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電験三種と過ごした日々  作者: 37,5or9
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・ある部族の風習

 昔読んだ本にこんなことが書かれていた。


 ある部族の風習について

 自分で獲った動物の肉は自分では食べてはいけないという決まり。それは近親相姦と同じ理由で禁忌とされているとのことだった。


 それ以上詳しく説明はされていなかったが、なんとなく納得できた。自分一人で獲物を狩り、自分一人でその肉を食べる。閉じた自分一人の世界でどんどん、自分だけの血が濃くなっていく。


**


2023.01.01


 夕方、年賀状が集合ポストに届いていた。知人から届いたのは1枚だけ。裏面には夫婦と子供の写真が印刷されていて、「子供の世話で終わった1年だった」と書かれていた。

 以前に、人が幸せな様子を見るのは嫌いではないと書いたけれどあれは半分嘘だったのかもしれない。いや、嘘でした。ごめんなさい。


 私は彼に年賀状を出していなかった。彼から送られてくるだろうとは思っていたし、であるなら当然元旦に届くように出しておくべきだとも思っていた。それなのに準備しなかった。できなかったのではなくて、しなかった。何と書いて送ればいいのか判らなかったからだ。


 年賀状の裏面を見て、なんとも言えない気持ちになる。人が幸せなのはいいことだし、お子さんが健康というのは間違いなく喜ばしいことだ。でも幸せを見せつけられるのは、やはり辛く感じてしまう自分がいるのも事実だ。

 送り主は私がこんなに精神的ダメージを受けるとは想定していないだろう。悪気があるはずもないのだ。

 

 コンビニまで出かけ、63円の年賀状を買う。なにかイラストが印刷してあるものにして、「あけましておめでとうございます」的なことだけ書いて送ろうかと思ったが、それでは面白くないので裏面が真っ白のものを買って、絵を描いて送った。例年そうしていた。絵を描くと物の構造の勉強になって理解が深まる気がする。大人気漫画のキャラクターだ。年に1度しか書かないけれど、毎年続けていると少しずつ上手くなっているように感じる。続けることは大切だ。文言は「皆様のご健康を祈っています」と書いた。これは本当の気持ちだ。やはり健康が一番だと思う。


**


 Eさんとの話。


「結婚されてるんですか?」 

 指輪はされていなかったが、製造業だから結婚していても仕事場では指輪をしない人もいる。


『してないですね。したいんですか?』


「いや、どうなんですかね。でも派遣ですし」 できるとも思っていない。


『派遣でもいいっていう人を探すか……転職するか……』


**


 私には悩みを話せる人がいなかった。というよりは私の悩みに興味を持ってくれる人がいなかった。

 友達(友達ではないかもしれない)は自分のことばかり話すが、私の話す内容には興味がないようだった。そんなことばかりだから、私は話す気もなくなった。そもそも彼らに話しても何にもならない、と判ってしまったからだ。

 友達とは思われていないのかも、と思う。私はゴミ箱か、あるいは……もっと汚い言葉が浮かんだが、それは書きたくなかったので書かないことにする。


 派遣会社の人も家族も結局のところ、私に関心がないのだろう。でもまあそんなもんだろうとも思う。


**


 古い中国の思想家の話に(どなたか忘れてしまったのだが)、こんなものがあった。

 ざっくりいうと、「全ての人から好かれている」よりも、「嫌いな人からは嫌われ、好きな人からは好かれている」という状況がベストだという話だった。


 それを読んでなるほど、と思った。だが、それを実践するのは私には不可能だ。


**


 いろいろな創作物に助けられて、今まで生きてこられたけれど創作者の人は別に私のことは好きではないだろうな、と思う。結構悲しいような気もする。でもまあそんなこと考えても仕方がない。


**


 神話にウケモチノカミとツクヨミノミコトの話がある。

 ウケモチノカミは口から食べ物を吐き出す神様で、その食べ物でツクヨミノミコトをもてなそうとしたのだが、無礼とされ殺されてしまう。


 ウケモチノカミも悪気があったわけではないのだと思う。よかれと思ってしたことが、相手にはそうはとられなかったということだ。


 よくあることだ。


**


 他人がお互いを理解しようとするの困難なことだと思う。それでも理解しようとするのすごいことだと思う。

 もしもあなたに理解しようとしてくれる人がいるのなら大切にしてほしいと思う。


■■


 もしかしたら、その部族は私のような人間でも孤立しないように禁忌を定めたのかもしれない。


【終】


ソース曖昧で申し訳ないです。すいません。

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