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三週間後

白淵に降りた日から三週間後、ガルーンは倒れた。

朝の仕事小屋に行くと、床に座り込んでいた。立てなかったわけではない——立とうとして、できなかったらしい。レナが支えようとすると、「うるさい、離せ」と言った。言いながら、掴んでいた手は離さなかった。

「医者を呼びます」

「呼ぶな」

「呼びます」

「呼ぶなと言っている」

「聞こえてません」

レナは医者を呼んだ。医者は「できることはない」という顔をしながら薬を置いていった。薬師はもう少し正直に「これ以上できることはない」と言った。レナは二人に向かって「もっとなんかあるでしょ」と食ってかかって、アシュに「落ち着いてください」と後ろから両腕を掴まれた。

それから三週間、ガルーンは寝ていた。

起き上がれるようになったのは、ある朝突然のことだった。レナが薬を持っていくと、爺さんは台所の前に立って、鍋を火にかけていた。

「何やってるんですか」

「スープを作っている。分からないのか」

「自分で作れるなら昨日も一昨日も——」

「昨日は作れなかった。今日は作れる。それだけだ」

爺さんはそのまま、薄いスープを作った。

「薄い」とレナは言った。

「そうだな」とガルーンは言った。そして少し間を置いてから、「もう少し深く降りる準備を始めろ」と言った。

レナはスープを一口飲んで、アシュを見た。アシュが静かに頷いた。

「……行きます」

「そうしろ」

ノアが窓枠から飛び降りて、二人の足元に来た。

「問題がある」

全員がノアを見た。

「今回の潜降は、前回と条件が違う。前回は浮遊層から中層、廃墟都市の入口まで。今回は廃墟都市を抜けて、深層に入る。深層には——前回とは比べ物にならない危険がある」

「分かってる」

「分かっていない。お前はまだ、深層に何があるかを見ていない。見てから言え」

レナは少し黙った。

「……何があるの」

「行けば分かる。ただ——今回は二人では心許ない場面が出るかもしれない」

「つまり?」

ノアが尾を立てた。

「もう一人、連れて行ったほうがいい」

レナは頷いた。それから窓の外の霧を見た。

最近、気になっていることがあった。

霧の「波」が——前より変わってきている。以前は「呼んでいる」感覚だった。でも最近は、その奥に何か別のものがある気がする。呼んでいる、でもそれだけではない。もっと切迫した、もっと深いところにある何か。うまく言葉にできないが——傷んでいる何かが、届かない声で、伝えようとしているような。

気のせいかもしれない、とレナは思った。

気のせいであってほしいとも、少し思った。


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