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魔法が使えないと虐げられた令嬢は、余命わずかな辺境伯の契約妻になりました  作者: 青空一夏


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第21話 これからも一緒に

たくさんの小説の中からお読みくださりありがとうございます!

 クリスティアーナへの愛を自覚した翌朝、ジェラードは夜明けとともに目を覚ました。

 昨夜はほとんど眠れなかったが、気持ちはもう決まっている。身支度を整えると、すぐに執事を呼び寄せた。

「これから別邸へ行く。馬車を用意してくれ」

「かしこまりました。奥様にお知らせいたしましょうか?」

「いや、知らせなくていい。俺から直接話したいことがあるんだ」

 別邸までの一時間、ジェラードは何度もクリスティアーナに伝える言葉を考えた。いっとき治まっていた魔力暴走が再発したことも、これからのことも、すべて正直に話すつもりだった。

 ただ、彼女がどう答えるのかを考えると、さすがに落ち着かない。


 やがて別邸に到着すると、出迎えた使用人からクリスティアーナが庭園にいると聞き、そのまま足を向けた。

 木陰のベンチに腰掛けたクリスティアーナは、マリーと楽しそうに話していた。

「クリスティアーナ」

「……ジェラード様?」

 驚いて立ち上がろうとする彼女を、ジェラードは慌てて制した。

「そのままでいい。体調はどうだ?」

「はい。おかげさまで、最近は気分が悪くなることも少なくなりました。でも、突然どうなさったのですか?」

「君に会いたくなったんだ。それに、話しておきたいことがあってな」

 思いがけない返事に、クリスティアーナは目を丸くした。

 ジェラードが隣に腰を下ろすと、マリーは気を利かせてその場を離れていった。

「実は、君が別邸へ移ってから、また俺の魔力暴走が起き始めるようになった」

「えっ! ジェラード様、お身体は大丈夫なのですか?」

 クリスティアーナは驚き、心配そうにジェラードの顔を見つめた。

「ああ、今は落ち着いている。ただ、君と一緒にいた間は症状が治まっていたことを考えると、君の力が関係していると思う。だが、もしそうだとしても、魔力暴走が完全になくなる保証はない。だからこそ、君にはきちんと話しておきたかったんだ」

 クリスティアーナは驚いた様子だったが、やがてジェラードの手を両手で包み込んだ。

「もし本当にわたしの力がお役に立てるのなら、とても嬉しいです。ジェラード様がもう苦しまなくて済むかもしれないんですね」

「ありがとう。だが、俺が今日ここへ来たのは、それを告げるためだけじゃないんだ」

 ジェラードは彼女の手を握り返し、まっすぐにその瞳を見つめた。

「クリスティアーナ、俺は君と離れて、ようやく自分の気持ちに気づいた。君がいなくなってから、屋敷が妙に寂しくてな。食事をしていても、仕事をしていても、気がつけば君のことを考えている。今さらこんなことを言うのは勝手だと思うが、俺はもう君と離れて暮らしたくないんだ」

「ジェラード様……?」

「俺は君を愛している。君に魔力暴走を抑える力があってもなくても、その気持ちは変わらない。俺たちの契約結婚を、本当の結婚にしたいんだ。もちろん、君と子どもの安全を守るために、できる限りのことをする。それでも危険がなくなるとは言い切れない。だから、君の気持ちを聞かせてほしい。これからも俺の妻として、そばにいてくれないか?」

 クリスティアーナは信じられないというようにジェラードを見つめていた。

 子どもを産んだら、この人のもとを去らなければならない。そう覚悟していたのに、今、ジェラードはこれからも一緒にいたいと言ってくれている。

 しかも、愛していると。

 その言葉が胸に染み込むにつれ、クリスティアーナの瞳に涙があふれた。

「……本当に、よろしいのですか? わたし、これからもジェラード様のおそばにいていいのですか?」

「ああ。むしろ、俺の方からお願いしたいんだ」

「わたしも……ずっとジェラード様のおそばにいたかったんです。でも、契約があるから、そんなことを望んではいけないと思っていました。お別れする日が来るのはわかっていたのに、いつの間にかジェラード様を好きになってしまって……」

 クリスティアーナは涙を拭いながら、懸命に言葉を続けた。

「魔力暴走など怖くないです。わたしも、あなたを愛しています。これからも妻として、おそばにいさせてください」

 その返事を聞いた瞬間、ジェラードはたまらずクリスティアーナを抱き寄せた。

「ありがとう、クリスティアーナ」

 ジェラードは彼女を抱きしめたまま、深く頷いた。

 これまで自分の将来について考えることなど、ほとんどなかった。だが、今は生まれてくる子どもの顔を見たいし、その成長をクリスティアーナと一緒に見守っていきたい。

「クリスティアーナ。俺は今、少しでも長く生きたいと思っている。君と子どもと、できるだけ長く一緒にいたいんだ」

「わたしもです。子どもが生まれて、大きくなって……いつかジェラード様がおじいさまになるまで、一緒にいたいです」

 思いがけない言葉に、ジェラードは笑った。

「俺がおじいさんになるまでか。それなら、ずいぶん長生きしなければならないな。……愛しているよ、クリスティアーナ」

「わたしも愛しています、ジェラード様」

「子どもが生まれたら、三人でいろいろな場所へ出かけよう。君にも見せたいものがたくさんあるんだ」

「はい。楽しみです」

 クリスティアーナは微笑み、彼の肩にそっと頭を預けた。

 ジェラードはそんな妻を抱き寄せながら、生まれてくる子どもとの暮らしを思い描いた。

 かつては自分の未来など考えたこともなかった。それなのに今は、何十年も先まで彼女と一緒にいたいと思っている。

 いつか二人が年を取り、今日のことを懐かしく語り合う日が来たら、どんなに幸せだろう。ジェラードはクリスティアーナの手を握り、穏やかに微笑んだ。

 これから先、どれほど長い年月が流れても、この手は離さない。


 クリスティアーナもまた、重ねられた手をそっと握り返した。

 もう別れの日を恐れる必要はない。これからは愛する夫と共に、生まれてくる子どもの成長を見守りながら、同じ未来を歩んでいけるのだ。

 クリスティアーナはジェラードを見上げ、幸せそうに微笑んだ。

 この人と出会えて、本当によかった。

 心からそう思ったのだった。


 完


 


❀┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈❀

 完結までお読みくださりありがとうございます!

「クリスティアーナが幸せになって良かった」、少しでも「面白かった」と思っていただけたら、☆をつけていただけると励みになります(#^.^#)

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