29頁目 説明と説教
前回のあらすじ。
とんでもなく大きなティラノサウルス(しかも火を吐く!)と戦った。
次回の投稿は明後日の予定です。
前書き用のネタがない。ですので本編へどうぞ↓
周囲に轟音が鳴り響く。私の繰り出した刺突によるものだ。
拘束され身動きの取れない覇王竜の心臓を、分厚い皮膚を抵抗なくノトスが貫いた。
力尽き、骸となった巨体は下半身が地面に埋まった状態のまま、ゆっくりと前に倒れ込む。
そして、私もかつての暴君だった死骸の隣に膝を付き、そのまま前のめりで倒れた。
その一連の流れを、離れた場所から見守っていた三人は言葉を失っていた。
「お、終わりましたよ」
倒れたままの私が声を掛けたことで、我に返ったカトラさんが一気に詰め寄ってくる。
「何かもう聞きたいことだらけでまとまらんけど……大丈夫か?」
「大丈夫です。まだ調整不足で、制御が上手くいかない魔法を無理矢理行使しての反動です。しばらく動かさないでもらえると……うぇっぷ……助かります」
「お、おぉ、分かった」
今回は前回の戦闘を教訓に、攻撃モーション時に回転を加えなかったのだが、それにも関わらずまた世界がグルグル回るめまいのような症状が出ていた。これはあれか、三半規管がどうこうではなく、もっと別の要因か。それといつも通りに身体の節々が痛い。
私が疑問に思ったことを呟くと、聞こえていたのかカトラさんが答えてくれた。
「それ魔法酔いじゃね?」
「な……おぇ……何です、それ?」
「いきなり許容量を超える魔法を一気に使うと、体内の魔力の均衡が崩れて気持ち悪くなるんだよ。あんなに沢山使ってたのに、というか一〇年も冒険者やってて知らなかったのか?」
知らなかった。私は基本単独で行動しているので、パーティと行動したとしても短い期間。仲間が魔法酔いになる現場に遭遇するなんてこと、記憶にある限りなかった。
それもそのはず、魔法酔いを起こすのは、基本的に魔法制御が未熟な新米冒険者がなるもので、銅ランクに上がる頃には自身の魔力と放出のバランスが理解出来るようになるものらしい。自然、普通の冒険者が初歩的なミス、魔法酔いになることはほとんどないのだとか。ほとんどとしたのは、慣れない大規模魔法を使用した時などに起こりうることである為、ベテラン冒険者でもないこともないとのことだが、最後の方のはカトラさんによるフォローであろう。
そして許容量、つまり体内の保有魔力と放出魔力のバランス、それが崩れたこともなかった。これまで雷魔法をバンバン使っていても、こんな症状に陥ったことがなかった理由だが、これはなんとなく想像出来る。つまり、私の元々の保有魔力が多すぎるせいでこれまで許容量を突破することがなく、魔法酔いになったことがなかったということだ。エルフの血を引くハーフエルフだから魔力が多いのは自覚してはいたが、そこまでとは思いもしなかった。
これまでなかった魔法酔いを今回、二日続けて起こした理由は簡単だ。ノトスを使った時に起こった。ということは、ノトスの風は私の魔力を吸い取って発動していることになる。そりゃ、大規模雷魔法と大規模風魔法を同時行使したのだ。酔って当たり前なのだ。
というかノトスよ。私の魔力を食べていたのか。気付かなかった私も私だが、契約……で良いのだろうか。あの時、私を認めた時に教えてくれても良かったのではないだろうか。
そんな思いを込めた視線を、うつぶせになりながら右手の剣へと向けると、風が静かに私の頬を撫でた。一応、謝罪をしてくれているみたいだ。とはいえ、ニュアンス的に「ごめんて」って感じなので、本当に反省しているかは疑わしい。
まぁ長い付き合いになるのだ。聞けば魔法酔いは慣れることが出来、放出可能な量が増えることで克服出来るのだとか。
水道の蛇口を少し捻ってチョロチョロと出すのが普段だとして、それを一気に開放してドバッと出す感覚だろうか。ただ、あまりダダ漏れにしても今度は魔力枯渇に繋がる。
