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58 剣術決闘3 3といったら3なんだよ!

BクラスとDクラスが乱闘をはじめ、Cクラスが地面に魔法陣を描いているのをよそに、ネルカ、グルアーノ、そしてノモンはミリーのもとへと駆け寄った。


「大丈夫!?ミリーちゃん!!!」


うつ伏せのまま中々立ち上がれないミリーを仰向けにし腕で支える。


「おまえ、何かしたのか?」


グルアーノがノモンに問いかけると彼は「俺じゃねえよ!」と慌てて否定する。


「……ノモン様では……、ございません……」


目を開けるのもつらいのか、瞑ったままミリーが答えた。肩で息をしており、体力の限界を迎えていたことが分かる。


「何があったんだ?」


「風魔術を……受けました……。観覧席から……」


グルアーノの問いにミリーが答える。乱闘中の面々の中にゲイルがいるのが目に映り、Dクラスの誰かがやったのだと察した。


「クラス総出で?それとも誰かの暴走かな?」


呆れた口調で言うネルカに「そんな些末なことは捨て置け」とグルアーノが一蹴する。


「それよりもミリーを運ぶぞ。ネルカ、一緒に肩で支えよう」


ネルカはコクリと頷き、グルアーノと共に医務室へと向かおうとする。


残されたノモンはただ俯いて呟いた。


「俺のクラスが邪魔したばかりに……」


するとミリーはネルカたちに一度止まるように言い、ノモンに横顔を向けて笑みを浮かべた。


「いえ……。今回の戦い……、見事な采配でした……。流石です、ノモン様……」


ミリーのその笑みはノモンが彼女が奴隷であることを忘れさせるのに十分だった。


それから再び歩みを進め、決闘場の外へと出ようとする。


「でも、ミリーちゃん?もしかしてDクラスの子、全員を相手にしてた?」


「?そうですけど……?」


さも当然のように言うミリーにネルカは呆れた。


「3人全員を相手にするなんて無謀だよ?どうして助けを呼ばなかったの?」


「いや、おまえは俺を相手にすることしか考えてなかっただろ。頭に血がのぼり過ぎて周りが見えていなかったぞ」


そうグルアーノは突っ込むが、頭に血をのぼらせ過ぎた点は彼も人のことを言えない。


ミリーは苦笑しながら「ペース配分を間違えました」と言った。


「ノモン様と対峙したとき、最後の一撃とばかりに構えていたのですが……、風魔術一回で倒れるほどしか力が残っていませんでした……。反省しないと……」


真面目に答えるミリーを見て、ネルカとグルアーノは顔を合わせ、思わず苦笑した。


そしてふと気づいた。先ほどからミリーが笑みを浮かべていることを。


「もしかしてミリーちゃん……」


「待て、ネルカ!何か様子がおかしいぞ?」


グルアーノの声にハッと振り返る。


異様な空気の発生源はCクラスの生徒たちがいる場所だった。彼らは魔法陣を描き終え、何やら唱えている。


「ねえ。あれ流石に危ないんじゃない……」


ネルカの額から自然と冷たい汗が流れた。


「あれは……。邪神などを召喚する系統の召喚魔法だ!!!」


グルアーノはいまだに立ち尽くしているノモンに顔を向け呼ぶ。


「ノモン!ミリーを任せる!」


突然呼ばれたノモンは意味が分からず、慌てて駆け寄る。


「ミリーをここから運び出してくれ。ネルカ、行くぞ!」


ノモンにミリーを預け、グルアーノは直接、ネルカは一度放り出した武器を回収してから、Cクラスの生徒たちの下へと向かった。


ミリーを任されたノモンは事態が読めず呆然としたまま立ち尽くしていた。ふと視線に気づき、ミリーの顔を見る。


普段のミリーは常にゲイルの面子のことを気にして、なるだけ表情を出さないように、気を配っていた。けれども今回の決闘で体力を使い果たし、そのことが頭から零れ落ちていた。


決闘が楽しかった。


その心がそのまま表情に出てしまい、けれどもそのことに気付かず、ノモンの顔を見つめていた。


「楽しかったですね、ノモン様」


ノモン・フェインが奴隷の子ミリーに恋に落ちる瞬間だった。

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