65 嵐の前の静けさに
ベルフェリオ王国の国教であるローザンヌ教会は王都の外れに神殿を構えていた。国教とは言え、その立地からは自分達は信仰の代弁者。政治的争い事には関わるまい、との矜持が見え隠れする。実のところ、ローザンヌ教が国教となったのは、この300年の話。有史数千年と比べてしまえば、それほど信頼関係が続いているとは言い難い。
今日の信者への説法と寄付金の受け取りを終えた枢機卿は近寄る足音に振り替える。
「……これは大神官殿」
ローザンヌ教会のトップの1人、大神官が真剣な面持ちで構えていた。
「先日、レーニアリスで異界召喚が行われたそうだね?」
若々しい声に枢機卿は尊敬の眼差しを向けながらも失笑する。
「剣術決闘でのことです。いつものこと。大神官殿がお気にするようなことは何もありません」
剣術決闘の時に、Cクラスが変なのを召喚するのはいつものことである。そしてその召喚を止めるものたちを妨害するモルゼオの存在も。学園においてもその手の話をよく耳にするものたちにとっては今更なのだ。かなり大事なのだが……。慣れって怖い。
「それだけなら僕も気にしない」
あ、気にしないんだ。
「けれども今回は封印と言う形をとらなかったそうだね?」
異界から何かを召喚したとき、大抵の場合は封印を行い被害を最小限に押さえようとする。しかし今回は天上とを繋ぐ通路のようなもので封印出来るかどうかは定かではなかった。
「ええ。どうも異界へと送り返したようですね」
「……今回どのような魔法が使われたか分かってる?」
「よくは分かりませんが、呼び出したのです。送り返す魔法も起動できるのでは?」
異界へと送るのは容易ではない。けれども召喚は出来たのだ。何らかの方法で送り返せても不思議ではない。
「……今回の魔力の流れ、懐かしさを感じたと思ったんだ。リーゼロッテが送り返してくれたようだね?」
姫騎士リズの転生は教会でも噂になっている。ただ驚くことは別にあった。
「なんと!姫騎士リズ殿は魔法が使えるのですか!素晴らしい」
枢機卿はその魔法を是非とも授かりたいと興奮に震えていた。けれども大神官の心は別の場所にあった。
「確かに驚くことかもしれないけど、問題はそこじゃない。彼女がどんな魔法を使ったのかと言うこと……。リーゼロッテが使ったのは異界送りの魔法だ」
「そのような魔法が実際にあるのですか!てっきりその手の魔法は単なる妄想かと思いましたぞ!」
異界送りの類いの魔術や魔法はあるといいな、格好いいだろうな、と誰もが思っているが、実際にその手のものがあるとは信じられていない。一番大きな理由は、その手の術について記録が残っていないからである。
枢機卿の興奮は尤もだ。けれども大神官は彼とは別に神妙な面持ちで注意した。
「その異界送りの魔法を開発したのは西の魔女の一人……………………、『レッドネックの義母』だ」
その言葉に枢機卿は固まる。
「いや、しかし……。だからといって問題があるわけでは……」
枢機卿は困惑しながらも、だからなんだと尋ねる。
「レッドネックの義母は不老不死の力を手に入れたと言われている。だから700年前に僕たちは封印した。……けれどもその封印は完璧じゃない。今回の魔力の流れで彼女は意識を取り戻し復活するかもしれない」
大神官の指摘にハッと息を飲む。
レッドネックの義母。700年前に居たと言われる魔女。かなり危険な人物であったと教会の記録には残っており、彼女の復活には注意せよと訓戒がなされている。
「ですが、その時は聖女様から御告げが口に出されるはず……。今すぐどうのと言われる話では……」
「その通り」
大神官の言葉にホッと息をはく。けれども彼から続けられた言葉に再び顔を強張らせた。
「けどその聖女から別の御告げがもたらされた。……別の方の封印が解けると」
「っ!?」
枢機卿は明らかに狼狽する。
「いつ解けるかまでは分からない。けれども御告げが降りた以上、見て見ぬフリはできない。枢機卿、信頼の置けるものを集めて。僕は国王に報告にいくよ」
枢機卿は慌てて頭を下げ、対策会議を開くべく、すぐ様人を呼びつけた。
その姿を見送りながら大神官は小さく独白する。
「君は今の平穏を見ても、まだこの世界のこと、嫌いなままかな……?」
それはかつての仲間に向けた言葉だった。
はい!第2章おしまいです!
ここまで読んでくれてありがとうございました!!!
暫くクール期間を置いてから第3章......
と思ったのですが、恥ずかしながら、3章以降は考えていたのですが…………。
書き終えてから「あ、なんか違う」と思いまして、少なくとも半没が確定してますorz
しかも今リアルが忙しいです......。
原稿の書き直しとか諸々含めて、だいたい落ち着くのが年越してからだとおもいます!下手すると年度末までヤバいかもです!
あまり期待しないでお待ちください(´;ω;`)
とりあえず、第二章まで辛抱強く読んでくれましてありがとうございました!
三章書き終えたらすぐ戻ります!それまでしばしお待ちください!
それではメリークリスマス!そしてよいお年を!




