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スキルが全ての異世界で俺は何度でも蘇る  作者: P.P.
一章 召喚された勇者の記憶

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008 全ては彼の想うが儘に


 ダンジョンの出口へと向かう道中、他パーティーの無残な死体があった。


「まだ暖かい・・・・」


 死体に触れてみると、まだ体温が感じられた。


 死体の状況的に、近くにパーティーを全滅させた魔物がいるだろう。


 傷口を見ると噛みつかれたような跡や、引っ掻かれた跡、それに魔物の尿や糞なども掛けられている。見るも無残な姿に・・・・とはこういう時に使う言葉なのだろう。


「うっ・・・・」

「あたいこういうの無理っす・・・・」

「杏子、目を閉じて」


 星川たちは死体を見ないよう、手で顔を塞ぐ。まあ、無理もない。この光景は流石に俺も見てられない。先ほど失明で心に大きなダメージを負ったのに、更に追い打ちをかけるようにコレだ。


 やはり魔物は残虐で凶暴だ。


「先へ急ごう、近くに魔物がいるかもしれないから警戒は怠らないように」


 星川たちにそう告げながら、俺は先程よりも早めに足を進める。


 見間違いでなければ、パーティーを全滅させたのはガルムで間違いないだろう。

 

 歯形の跡やあの引っ掻き傷も先程俺がやられたときと同じような傷跡だった。


 それに、冒険者パーティーがガルム一匹に全滅されたとは考えにくい。じゃあ、何故あのパーティーは全滅していたのか。


 答えは簡単、質より量。この言葉が全てを表している。


 先程俺が戦っていたガルムは例外だが、下級の魔物であるガルムは基本群れで行動する。


 一匹でもあんなに苦戦していた俺が、なん十匹もいるガルム相手に勝てるのか。答えはノーだ。


 正直、今鉢合わせでもしたら俺は間違いなく星川たちを置いて逃げるだろう。


 周りの命よりも自分の命を優先する、それは当たり前のことだ。ましてや出会って四日程度の付き合いの奴らを、命張ってまで助けるお人好しなどいない。


 だがまあ・・・・勿論例外()もいるが。


「ガルルルルッ!!!」


 ダンジョンの出口まで残り五十メートル。


 残りあと僅かな所で、後ろから狂犬の唸り声が聞こえてくる。


 俺は咄嗟に振り向き盾を構える。


「おいおい冗談だろッ・・・・!?」


 俺の目の前には、先程戦ったガルムよりも四メートルぐらい大きくなったガルムと、デカいガルムを中心に群がっている通常サイズのガルムがいた。


「これはヤバいっす! 犬間っち逃げましょうっす!!」

「杏子だけでもいいから逃げて」

「い、嫌だよっ! 皆で逃げようよ!」


 絶体絶命、俺は直ぐに最善案を思案する。


 この数のガルム相手に無傷生還は無理だ。


 じゃあ星川や姫川、小林などを見捨てて逃げる? 先程まで見捨てると考えていた俺だが、その選択をするなんて生粋のお人好し日本人の俺からしたら無理なことだ。


「皆、五十メートル走だ。体育でやっただろ。俺が合図を出すから一斉に走ってくれ」

「え、でも走ってっる途中に絶対追いつかれますっす!」

「皆には言ってなかったけど俺、魔法が使えるんだ」

「え! そうなんっすか!?」


 勿論嘘。本当は魔法なんて使えないし、星川たちを逃がすための嘘だ。姫川や小林は驚いた顔で俺の方を見てくる。こいつら将来詐欺とかに会いそうだな。


 幸い、ガルム達は俺たちを警戒して様子を伺っている。このうちにさっさと星川たちを出口まで逃がしたいが・・・・・


 まあ、星川は俺の意図に察しているようだ。顔を伏せて今にも泣きそうな顔をしている。ほんとにまあ、勘の良い高校生だ。


「とりあえず、俺も魔法使ったら走るから。絶対後ろ振り返らず全力疾走しろよ?」

「はいっす! 犬間っちがそこまで言うなら信じるっす!」

「う、うん、私も庄司くんを信じるっ!」


 おお、初日と比べて俺の評価も随分上がったみたいだ。嬉しいことだね。


「星川、まあなんだ。姫川と小林、ついでに後藤も頼んだ!」

「・・・・・・」


 星川は泣きそうな顔をしながら、何も言わずに出口の方へと体を向ける。


「よし、じゃあ出口の方を向け」


 俺が指示を出すと、姫川と小林が出口の方に体を向ける。

 