エルフ族は保有する魔力が多い。それによって様々な生命維持に関わることを魔力が補っているので、私達の種族はほとんど食事や睡眠を必要とせず、また老廃物などの排出も体内を循環する魔力の自浄作用によって分解、洗浄、再構成されることでそれもほとんどない。精神の成長が著しく遅くなるというデメリットがあるが、それを帳消しにする長い寿命を手に入れた。
つまり、エルフ族のように魔力で生きる種族が、大規模魔法の連発によって魔力の多くを放出し続けることで魔力枯渇となると、生命維持が出来なくなる可能性がある。
まず魔力がなくなることで、何らかの手段で生きる為のエネルギーを補給せねばならなくなる訳で、本来は食事がその役割を担っている。つまり人間族に体質が近くなるということか。いや、それよりも虚弱になるだろう。肉体や抗体なども魔力が補っているのだ。そもそも体質が人間族に近くなるということは、寿命も同じように縮む可能性がある。そうなると、一二〇歳の私は、年齢の負荷に肉体が耐えられず死ぬということにならないか。
「それは嫌ですね」
「そうなるんじゃろうか? というかエルフ族は長命だと聞いてはおったが、お前さん想像以上に歳いっていたんじゃな」
「誰が熟女ですか」
「言っとらんじゃろ」
そういったことを防ぐ為のリミッターであり許容量なのだが、それを慣れで外す、もしくは緩めてしまっても良いのだろうか。まぁエルフ族の保有する魔力は非常に多く、私の保有量は更に多い。早々なくなることはないが、考えなしに使い続けていきなり死ぬなんて事態は避けたいので、魔力運用も覚えていかなければならない。
とはいえ、今後もノトスと共に行動するならば、放出量を増やしておかないと、戦う度にぶっ倒れていては話にならない。負荷を掛けつつ身に付けていこうと思う。先は長い。
カトラさん達と軽く会話を交わしながらジッとしていたら、気分が良くなってきたので仰向けになり、ゆっくりと上体を起こす。
「もう大丈夫か?」
「はい、あ、いえ、もう少し休みたいです」
「分かった。じゃあそのままで、色々聞きたいことがあるんだが……」
先程も言いかけたことを、改めて切り出してくる。答えられる範囲でなら、ちゃんと答えよう。とはいえ、結構色々見られてしまったので話せる範囲が広がってしまったが……ちゃんと口止めも込みで説明しようと思う。
「あの地面に沈むアレなんだ?」
「土魔法と水魔法と振動魔法の合わせ技です。というか無詠唱でしたけど、苦手じゃなかったんですか?」
「あぁ苦手だよ。アレしか使えないんだからよ」
「えぇと、衝撃波、でしたっけ?」
「あぁ」
「あれだけ、ですか?」
「そうだよ」
「何故です?」
「あれしか練習してなかったからな。近接戦闘でちまちま魔法撃つ暇なんてないからよ。一気に接近してドカンとぶっ放す。単純だが強力だ。これがおんれの武器だ」
「なるほど……」
「で、さっきのアレはなんだ?」
「液状化現象です」
「え、液状化……?」
意味が分からないのか、後ろに立つニャギーヤさんとエスピルネさんの顔を見るも、二人共首を横に振って知らないと答えた。
「液状化というのは、簡単に言えば、水分を含んだ砂地のような地面を揺らすことで、液体状になることです」
これでも相当噛み砕いている。
地質学に明るくない私だが、それは彼女達も同じだろう。まだ私は前世から引き継いだ知識のおかげで何となくこうだと説明することが出来るが、彼女達からするとまさに魔法の呪文のようだろう。いや、呪文ならば理解出来る世界だったか。
「この乾いた大地を耕す、えぇと土粒砂でしたか。まさにエスピルネさんの魔法の通りに岩石を砕いて砂のように細かい粒にし、その地下に大量の水、ニャギーヤさんの魔法で流し込むことで必要な舞台は整います。ここにカトラさんが振動魔法で刺激を与えることで、地下に含まれた水分が上に昇り、それに伴って砂は沈みます。そしてこの時に、地上の重い物も一緒に地中へと引きずり込まれます」
「覇王竜か」
