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 私の暮らす世界では、この世界にある不思議な力が存在しないということをミカちゃんから聞き及んでいたらしく、マレフィン様の家系で受け継がれている術というものを少し見せていただくことになった。



 ちょっと楽しみ♪

 異世界の醍醐味じゃないコレ!


 

 外の花を摘んでこいと言われたので庭…らしき場所から野生化しているバラを何本かハサミで切り、キッチンに余っているジャガイモの中から芽が出て種芋になりかけのものを厳選し、こちらも半分に切る。


 マレフィン様が断面に手をかざしながら私の耳では拾えない不思議な音の単語を紡げば、ほのかに光る断面同士から細い…まるでシナプスのような線維がうねりながら絡み合ってゆく。



 暫くすると直立していたバラの茎はしなやかに横たわり、ジャガイモから生えた蔓のようになった。


 

 「あとはこの種芋を庭に埋めれば来年は赤い絨毯を敷き詰めたような庭になるぞ?」



 「・・・・・・っ」



 やっていることは接ぎ木の要素が大きいけれど…術そのものは遺伝子組換えや培養技術と考えて間違いない、と思う。この分野に詳しくないから自信はないけど。



 まぁ、植物の品種改良というだけならいい。


 味にバリエーションが出たり、香りやダシも変わってくれば地域の名産にもなったりするんだろう。


 ただし、マレフィン様を指す代名詞がまずいような気がする。


 

 「もしかして…断罪の魔女様と呼ばれる所以って…」



 掛け合わせてはいけないものを掛け合わせた人がご先祖様に居たか、マレフィン様自身がやってしまっているのか。


 昔の映画にもあったな、そんなの。今でも倫理的にどうなんだと議論は繰り返されているけれど…私の中では完全にアウトだ。



 「私の世界では…ヒトにハエやクモ…虫を掛け合わせたらどうなるだろう、と考えた人が沢山居ます…」


 

 訝しげに片眉を上げるマレフィン様。

 術も使えない庶民が同じようなことが出来るわけないだろうと言いたげだ。



 「マレフィン様のような術はないけど道具と知恵を用いて研究を重ねた”技術”と呼ばれるものがあります」

 


 「虫とは成功したのか?」


 「いえ、考えただけなのでまだ実行はされていない、はずです」



 腕を組み唸るマレフィン様。



 「ふむ、何度か失敗はするだろうが、虫でも出来るだろうな」



 !!!!!


 

 「ヨハンがいい例だろう?あやつは時を止めたルイーゼの目覚めを待つためだけに、他の生命力の強い種族と混ぜてああなったぞ」



 全身から血の気が引いて…カップを握る指先の感覚がない。


 ヨハンはああいう…元々もふもふっとしたファンタジーっぽい生き物だと思っていたのに人体実験を行った結果…?

 

 

 「…っ!何てことを!!!!」




 「望んだのはあやつだ、…何をそんなに嫌悪することがある?流石に永い時を生きる貴族とは言えど、若さを保たなければ待つこともできず我らのように死が近い」



 私はその領域には踏み込んではいけないと思っている術だけれど、マレフィン様からすれば臓器移植くらいの感覚なんだろうか…


 


 「だからといって誰にでもするわけじゃない禁術だ」



 ふつうはバラと芋をくっつけただけでそこまで気づかんからな、モモは優秀なんだな、とマレフィン様が笑う。


 

 「断罪と永く呼ばれるのは、罪人を裁く時にも毒の生成や体内へと毒の種付けができるからだろうな」



 実際何度か処刑したことがあるってこと?と聞けばニヤっとされ、じゃあ逆の生成も?と問えば…



 「もちろん生かすための薬の生成と体内への薬の種付けもできるんだが、こちらは知られるとバカが寄って湧いて蔓延して国が傾くだろうから秘匿しておいてくれ」

 


 力を正しく使おうとするのは、どの世界でも難しいっていうことなんだろうか。


 …だって人の数だけ正しさがある。

 どうすり合わせていくのかが問題なのかもしれない。



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