↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒野でおどれ 〜錆びた戦車と、旧文明の少女〜  作者: 京屋しゃべつ
錆びた戦車と、旧文明の少女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/36

プロローグ

本日は5話更新しています(1/5)。

 主砲の引き金を引いた。何も起きなかった。

 もう一度。照準ハンドルの赤い引き金を、指の関節が白くなるほど奥まで押し込む。かちり、とも鳴らない。画面の隅に目をやると、さっきまで灯っていた主砲の表示が、跡形もなく消えていた。最初に斜路の壁へ叩きつけられたとき、計器がちかちか瞬いていた。あれだ。よりによって、今。

「嘘だろ……頼むから、動いて。動いてよ!」

 計器を拳で叩いても、父さんの戦車は黙ったままだ。たった一発残った砲弾が、砲身の奥で眠っている。

 画面の真ん中で、崩れ狼がこちらを向いた。身体の半分が溶け崩れたような巨体が、低く唸りながら斜路の砂利に爪を立てる。左の脇腹では、突き立ったままの細長いものが、息をするたびに揺れていた。あいつが見ているのは、僕だ。主砲を向けておいて撃てもしない、この場でいちばん弱くて、いちばん目障りなもの。巨体が、ぐっと沈んだ。跳ぶ。まっすぐ、ここへ来る。

 視界の端、車体の斜め後ろで、砂利が鳴った。あの人だ。僕の上着を羽織った、ついさっきまで名前も知らなかった、きれいな女の人。短すぎる袖から手首をのぞかせて、こちらへ飛び出そうとしている。今のあの人なら、たぶん間に合う。崩れ狼の横から飛び込んで、蹴り飛ばしてくれる。そうすれば、僕は逃げられる。

 そう考えた途端、身体の芯がすっと冷えた。まぶたの裏で、青い炎が弾ける。遠ざかっていく大きな背中。焼けた石畳の上で、震えていることしかできなかった小さな手。あの夜も、僕は助けてもらっただけだった。

 また、待つのか。

 崩れ狼が、地面を蹴った。

「来るな! そこで見てて。こいつは僕がやる!」


 ――話は、七年前のあの夜にさかのぼる。

お読みいただきありがとうございます。

続きが気になると思っていただけたら、ブックマークや、下の☆☆☆☆☆からの評価をいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。