仕事小屋の夜
帰還した夜、ガルーンが夕飯を作った。
といっても大したものではない。干し肉と根菜を煮込んだだけのシチューで、味付けは塩だけだ。でも鍋の底から湯気が上がって、仕事小屋の中が温かくなった。
「狭い」とレナは言った。
「文句があるなら外で食え」とガルーンは言った。
文句はなかった。
四人と一匹が、小さな仕事小屋に押し込まれている。ガルーンが机の前の椅子に座って、レナが床に直接腰を下ろして、アシュが棚の前のスツールに、セイラが窓枠に腰かけている。ノアはガルーンの足元で丸まっていた。
「ノアが一番いい場所にいる」とレナは言った。
「文句があるなら外で食え」とノアが言った。
「あんたも言うの」
アシュがシチューを一口飲んで、少し間を置いた。
「美味しいですね」
「当たり前だ」とガルーンは言った。でも少し、椀を持つ手の力が緩んだ気がした。
セイラが窓枠から降りて、床に座り直した。椀を両手で包むように持って、ゆっくりと飲む。表情はいつも通り余裕がないが、肩の位置が、降りる前より少し下がっていた。
しばらく、誰も喋らなかった。
シチューを飲む音だけが、小屋の中にあった。
それが全然、悪くなかった。
「セイラさん」とアシュが言った。
「なんですか」
「窓枠に座るのが好きなんですか」
「高いところが落ち着くんです。南の島は崖が多かったので」
「高いところが落ち着く、というのが——私には少し分かりません。空から落ちてきた経験があるので」
「それはそうですね」
「レナはどうですか」
「崖の端には慣れてる。でも高いのが好きかは、よく分からない。ずっとそこにいたから」
「ガルーンさんは?」とセイラが聞いた。
ガルーンが少し間を置いた。
「深いところのほうが落ち着く。昔は」
「今は?」
「今は、ここが一番だ」
小屋の中が、また少し静かになった。
ノアが欠伸をした。口を大きく開けて、牙を見せて、それからまた丸まった。
「ノア」とレナが言った。
「なんだ」
「腹減ってる?」
「少し」
「干し魚あげる」
「要らない」
「嘘つくな」
「……少しだけなら」
レナが棚から干し魚を一本取って、ノアの前に置いた。ノアがそれをじっと見て、それからゆっくりと食べ始めた。上品ぶった食べ方だったが、早かった。
「早い」とセイラが言った。
「見るな」とノアが言った。
「見てません」
「見ていた」
アシュが右腕の指を一本立てた。
「私も見ていました」
「全員で見るな」
レナが笑った。アシュが表情を少し緩めた。セイラが口の端を上げた。
ガルーンだけが笑わなかったが——椀を持ったまま、視線をノアからレナへ、レナからアシュへ、アシュからセイラへと、ゆっくりと動かした。
誰も気づかなかった。
いや——ノアだけが気づいて、何も言わなかった。
シチューがなくなった。
「おかわりある?」とレナが聞いた。
「ない」とガルーンが言った。
「嘘つかないで」
「鍋を見ろ」
レナが鍋の蓋を開けた。底に少しだけ残っていた。
「ある」
「お前の目は節穴か。あれで四人と一匹分は足りない」
「私は少しでいい」とアシュが言った。
「私も」とセイラが言った。
「ノアは?」とレナが聞いた。
「要らない」とノアが言った。
「また嘘つく」
「……少しだけなら」
結局、底をきれいに空にした。
食べ終わって、誰かが「そろそろ寝ます」と言う前の、短い時間があった。霧灯の灯りが小屋の中を橙色に染めている。外では白淵が静かに息をしている。
「明日から修練、再開します」とレナが言った。
「そうしろ」とガルーンが言った。
「セイラは?」
「私は縄の整備をします。だいぶ傷んだので」
「アシュは?」
「筒のメモの解読を続けます。まだ半分も読めていないので」
「ノアは?」
「寝る」
「いいな」
「お前も寝ろ。修練は明日からだ、今日ではない」
レナは少し考えてから、横になった。床の上だったが、構わなかった。目を閉じたら、思ったより早く眠くなった。
白淵が呼んでいる。
でも今夜は、それがただの子守唄みたいに聞こえた。




