりも、私のこと、近所のお姉さんとして見てもらえると嬉しいなーって。あ、いや……。妹に欲しいかも…………」


一人に一人、ミリーさん。


「渡さん」


「ゲイル君だけ独り占めするつもり?」


バチバチと視線が交差する。どちらがミリーを妹にできるか?仁義なき戦いが今…………。


始まるわけないじゃん。


「はー。まあ、ゲイル君も私もミリーちゃんを妹にできる手っ取り早い方法ならあるけどねー」


「期待せずに聞いてやろう」


「私がゲイル君と結婚すれば万事解決!」


「なるほど!」


なるほどじゃないアホども。第一、お前ら二人が結婚したところでミリーが妹になる保証なんてどこにもないだろうに。




「……………………あ゛?」




横から何やら不機嫌そうな。本当に大層ご機嫌ななめなグルアーノ・ロヴェステンさん (元魔王レーノ様) だった。


「あ!おひさー!グルアーノ!」


全く空気を読まず満面の笑みを浮かべて挨拶する。いい度胸してる。


「何?暇なの?()()()()()()()()()()()()()()()()()どっか行ってよ」


ネルカもまた不機嫌そうに。本当に大層ご機嫌斜めの様子でグルアーノに言葉を吐きつける。


「キャー!略奪愛よ!略奪愛よ!!!」


ネルカのセリフは状況的にそう見えなくはない。面白がった3年の()()生徒が(あお)った。当然食堂がざわつく。一部の生徒たちは自分の教室に戻り、噂を広げようとした。根がないだけで、葉がついてるんだから大層(たち)の悪い噂話になりそうだ。


ネルカとグルアーノがバチバチと視線を交差させるなか…………、いや、お前らここでおっぱじめようとするなよ?


「おいおい二人とも。婚約者同士なんだからそうカリカリすんなよー。あ、このスープ美味しいな」


当事者が赤の他人を気取り始めた。


「おい、ゲイル。ネルカがおまえと結婚すると言ってるがどういうことだ?」


「んだ?ミリーを妹に欲しいんだって。俺としては渡すわけにはいかんが、妥協案を提案されたので検討「するな」あ、はい」


ゲイル。グルアーノさんのマジギレにはさすがに自重した模様。


「お前ら仲いいんだか悪いんだかわかんね」


「なんか言った?」


「なんか言ったか?」


「なんでもございません!」


二人の凄みに右にならえのごとく縮こまる。


「で、お前らはどういう経緯(いきさつ)で二人で食事をとってる?」


「は?あんたには関係ないじゃん」


ネルカが苛立つように言った。


「吐け、ゲイル」


「はい、魔王様。リズの機嫌がここ最近よろしくなかったので、声をかけた次第でございます」


魔王に脅された村人ってきっとこんな感じだったんだろーなー。


「なんだ?おまえ調子悪かったのか?」


「だからグルアーノには関係ないでしょ。さっさとあっち行ってよ!しっしっ!」


「なあ、ゲイル。ネルカはいつから調子悪かったんだ?」


「何?ストーカーか何かなの?私に構わないでよ」


二人が問答を繰り広げているなか、(あ、グルアーノの奴、ネルカのこと素で心配してる。ワロタ) と考え、素直に言うことにした。


……………………心の中の最後の一言余計だよね?


「先週のミリアの実践魔術論の時からかな?」


「そうか」


グルアーノはネルカに「無理はするな」とだけ言って、その場から離れた。


「あ、そーだ。グルアーノ!」


思い出したかのように、ゲイルが声を張り上げる。呼び止められたグルアーノは振り返り、「なんだ?」と聞き返した。


「レッドネックって知ってるか?」


「……………………」


グルアーノの眉がピクリと動くのが目に入り、ネルカの息を呑む音が耳に入る。


食堂内では不穏な空気を察知した生徒達から順々に声が小さくなっていく。


対するゲイルは普段通りと言った感じにグルアーノの返答を待っていた。


「…………()()()()


「そっか。ありがとなー!」


グルアーノはそのまま立ち去っていった。


「よし!大体わかったから今日のところは引き上げよっと」


「え?ええ!?」


突然配膳を持って引き上げようとするゲイルにネルカは思わず()頓狂(とんきょう)な声を出してしまった。


「ちょっと!引っ張り出しておいてなにそれ!大体分かったことって何よ!」


しかしゲイルはその言葉に返すことなく、「婚約者なんだからあまり心配かけてやんなよ」とだけ言った。


「あ。()()()!」


立ち去る途中でゲイルが振り帰り、配膳を片手にサムズアップする。


「レッドネックに()()()()()()()!」


その瞬間、ネルカの視界からゲイルの姿が消え、あの少女の姿を見た気がした。

いつも閲覧くださりありがとうございます。


最近、例年とは異なる情勢で、読者の皆様も色々と予定が難航しているのではないかと推察いたします。かく言う私も、例年とは異なる状況に直面し、創作方面に時間を割くのが厳しい状況です。


次回掲載予定の内容は本節の最終話 (章としては折り返し) でありますが、掲載後、一ヶ月一時休止するか、週一に掲載速度を落とすか検討中です。詳細が決まりましたら、改めてご連絡いたします。

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