023:謝りに
今回少し短めです☆
図書室から戻った零は、かおるにありがとうを言って部屋に入る。伊織の一件があって以来、かおるはいつも、零が部屋の電気を付け、中に誰もいない事を確認してから自室に戻るようになっていた。
とはいえ、授業が始まってからは皆各教科毎に出される課題に追われて部屋に篭る事が多く、寮の中でも他の生徒に会う事が少なくなった。そんな中いつも飄々としているのは駿とかおるで、彼らがいかに優秀なのかが分かる。
・・・久遠君に、ちゃんとお礼、言えてないな・・・。
部屋に戻った零はかばんから課題のプリントと借りてきた本を取り出して溜息を付く。
・・・結局、迷惑かけただけで終わっちゃったし・・・。
抱きとめてくれた腕の熱さを思い出すと思わず顔が火照る。夕食の時に声をかけようかとも思ったが、駿の性格を考えると皆がいる前で声をかけるのはあまり得策ではない気がして携帯を手に取り、溜息をつく。隣の部屋にいるのに電話をかけるのもどうかと思うとダイヤルもできず、零は意を決して直接お礼を言いに駿の部屋を訪ねることにした。
駿の部屋の前に立つと、俄かに心臓が暴れだし、これ以上なく緊張している自分に気付く。何度かノックしようと手を上げては逡巡を繰り返していると、不意に中からドアが開いてドアの間近に立っていた零の額にぶつかった。
「痛ッ、」
「・・・ッ?!おま、そんなとこで何やって・・・大丈夫か?・・・悪かった・・・」
「あ、ごめ、大丈夫っ」
・・あぁもう何やってんの私・・・これじゃまた久遠君を怒らせちゃうよ・・・。
「あ、あのっ、さっきは、ありがとう・・・」
「何が、」
・・・あぁやっぱり不機嫌だ・・・。
「あの、図書室、連れて行ってくれて・・・あの、はしごの・・・」
無表情な駿の怒りを含んだような口調に零はへこむ。お礼を言いに来て怒らせていては何をしているのか分からない。
「お前なぁ・・・」
呆れたような声に、顔を上げられずにいると不意に駿の手が伸び、零の額に触れる。
「腫れて来た・・・ちょっとこっちこい、」
「え・・・?!」
駿に腕をひかれ、駿の部屋に入った零は駿に掴まれた腕が熱くなるのを感じて、心臓が跳ねる。
無駄なものが一切なく、整然と片付けられている部屋。本棚にはびっしりと本が並び、彼の優秀さを物語る。
「・・・悪かったな。大丈夫か?」
部屋の奥から救急箱を持って来ると駿は屈んで零の額に冷却材を貼る。
「冷た・・・
「・・・しばらく、安静にしとけ。」
言って駿は救急箱を片付け、部屋を出て行こうとする。
「あ、久遠君、」
慌てて呼び止めると、また不機嫌そうな顔で振り向く。
「すぐに戻るから、大人しくそこで待ってろ、」
・・・やっぱ、怒ってる・・よね?
零は駿の部屋の少し固いソファーに座り、所在無くあたりを見回す。飾り気のない整頓された部屋は彼らしく、微かに甘いネロリの香りがする。
しばらく待っていると、足音が近づき、駿が部屋に戻ってきた。
「・・・」
「あ、ありがとう・・・」
無言で差し出されたのはペットボトルのミネラルウォーターで、零は受け取って礼を言う。
「・・・大丈夫か、」
駿はソファーには座らず、デスクの椅子に座って足を組む。
「だ、大丈夫だよ、このくらい。・・・迷惑かけて、ごめんなさい・・・」
・・なんか、何でこんなに緊張するんだろう。何しゃべっていいのかわかんないよ・・・。
駿と二人っきりになったのはこれが初めてで、零は何を話していいのか分からずにいた。何を言っても怒らせてしまいそうで怖かった。
「お前さ、
零が所在無く俯いていると、不意に駿が口を開く。
「お前みたいなバカは誰かが守らないと何もできないんだから、もっとみんなに頼ればいいんだ、」
「え・・・?」
駿の口から漏れた意外な言葉に零は思わず駿を見つめる。
「だから、一人で解決しようとせずに、やりたい事でもしたい事でも何でも言えばいい、って言ってるんだ、」
・・・あれ、久遠君、ちょっと顔が、赤い・・?
あまりにも唐突に優しい言葉をかけられた零はぼんやりと、そんな事を思う。
「・・・バカ、口、開いてるぞ。」
苦笑に近い笑顔。それでも零は駿が笑ってくれる事がうれしくて笑顔になった。
いいねぇ、いいねぇ(笑)硬派な人が笑ってくれるってもう超テンションあがるし。しかも貴方にだけ優しいっていうのがまた最高に好き。硬派最高。私の周囲には一人しか硬派がおりませんが・・・。硬派って貴重なのか・・・?




