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いつも君がいた  作者: 遙香
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016:静と動

今回は少し短めです☆



 「どうしたッ?!」

バンッ、と勢い奥ドアが開いて部屋に駿が飛び込み、少し遅れてかおるも駆けつける。

暗い部屋の中、ソファーに押し倒されている零の姿を見た二人は一瞬フリーズし、次の瞬間諸悪の根源でもある伊織の体を零から引き離す。

「伊織ッ!貴様何やってやがるッ!」

駿が伊織の胸倉を掴んで壁に叩きつける。

「零ちゃん、大丈夫っ?!」

かおるはソファーの上で茫然としている零を助け起こす。かおると駿の姿を見とめた零は極度の緊張から解放され、体の力が抜けてかおるの腕の中に倒れ込んだ。

「・・・んだよ、そろいもそろって血相変えやがって・・・離せよ、」

伊織はいまにも殴りかかりそうな駿の手を振り払い、かおるの腕の中でまだ少し青ざめている零に目をやる。

「ま、続きは今度、ゆっくりとな。」

「伊織ッ!いい加減にしろよ、」

駿に怒鳴られて伊織は小さく肩をすくめ、そのまま何事もなかったように部屋を出ていく。その背にかおるが声をかける。

「伊織、僕は君を許さないよ。零ちゃんに手を出す奴は誰であっても許さない、」

かおるの静かな怒り。零のいる場所からかおるの表情は見えなかったが、肩に触れる掌の熱さがかおるの怒りを零に伝える。

「えらくそのお人形がお気に入りなんだな、かおる?だがそいつは人形じゃなくて人間だ。お前が気に入ってても、そいつがお前を気に入らなきゃその思いは成立しないんだよ。そいつが誰を選ぶのか、見ものだと思わないか?」

戸口で立ち止まった伊織は挑発的な笑みを浮かべてかおるにそう言うと、零の上に視線を落とす。

「今はそのお優しいナイト様がいいかもしれねーが、絶対に俺を選ばせてやるからな。」

毒を含んだ艶のある瞳。大人の色気、とでも評するべきか、そんな目で見すえられると一瞬心臓が跳ねる。

 伊織が去ると、かおるは零の肩を抱いていた手を離し、ごめんね、と小さく謝った。

「伊織のヤツ、」

駿が怒りを抑えきれずに壁を殴りつける。

「零ちゃん、大丈夫だった?・・・何も、されてない、よね?」

不安に満ちた瞳でかおるが零の顔を覗き込む。部屋に入った瞬間の、伊織に組み敷かれた零の姿が脳裏をよぎり、かおるは思わず強く目を閉じた。

「だ・・大丈夫・・・。」

背筋がぞくぞくするような、伊織の瞳が目に焼き付いて離れない。強く掴まれた腕にまだ手の感触が残り、ソファーに抑えつけられた時に肩に食い込んだ指先の後が少し痛い。零は思わず両手で自分の体を抱きしめた。

「・・・怖かった・・・」

思わずつぶやくと、再び駿が壁を殴りつけた。

「お前が隙だらけだからこんな事になるんだ。人騒がせも程々にしろッ!」

駿の権幕に零は思わず身をすくめ、傍らに佇んでいたかおるの腕に手を伸ばす。

「・・・駿、零ちゃんを心配する気持ちはわかるけど、女の子に怒鳴っちゃダメだよ、」

かおるは安心させるように、伸ばされた零の手にそっと自分の手を重ねて微笑みかける。

「・・・チッ」

駿は小さく舌打ちし、何も答えずに部屋を出て行き、隣の部屋のドアが荒々しく閉じられる音が響くと、かおるは小さくため息をついた。

「ごめんね、零ちゃん。・・・伊織ならこのくらいの事やりかねない、って気付くべきだったのに、」

「ごめんね、怖い思いしたよね?・・・ちゃんと守ってあげられなくてごめん、」

 ・・・なぜ、かおる君がこんなにも謝るんだろう。なぜ、かおる君がこんなにも辛そうなんだろう。悪いのは、隙のあった私と、酷い事をしたあの人のはずなのに、

 今にも泣き出しそうなほど悲痛なかおるの声に、零は思う。

「こんな事があると、夜も、不安だよね?僕、出来る限り気を付けて、零ちゃんの部屋に誰も近づかないように見ているから、安心して?」

 かおるの微笑みは穏やかで、その微笑みを見ると少し安心する。零が小さく微笑むと、かおるも微笑み、おやすみ、と部屋を出て行った。

みんなに守られるシチュエーションって憧れるわぁ・・・。私ももちょっとか弱く生まれたかった(笑)

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