 まあ女子高生だし、八秒ぐらいで出口には着くんじゃないか? それぐらいの時間稼ぎなら出来るだろ。


「オンユアマーク、セット・・・・」


 覚悟を決めよう。


 いいじゃねぇか、俺はどうせ失明とかしちゃってるんだし。


 俺が死んでも泣いてくれる奴がいる。


 それだけで・・・・・十分じゃねぇか。


「ゴーッ・・・・・・!!!!」


 俺が合図を出した瞬間、星川たちが一斉に走り出す。


 そして、俺はガルムの群れの方向へと走り出す。


「・・・・・魔法なんてある訳ねぇだろうが」


 視線を向けるとそこには五メートル級のガルム。どうやら親玉ガルムというらしい。因みに、魔物に出会うとその魔物の右上に名前が表示される。


 ほんとにまあ、ゲームみたいな世界だ。


 ガルムの群れは逃げていった星川たちを襲いに行く訳もなく、群れの長に向かって突撃してくる俺を襲おうとする。


 だが甘い。俺は地面の砂を手に取り、ガルムの目ん玉に向かって砂を思い切り撒く。


「こちとら孤立したお前らの仲間に失明させられてんだッ!! 少しは失明の痛み味わってみろッ!!!」


 何故だか腹から笑いが込み上げてくる。


 死ぬかもしれないのにテンションも最高潮。


 あぁ、最高の気分だ。


 群れのガルムを卑怯な手を使って潜り抜け、遂に俺は親玉ガルムの首元へと肉薄する。


「首元空いてるぞッ!!!!」


 メイスを首に向かってフルスイングする。


 図体がデカくなった事で俊敏性も落ち、狙う的もデカくなった。


 だが、力も強大だった。


「ガルルるッ!!!」

「グフっ・・・・!!」


 ガルムの前蹴りを喰らい、フルスイングしたメイスは空を切って俺は地面に押し付けられる。


 強烈な衝撃が腹部と背中を襲う。バキ、ボキと肋骨が折れる音がした。


 だが、俺の意識はダンジョンの出口の方へと向いている。


 どうやら、星川たちはちゃんとダンジョンから出れたみたいだ。ダンジョンの入り口前で姫川と小林がわぁわぁ騒いでいる。星川も必死になって姫川たちを止めているみたいだ。


「がッ・・・・!!」


 痛みと共に、俺の意識は目の前へと向き直る。


 親玉ガルムの押し付ける力が増し、俺は死を覚悟する。


「あぁ、異世界生活も・・・・悪くなかったな・・・・・」


 視線を向けると、親玉ガルムが俺の顔を食おうと口を大きく開けていた。


 食われる、そう思った刹那。


 閃光が走る。


 そして、瞬きをした次の瞬間。


 親玉ガルムと群れのガルムの首が吹っ飛んでいた。


 誰かの足音が聞こえる。


「あはは、もうボロボロじゃん」


 そう言いながら近づいてくる救世主。


 だが、救世主は俺に向かって、最高の罵倒を口にする。


「弱い君を助けるのも選ばれし者の役目。だから来たよ、最強の勇者がね」


 返り血を浴びた勇者。

 

 だが次の瞬間、その返り血は灰になって散っていく。


 あぁ、やっと本性を現したんだな・・・・・


「後藤っ・・・・!!」

「君が這いつくばっている姿を見ると、実に滑稽だね」


 後藤の気味の悪い、嫌悪を抱く笑顔。


「クソっ・・・・!!」


 俺は体に力を入れて起きようとするが、後藤に鳩尾を蹴飛ばされ息が詰まる。


「君にはまだ生きてもらわないとね、【()()()()()()()】」


 後藤が何かを告げた瞬間、俺の体の痛みが消えた。だが、同時に意識が朦朧とし出す。


「ご、後藤っ・・・・・!!」

「あれ? 弱い癖して随分と粘り強いね。まぁ、僕の女をたぶらかすぐらいだしね」


 後藤が何を言っているのかも分からなくなってきた。だが、これだけは分かる。


 後藤は爽やかで優しくてイケメンな高校生などではない。


 後藤は、アイツは・・・・・ヒトの皮を被った化け物だ。


「もう、何もかも忘れてしまえばいい、【()()()()()()()】」


 憎しみの感情を積もらせる俺とは裏腹に、後藤が()()()()()()瞬間、俺の意識はそこでプツンと途切れた。



ハッキリ言います。後藤はクズです!! ですが超絶イケメンです。


モチベに繋がるのでブクマと反応してもらえると嬉しいです。

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