「えぇそうです。あの巨体です。相当の重量がありますから、一気に沈みましたね」
本来の液状化現象では考えられない、まるで底なし沼にはまった時のような沈み方をしていたが、これは魔法によって生み出された現象なので、そういうことにしておこうと思う。それに、難しいことを言っても既に一杯一杯の彼女達に通じるか怪しいところだ。また、まだ説明しないといけないこともある。ここで容量オーバーしては意味がない。
「まぁいいや。次だ。フレンシア、お前魔法を三つ使えるのか?」
この世界の個人で使える魔法の種類、もしくは属性と表現されることもあるが、一つないし二つと決まっている。これはこの世界が誕生した時からの原則のようなものだ。
「使えませんよ」
「だけどよぉ、お前、雷魔法と回復魔法が使えるって言ってたろ? だけどアレは明らかに風魔法だ」
「そうですね。ですが、私は風魔法が使えません」
「いや、それじゃあ、アレは……」
「ふむ、つまりその剣が原因ということじゃな?」
エスピルネさんがいつも通りのジト目で、私の右手にあるノトスを見つめている。
「メェー……えぇと、普通の剣ではないんですか?」
ニャギーヤさんが恐る恐る聞いてくる。その表情は顔の半分以上を隠す前髪のせいで窺い知ることは出来ないが、声色、雰囲気から恐らく心配しているのだろうか。
「心配ですか?」
「メェーっ? い、いえ、あ、その、はい。フレンシアさん程の冒険者が魔法酔いする程の魔法です。それに、命に関わる可能性があると、ご自分で仰っていたじゃないですか」
「それについては大丈夫よ。魔力は成長に伴って増えていくのでしょう?」
魔法酔いについて聞いた時に一緒に教えてもらったことだが、保有魔力は身体や精神の成長と共に増加するようだ。増加量には種族や個人によって差があるが、増えることには変わりはない。
「まどろっこしいのは嫌いだから、率直に聞く。その剣は何だ?」
「魔剣です」
「魔……剣?」
「魔剣……じゃと?」
「メェー、魔剣だったんですか」
三者三様の反応を示すが、やはり最も食い付いてきたのはドワーフ族の剣士、エスピルネさんであった。
「これは、翡翠鳥の羽、それも最も質の良い部分を素材にした魔剣です」
「それは、お前さんが自分で?」
「質問を返すようで申し訳ないですが、どっちの意味でしょうか?」
「あぁすまなかった。自分で打ったのかということじゃ」
「違います。ちゃんとした鍛冶師に依頼をして作ってもらいました」
「何と! それ程の技術のある鍛冶師がいるのか! してどこに?」
これは答えて良いものだろうか。ここで下手に教えてしまえば、ガローカさんに迷惑が掛かる。一応、どこの鍛冶師とは言ってはいないが、私が翡翠鳥の死骸を持ち込んだことは一部の関係者や住民なら知っていることだ。少し聞き込みをすれば、自ずと王都の工房であると答えが出る。そこから私が出入りしている工房を調べれば、簡単に行き着いてしまうだろう。
「答えられません」
「何故じゃ?」
だからといって、答える訳にはいかない。
ガローカさんには迷惑を掛けられないし、私個人にも何らかの影響が及ぶだろう。
「魔剣を持つ冒険者ということを広められたくはありません。よって、このことを独自で調べるのも止めていただきたいです」
彼女が聞き込みによって得た情報を無闇に流布するとは思わないが、聞かれた側も口が硬いとは限らない。そこからあらぬ噂が立ち、あっという間に広まってしまうだろう。
その私の意図が伝わったのだろうか。悔しそうな表情を浮かべて納得していない雰囲気を出しているが、一応の理解を示したのか落ち着きを取り戻していた。
「すまない。興奮してしまった」
「いえ、興味があることに夢中になってしまうのは仕方がないです」
「それじゃあ」
「それとこれとは別です」
「ぬぐぅ」
私は甘くない。
「せめて、触ってみても良いかの?」
それは私では答えられない。私がちらりと視線を送ると、不機嫌を表すような風が顔に当たる。私は微笑みながら左手でそっと撫で、鞘に収める。
