第二章 capter-1 邪霊の胎動
「あー食った食った……」
「いい店だったねー」
「うむ」
旅館までの帰り道、外はもう夜道になってしまっていて暗い。街灯も元々多い方ではないので人通りも少なくなってきた。
アロンソ達とは別れ、今道を歩いているのは俺達3人だけだ。
しかし……アロンソは本当に気前のいい事だ。これも金持ちの余裕なのか……いや、単に人がいい男なのだろう。
……全くもって、尊敬できるな。
平穏な休暇で上機嫌の須賀谷は自分もあぁなりたいものだと思いつつも、歩く。
ブレイズクレイドルの建物が遠目に見え、道標になっていた。
ーーだが、旅にトラブルは付き物だというが、いつの間にか問題が起きてしまう。
「ここは……何処だ?」
日も暮れて少し歩いていたところ、ブレイズクレイドルの建物がいつの間にか見当たらなくなってしまったのだ。
周囲の人気も全くいなくなってしまっていて、人に聞くことさえも出来なくなってしまい困る。
「え……?みんな揃って、迷子って事? 地図ももらってきたのに」
イフットが困った口調で言う。
「そんな馬鹿な。あんな目立つ建物を見落とすわけがない」
須賀谷は口を尖らせて文句を言った。
「妙だな……私も先ほどから目印にして歩いていたのだが」
「都の作りは一定ですからひょっとしたら道を間違えたのかもしれませんね。……飛んでみますか?」
空中浮遊ができるイフットがそう言ったので、頼む。
「……あぁ、頼むぞ」
順はそういうとイフットが少し上に飛び上がり、左右を見渡す。
……しかし。
「ダメです、見当たりません」
「安心しろ。今は……何時だ? せめて時間が分かれば月で東西の方向が分かる……」
そう言いながら順はポケットから懐中時計を取り出すが、言葉を失った。
「どうした?」
空気の流れを……感じる。
須賀谷は順の手元を見るが、同時に絶句してしまった。
時計の針の分針が、加速している。
「え……?」
「何だ、これは。イフット、降りて来い」
「あ、はい!」
イフットが地面に降り立つと同時に、何か異音が近くから聞こえた。
今まで聞いたこともない音。何だ、これは?
「ギギ……ガガ……」
咄嗟に背筋に嫌な予感が、した。これは……不快だ。
「士亜。武器はあるか?」
順が緊張感のある様子で口を開く。
「タキオンマグナムも鎧も家です。……タマチルツルギだけは持ってきましたが」
「そうか。……そこのドブからだ!」
言うが早く3人は気配を察知し、その場から飛び退く。
すると道の傍の排水溝から……何かが飛び出てきた!
「何だ……こいつは!?」
落ち着いて姿を見る。……青白い化け物? 顔には白目しか……ない。
筋肉質な二脚で人型ではあるが……肌の色といい、人間ではない。角まであるぞ。どちらかというとペーパーゴーレムに近い不気味さを感じる。
「グゥゥゥ!」
奇妙な怪物は、低く唸った。
「どうにも言葉を解さないところからするとここの人間という訳ではないようだ。……敵意を持ってるなら潰すぞ」
順が召喚用デバイスを掲げて、威圧する。
すると化け物の後ろから、さらに同じ化け物が2体湧いて出てきた。
「ギュゥゥゥゥ!」
両手を振り回し、睨み付けてくる。
「何だ、増えたか。……成程、3対3で丁度いい。ぶっ殺してやる。士亜、イフット、行くぞ! エクステンション!」
「あぁ! ブレード展開!」
「はい! いくわよ、クリムゾンノヴァ!」
須賀谷達は各々武器や召喚術を展開すると、青白い化け物達と相対した。
「街中だからフルパワーは出来ないけど……やってやるわ! クリムゾンノヴァ、焼いちゃって!」
「グォォォォォァァァッ!」
化け物は3m台のクリムゾンノヴァよりは小さいが、こちらの人間3人よりは大きい。
3体まとめて化け物に、ファイアーブレスが掛かる。
「ギィィ!」
だが化け物は炎を突っ切ると、一体が須賀谷にまず襲い掛かってきた。
「ざけんな!!《エンチャント・ナックル!》」」
生身の右腕に魔力を込め、ぶち抜くイメージで相手の腹に叩き込む。
「ギャウウウウ!」
拳は貫かないで止まるが相手の皮膚は固くはなく、怯むものの生き物の感じがした。
「……そういやこいつドブに居たんだった! 汚ぇ!」
須賀谷は少し、後悔する。
だがその瞬間化け物は角で突き刺そうと、頭突きを仕掛けてきた。
「調子に乗るな!」
須賀谷はそんな事などお構いなしに、突き出された頭にタマチルツルギを突き立てる。
「ブギャアアアアア」
悲鳴を上げるが、大したことは無い。
「……ちょっと不気味なミノタウロスといったところだ。倒せるぞ!」
「あん?」
「何?」
声をあげて順やイフットの方を見ると、既に叩き伏せた怪物の残骸がある。
自分が結構かかった敵をこうもあっさり片付けるとは。
「……パイルを使ってしまった。ここまで汚く散るとはな」
順はいやな顔をしながらも、そう言ってきた。
「弱かったですけど……これ、何なんですかね?」
イフットが首をかしげる。
「俺に言われてもわからんさ。二人こそ何か知らないのか? 俺よりは物知りだろ」
「ぬー。分かってたら聞かないよ」
イフットはむっとする。
「私も……特に心当たりは無いな」
順は少し顎に手を当てて考えたが、そう返事をしてきた。
「……じゃあ、これからどうする?」
3人でとりあえず、話をする。
「……サンプルを持ち帰るには遠いしな。放置でいいだろう」
順がそう告げ、装着を解除しようとした時。
「ガガガガ……」
「何っ!?」
また声と共に、道の側溝から10体の化け物が再度現れた。
「……どうしよう、士亜」
イフットが心配そうな顔をしてくる。
「どうするって……やるしかないだろ」
「だけど、この敵を倒してもまたどんどん増えられたら、こっちは負けるよ?」
「……そりゃ事実だな。私としては、長期戦は勘弁願いたい」
イフットの疑問に対し、横から順が割り込んだ。
「……だがよ、逃げるにしても後ろにもいつの間にか10体近く増えたんだが?」
その二人に対し須賀谷は、そう諭してやる。
会話をしている間にも、また、増えたのだ。
「……一点突破して逃走、それがいいようだな。リミット解除で一気にぶっ潰すからその後をついてくるがいい!」
順がそう告げた直後ーー。
目の前のうち5体の化け物が、ぐしゃぐしゃに吹き飛んだ。




