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23 ネルカとミリーとついでにゲイル

ミリーに注意をされながらも、何かにつけてゲイルはネルカに近づいていた。例えば昼食のとき。


「リーゼロッテ様。ご注文は何にいたしましょうか?」


「いや、自分でやるから……」


「どうぞミリーとご歓談ください」


「じゃあ、魚料理で!君に任せる!」


ミリーとの時間を確保できることに前言撤回するネルカ。ゲイルとネルカ同時に言われ、ミリーはしぶしぶネルカと同じテーブルに座った。


「ミリーちゃんは寮では何してるの?」


「今のところ教科書に目を通しております。分からないことがあれば図書館に赴くこともあります」


「あれ?それ以外には?」


「特に何をするわけでもありません。強いて言うならば、剣術の授業に備えて室内で軽く運動するくらいです」


「じゃあ放課後にお出かけするとかは?」


「出掛ける場所もありませんので」


「だったら今度一緒にお出かけしようか?色々と案内するよ?」


「ゲイル様に合わせますので……」


「オーケー。ゲイル君に後で確認を取ろう」


噂をすればゲイルがやってきて、二人の前にそれぞれ料理を置く。


「リーゼロッテ様。魚料理は煮物しかありませんでしたので、こちらでご容赦ください」


「ありがとう!」


「ミリー。今日はお前が好きなトウモロコシのスープがあったからつけてもらったぞ」


「え?あ……。ありがとうございます…………」


ミリーの感謝の言葉は自然と小さくなっていた。ゲイルはすぐには座らずテーブルから離れようとする。


「も、申し訳ございません!私がゲイル様の食事をお持ちいたします!」


「気にしなくていいぞ〜。せっかくの機会なんだからリーゼロッテ様と談笑しとけって。リーゼロッテ様、お先にお召し上がりください。そうでないとミリーは中々飯を食ってくれないので」


「分かった!ゲイル君もああ言ってるし先に食べよう?」


「…………はい」


ミリーは小さな声で返事をし、促されるままに食事に手を付ける。ネルカは幸せそうに魚を口に運んだ。あまりにも幸せな気持ちに浸っていた為、ミリーが口を噛み締めていたことに気づかなかった。


「そうだ!ミリーちゃん!私について何か聞きたいことは無い?ネルカのことでもリズのことでもどっちでもいいよ?」


「では……。アリス様がどのような方であったのかを……」


「アリスかあ……。凄い子だったよ?初めて会ったのは、ヴォルゾンって街に行ったときだったかなあ?15の時だったかな?縁談があってヴォルゾンの商会に足を運んでたんだ。王位継承権がそれほど高くはなかったからさ、貴族との縁談が取り付けなくてね」


笑みを浮かべながら、ネルカは言葉を続ける。


「縁談がまとまって商会から帰る時、街に魔獣の群れがなだれ込んできてね。私の護衛が慌てて戦ったんだけど……。街は燃えるし、離れ離れになるしみんないなくなっちゃったし……」


ネルカの声が沈んでいた。短く言葉をまとめているが、言葉では言い表せない、あるいは言いたくないことがあるのだとミリーは感じた。


「逃げまどってる途中で、転んじゃって。もうだめだって思ったんだ。そしたらアリスが助けに来てくれたの!私に襲い掛かろうとする魔獣をズバリ!アリスに襲い掛かろうとする魔獣も返り討ち!格好良かったなあ……」


ネルカの目には懐かしさがこみあげているかのように遠くを見ていた。


「ちなみにその時のアリス、何歳だったか知ってる?」


ミリーは首を横に振る。


「12歳だよ!12歳!当時の私は勿論、今の私よりも年下なんだよ!凄いよねえ!」


ネルカの目から尊敬の眼差しを感じ取る。


「リーゼロッテ様はアリス様がお好きなんですね?」


「ネルカって呼んでね?」


「え?あ、はい。ネルカ様はアリス様が……」


再び言い直すミリーの言葉に「大好きさ!」と言葉を返した。


「あの子を見て好きにならないのはあり得ないと思うよ?……結局名前聞けなかったなあ」


ぼそりと呟くネルカの言葉にミリーが聞き返そうとしたところでゲイルが戻ってきた。


「いやあ。一回目に並んだ時よりも混んでる混んでる。遅れてすみません」


「ごめんね?先食べちゃって」


「いえいえ。温かいうちに召し上がるのが一番です。それに俺は男、さっさと追いつきますよ」


ゲイルはそう言って椅子に座りさっそく食べ始める。


「ゲイル様。先に食事をとってしまい申し訳ございません……」


「全くミリーは堅いなあ。友達と談笑してる時くらい身分のことなんて忘れてしまえよ」


「そうだよ、ミリーちゃん。一緒に居る時くらい柔らかくなろ?」


ミリーはただ俯いて無言になってしまった。談笑は続き、ゲイルの皿が空っぽになったところで午後の授業へと向かう。ただ、ミリーの足取りだけは重そうであった。

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