21 ネルカ・スワローズの思惑
「ふふ」
レーニアリス学園貴族用の女子寮の一室。
「うふふ」
午後の算術の授業の後、クラスメイト達と町にお出掛けをして来たネルカ・スワローズの部屋。
「うふふふふ」
ネルカは一人で隠しきれぬ笑みを浮かべていた。
一目惚れだった。最初のうちは嫉妬していたかもしれない。けれども想起の儀式を終え、リーゼロッテの自我が芽生えたとき、それが愛しさに変わった。
声をかけずにはいられなかった。話がしたかった。けれども話しかけるきっかけがなかった。色々と思い悩んだ末、完全想起を果たしたと噂されている魔王レーノをダシにすることを思いついた。
そしてオリエンテーションの日、接触した。感触はあまりよくはなかったけれど、自分に意識を向けざるを得ない状況には出来た。
正直他のクラスメイト達に絡まれている暇があったらもう一度接触したかった。けれども中々チャンスがつかめなかった。今回はクラスメイトをうまくかわしてもう一度接触。悪印象を与えちゃうかもとは思ったけれども、駆け出しを良いものにしたいと言う想いから、踏み込んで交渉してみた。
そして結果は上々。確たる接点を持てた。
「あはは!大成功っ!」
悪くない。非常にいい!まだ警戒されているが、3年もあるのだ。関係を深めるには十分時間がある。
「きれいな銀髪だったなあ……」
うっとりとした表情で、その容姿を思い出していた。
ネルカは昔から銀髪の人を見ると思わず目を向けてしまう癖があったが、儀式の結果その理由に察しがついた。
その上、あの透き通るように綺麗な碧目。
ああ、そばにいたい……。
「うふふ。これからよろしくね?ミリーちゃん」
なんてことはない。
ネルカ・スワローズ兼姫騎士リズはちょっぴり残念な人だったのである。むしろ想起の儀式で完全想起を果たしてからの方が残念さが増したかもしれない。儀式前のネルカの方が貴族の令嬢として振る舞いが美しかった…………。
「フォアワード家の銀髪の奴隷。しかも碧目……。血は途絶えなかったってことかなあ。良かった……」
そして安堵した表情を浮かべた。
「でも安心するのはまだ早い……。この学園にはレーノがいる」
魔王レーノ。噂では完全想起を果たしたらしい。けれども具体的に誰なのかまでは特定できなかった。そう遠くないうちに判明するだろうが、不確定要素は排除しておきたい。
恐らくAクラスの誰かであろうところまでは分かっている。2年生からは試験の成績で諸般の事情でCクラスの生徒を除き割り振られるが、新入生の場合はなぜかAクラスに前世が魔族の者達が集められる。逆にBクラスは前世が人間。CクラスとDクラスについては別の理由での組分けになり、Cクラスにも前世が魔族の者も居るが、魔王レーノについてはAクラス確定で間違いなさそうだ。
話を聞く限り、自己紹介の後Aクラスの雰囲気が変わったらしいから。
「あいつがミリーちゃんの存在に意識を向ける前になんとしてでも守ってあげないと……」
その目はいつになく真剣だった。
「ミリーちゃんをあいつから守って……、お姉ちゃんって呼ばれたいっ!」
本当に残念なことにゲイルと同類だった…………。




