そうして勇者は魔王の息子になった
た い と る 回 収
衝撃的だった。
意味が理解できず一瞬世界が止まった。
「……ほぼ初対面ですよ?」
「そうだね、でも余は君の事をずぅっと前から知っていたし、君がここで暮らそうって言うなら迎え入れるつもりでいたんだ」
それに、うちの子達も君の事気になっているみたいだしね、それに了解も取ってる。
そう続けると、おいで〜、なんて彼は呑気に誰かを呼んだ。
すると、いつからそこに居たのか壁際からわらわらと出てくる少女たち。歳の頃は一番下は五つ、上は十を少し過ぎる程か、好奇心に溢れた三人分の眼差しが一気にこちらを射抜いた。
「みんなが人にここまで興味持つのは珍しいんだよ、ね?」
「ちょっと待って下さい、理解が……、それにこの子達は」
多分娘さんたちだというのは分かるが、顔立ちこそ微かに面影を感じるものの髪の色などは余りにてんでバラバラ。故に問うた。
「予想通り余の娘たちであってるよ。みんな可愛いでしょ?さあ、ご挨拶して!」
そう魔王様が声をかけると、その子達はわらわらとやってきて代わる代わる挨拶をしたかと思うと、自分の父へと向きかえり問いかけた。
「父上、この人がお兄ちゃん?」
「そうなるかもね」
「やったぁ!優しそうだしいっぱい遊んでくれそうだもん、父上の言う通りこの人ならいいなぁ」
ちらちらとこちらを期待に満ちた眼差しで見つめる子達。
それに混ざる魔王様。
「……無理にじゃなくて良いよ?」
「いや、本当に良いんですか?」
「ダメなら最初から言わないよ」
そう言われてしなえば、続く言葉は承諾以外には思いつかなかった。
「えっと……よろしくお願いします」
なぜか迷うという頭は存在しなかった。
自分でも驚くぐらいの即決だった。
人の子になるなんて、人生でも一大決心であろうに、ほぼ初対面身も関わらず決めてしまえてのは何か窺い知れぬところで何かあったのかもしれない。
「父上、お兄ちゃんができた?」
「そうだね、でも少し待っててね?あ、ディートリヒ君!」
どこからともなく紙を取り出すとひょいとそれを机の上に置く。
「あと、ここに名前書いて貰えるかな」
「この紙は?」
「後で役所に送るやつ」
「あ、そこは法律的な物に従っていくスタイルなんですね」
「法的効力大事だよ」
本当に前から考えていたらしくあらかじめ半分以上が埋められた紙に、思いの外躊躇もなくスルスルと滑るペンで書くべきところを書いてしまうと、受け取った魔王様は二枚組らしいうちの一枚を剥がし、軽く息を吹き掛け、窓の外へと飛ばした。
真っ青な空を舞う白い紙は、籠の中から自由を得た鳥のようで、よく空に映える。
「ようこそ、ディートリヒ君。今日から君は、余の息子だ」
「不束者ですが、よろしくお願いします、父さん」
自分でも驚くほど簡単に受け入れてしまった存在に、俺は生まれて初めて父という言葉を使った。
その言葉は予想以上に温かく、胸が締め付けられるようだった。
やっと回収。
ちょびっと閑話を挟んで2章へ行こうと思います。
……あれ?ヒロインは……?




