69 今の姿を見てもらいたかったのだけれども……
暗くなる前に学園に戻り、貴族用の男子寮へと向かうネルカとミリー。ゲイルにお披露目するためだ。尤も恥ずかしがって抵抗するミリーをネルカが無理矢理引っ張っている構図だが。
寮に着くなり男子寮の生徒たちは揃ってミリーに目を向ける。前回の剣術決闘でも可愛らしい服をお披露目させられた彼女であるが、今回もまた可愛らしい服を着ており、釘付けになったのだ。
「これはゲイル君の反応が楽しみだね…………」
男子諸君の反応に大層ご満悦の様子。ゲイルの前に出されたときのミリーの反応がどうなるのかと妄想にふけていた。
対するミリーは普段の無表情で堂々とした様は見受けられず、恥ずかしがり縮こまっている様子。それが男子諸君やネルカの心を刺激すると知らず。
「やっぱりやめましょう。ゲイル様にお見せするような格好ではないですし、私に相応しい格好でもありません。それに…………、あれ以来ゲイル様とはまだ口を利いてませんし…………」
「え?まだ仲直りしてなかったの?」
ミリーは剣術決闘のゴタゴタの際に、ゲイルと一悶着あり、それから10日近く、目をあわせることもしなかった。彼女のプライドが許さなかったらしい。
「だったらこれを機に仲直りしよう!」
途端にネルカは強く引っ張る。
「今のミリーちゃん、可愛いし色っぽいんだよ!見せないなんてもったいない!ゲイル君をイチコロに出来るかもしれないんだよ!」
その言葉を聞き、その言葉の意味を理解したところでミリーの顔は一層赤くなった。そしてその場から逃げようと抵抗が激しくなる。
「うひひひひ。ミリーちゃん、どうしたんだい?部屋はすぐそこだよお?」
最早不審者である。
いよいよゲイルの部屋の前に辿り着き、二人が悶着しているところでその二つ隣の部屋から人が出てきた。
「ネルカ……。それにミリーか……。珍しい格好をしてるな」
突然現れたグルアーノを警戒してネルカはミリーを後ろに隠す。
「グルアーノは見るな」
嫌悪感を隠す気もないらしい。グルアーノはただ「そうか」とだけ言葉を漏らした。特に思うところはないらしい。
「ゲイルに用事か?」
「…………だから?」
「今はやめとけ」
グルアーノの言葉に二人は首をかしげる。するとゲイルの部屋から奇声が聞こえてきた。
「ああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
思わず二人はビクリと身体を震わせる。
「ゲイル君落ち着いて!あと2ページだから!そこでキリがいいから!」
「もう嫌だああああああああああああああああああああ!!!!!見たことのない文字が部屋中で埋め尽くされてるんだああああああああああああああああああああ!!!!!」
「わあああ!ダメだよ!!!そっちは窓!!!怪我するよ!!!」
ゲイルとカロゥの声が廊下中に漏れ出ていた。ネルカとミリーは唖然としたまま固まってしまう。
「朝からこうなんだ……」
グルアーノが溜息混じりに答えた。
「何があったの?」
「どうやら研究会で課題を出されたらしい。分量が多いそうで悲鳴をあげている。昼も食堂で奇声をあげて皆近づこうにも近づけなかった……」
再び溜息を漏らすグルアーノを目にし、二人は顔を見合わせた。
「ミリーちゃん。残念だけどそっとしておいてあげよ?」
「はい…………」
「良かったら部屋来る?夕飯も一緒しない」
「……………………………………………………………………………………そうします」
心なしか返事に元気がなかった。ああは言いつつもお披露目したくないわけではなかったらしい。誰から見ても落ち込んでいるのが分かった。
「止めずに入れてあげればよかったかもな」
二人の背中を見送るグルアーノはいまだ奇声がやまないゲイルの部屋をよそに一人で図書館に足を運んだ。
今週から月曜日の掲載を再開いたします。




