・車の窓が開かなくなった話 / インターロック
・車の窓が開かなくなった話/インターロック
2018年夏
私が今の派遣先で働き出して初めての夏だった。
例年通り暑かった。アパートから派遣先の会社までは20キロ離れていて、通勤には4,50分かかる。1年でどれだけの時間を無駄にしているかと考えてみるとなかなかもったいない気もするが、車の中では音楽を聴くことができるのでそこまで苦ではなかったりする。
訳あってその夏は、通勤中窓を頻繁に開け閉めしていた。ある日仕事を終えて、車に乗り込んで窓を順番に開けていた(パワーウィンドウです)時だった。
運転席側後ろの窓を開けたとき「ガタッ」と音がした。まあ、古い車なのでガタガタ言うことがあるのは仕方ないか、とスイッチを押しながら後ろを振り向いてみると、窓が開いていなかった(下がっていなかった)。「ウィーン」というモーターの音はしている。
(……)
押し続けるとモーター音がしなくなった。機構的な下限まで下げきってしまったのだろう。とはいっても窓は少しも下がっていない。
(……壊れた)
私は当時、電験三種の初受験を控えていて、あまり余裕がなかったたので、正直面倒なことになってしまったと思った。
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まとめるとこうだ。
・スイッチを「下げる」方に入れても窓は下がらない
・スイッチを押すしている間、モーター音は聞こえる
・「下げる」方にスイッチ入れた後、窓を白刃取りのように両手挟んで押し込むと窓は下がった。
・窓を押し込んだ状態で「上げる」方向にスイッチを入れると、窓は上がり、閉め切ることはできた。窓が上がったというよりは下から押し上げられた感じだった。
とりあえず閉めることができるなら問題ないかと考え、その日は帰ることにした。だが帰り道、段差を乗り越える度にガタガタとそのドアから音がした。
ここから判るのは、おそらく「窓の底辺」と「上げ下げをする機構」をつなげる箇所が外れてしまって、外れた部品がガタガタ音を立てているということだ。ネットで検索してみると窓の底辺はレールのような溝にはめてネジで固定してあるそうだった。それが外れたのだろう。
それなのに窓が閉まるというのがよく判らなかった。外れてはいるものの、当たってはいるということなのだろうか。本来、「辺」で押されていた部分が「点」で押されているのではないかと素人ながら考えた。
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ただ実際、ガタガタ音がすることに目をつむればそこまで問題があるというわけではなかったというのと、当時忙しかったということがあって(言い訳です)、放置することにした。車を大切にしているとはとても言えない。
車検に通らなかったら直そうと思っていたのだが、普通に通ってしまった。窓がきちんと下がること、といった項目はないようだ。
そして今になって、なんとなく見てみることにした。
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問題の箇所ははっきりしている。運転席側後ろのドアの内部だ。内部を確認するためには内張りをはがさなければならない。
先駆者の方々の整備ブログ等を参考にさせて頂いた。まずネジを外しドアハンドル、ドアノブ等を外す。そうしたらあとは内張の角に力を込めて、パキパキと剥がしていく。不思議なもので固定されていた。(クリップというものらしい)押せばはまるし、引けば抜ける。便利だ。
※ 判りにくくて申し訳ないですが、右上が内張りに固定されたスイッチ、下の2枚がドア内部のレギュレーターです。
配線がスイッチ(内張に固定されている)につながっているので、カプラーを外さなければならなかった。内張剥がしの先端でカプラーの爪を押し込んで外す。後は知恵の輪のように内張りを回転させながら外した。
防水シートをめくって内部の、窓を上げ下げする部品(レギュレーターと呼ぶらしい)を見てみる。見てみたものの、どういう動きをしているのかよく判らなかったので、エンジンを掛けて運転席側の窓開閉スイッチで動かしてみることにした。が、スイッチを入れても動かない。モーター音も聞こえなかった。
何回か試してみても動かない。
今外したものの中で、電気的なものは内張に固定されたスイッチにつながるカプラーだけ。そう考えるとカプラーを外したことが原因としか考えられない。内張からスイッチだけを外し、カプラーにつなげ直すと動くようになった。
(何故こんな回路になっているんだろうか)
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※ ここから素人の推測です。
「インターロック回路」にしてあったのだと思う。
内張を剥がした状態だと、レギュレーターが露出し、その状態で動かすと手を挟んで怪我をするおそれがある。そうならないために内張を剥がした状態では回路が切れて、モーターが動かないようになっていた。……のだと思う。
①内張に固定してあるカプラーがきちんとはまっている
②カプラーがはまっているということは内張がついている
③内張がついているなら露出していないのでレギュレーターを動かしても安全
こんな風な考え方なのだと思う。
インターロック回路には「フールプルーフ(foolproof)」とか「フェイルセーフ(fail safe)」という考え方があるが、今回は「フールプルーフ」の方になるのだと思う。「危険なことをそもそもできないように」設計してある、のだと思う。
内張を外すとレギュレーターが動かなくなるというのは、電子レンジが蓋を閉めないと動かないとか、プレス機はカバーを閉めないと動かない、といったのと同じなのだと思う。
以前ブレーキ周りが壊れて、ブレーキランプが点きっぱなしになったことがあったけれど、これは「フェイルセーフ」の考え方と関係あるのかもしれない。
なにか機械が壊れた際、暴走して手がつけられなくなるのではなく、壊れたら動かなったり、人間に対して安全をもたらす方向で(変な日本語で申し訳ない)設計するというものだそうだ。
壊れた際、ブレーキランプが点かなくなるよりは、点きっぱなしになった方が周りへの注意喚起にもなるのでよいということなのかもしれない。でも、関係ないかもしれない。
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ではまた内張をつけないと動かせないのかというと、必ずしもそうではなくて……、実際にやってみる方はいないとは思うのですが、自分のせいで怪我をする方が出ては嫌なのでどうすればいいのかは書かないことにします。すいません。(上には書いているのですが)
インターロックが安全のためのもの、と理解した上で勝手に解除したのであれば、それで怪我をしたり死んだとしても文句は言えないのかもしれない。
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それで実際どうなっていたかというとレギュレーターと窓ガラスの底辺が外れていた。本来、レギュレーター側の「凹」の形をした40センチほどの長さ金具に、一回り小さいやはり「凹」の形をしたゴムをはめ、そこにさらに窓の底辺をはめ込んで固定していたようだ。
本当にゴムで挟んでいただけで、ボルトナットやネジ類は使われていなかった。あの夏、私は窓を上げたり下げたりしまくったせいで外れてしまったのだろう。
思うに本来きっちり上まで窓を上げれば、溝にしっかりとはまるようになっていたのだと思う。私はいつも窓を上まで閉め切らずに、少しだけ開けて風を通しておくようにしていた。それもよくなかったのだと思う。普通に毎日家に帰ったら窓を上まできっちり閉める人なら、こんな壊れ方はしないのだろう。
金具に窓をはめるのはかなり大変だった。本当はこういう箇所に使ってはいけないのかもしれないが、シリコンスプレーを吹きかけて、それでどうにかはめた。それでも底辺の全てを完全に入れることはできなかった。
でもまあガタガタすることはなくなったし、窓も開けることができるようになったのでよしとしする。
自分で思っていた以上に段差を乗り上げたときにガタガタ音がするというのはストレスになっていたようだ。今すごく静かに感じる。もっと早く直すべきだった。
車にも申し訳なく思う。
【終】
今回の更新の電気に関係のある話はこれで終わりです。あとは車とか派遣とかについて書こうと思います。ここまで読んでくださりありがとうございました。