「それも出来ない相談ですね」
「何故じゃ?」
「魔剣全てがそうかは分からないですが、少なくともこの子は生きています。命があるのかは不明ですが、時折、この子から送られてくる風には明確な意思が感じ取れます。そして、この子は自身が認めた者にしか触れさせません」
「生きて……おる?」
「生きた武器だと?」
「ほぇ……」
黙って私達の会話を聞いていた二人からも、呟きが漏れたのが聞こえる。
「はい。この子は、たとえ制作者であっても認めず、敵意を持って傷付けます。ですので、この子を打った鍛冶師も傷だらけでした」
「何と!」
「剣が攻撃してくるのか!」
「ほぇ……」
そしてもう一つ。これは先程知ったばかりの事実なのだが……
「仮に持っても傷付かないとして、次の問題は使用者の魔力を食い尽くすという点があります」
「なん……じゃと……?」
「おいおい、それじゃあ、お前大丈夫なのか?」
「ほぇ……」
ニャギーヤさん? 大丈夫ですか? さっきからそれしか言っていませんが、ちゃんと聞いて理解しているのか不安になる反応の仕方である。
「私は大丈夫です。エルフ族は元々多くの魔力を持っていますし、普通に剣として扱う分は問題ないです。それに、消費が激しいという点を除けばこれ程にも優秀な剣はそうないはずです」
そう答えた時に、嬉しそうにそよ風がふわりと私を包むが、後で無断に私の魔力を食べていたことを話し合う必要があるので、そう自慢気にしていられるのも今のうちよ。
「質問は以上ですか?」
三人は顔を見合わせ、カトラさんとニャギーヤさんは首を横に振った。エスピルネさんだけまだ何かあるらしい。
「最後じゃ、その魔剣の名前は?」
銘ではなく名前を聞いてきたか。
そもそも銘とは物によって様々だが、武具の場合は主に制作者の名前が刻まれる。だが、私は既に制作者の名前は答えられないと言った。そこで質問は終わったと思っていたが……
「ありません」
「嘘じゃな」
「……答えられません」
「理由を聞いても?」
「うーん……そもそも何故名前があると思うのですか?」
「魔剣なのじゃろ? 魔剣には制作者の意図とは関係なしに、自然と名前が刻まれるというのを昔話で聞いたことがある」
もしかしてノトスも自分で名前を自らの身に記したのでしょうか。それも、恐らく転生者である私にしか読めない名前を。一体何を思い、考えてその名前にしたのか。いつかこの子と話が出来るようになる日が来る時があるとしたら、聞いてみても良いかもしれませんね。
「そうですね、名前はあります。ですが明かすことは出来ません。親しい人にも教えるつもりもありません。ですが……もし、その名前を言う日が来るとしたら、誰かが受け継ぐ時ですかね。私の命も永遠ではありませんし……」
そこまで喋ったところで、ノトスから不満の意思を感じた。ちらりと左腰に視線をやると、見た目だけでは全く分からないが、何だか雰囲気が悪い感じになっている。
自惚れでなければ、この子はずっと一緒にいたいということだろうか。
「もしかして死んでも一緒にいるつもり?」
期待を込めて話し掛けると、それに応えるように私の周囲を優しく、しかし外界と拒絶するような強風が巻き上がる。
「うわっ」
「ぬっ」
「きゃっ」
一瞬の出来事であったが、まるで私を守るように円を描いていた。
「だそうです。この子は私が責任を持ってお墓まで持っていくことにします」
嬉しさを隠そうとするも、どうにも笑みが零れてしまう。
一連の様子を見ていた三人は、またも驚きを表していた。
「会……話、したのか?」
「どうなんでしょう? 相手は話せませんし……ただ、こうして風で意思を伝えてくれますので、対話は出来ますよ」
「し、信じられんのじゃ……」
「えぇと、何がでしょうか?」
「メェ! すごいです!」
「あーうん、ありがとうございます?」
話をしていたら身体が調子を取り戻したので立ち上がり、何度か節々の様子を確かめるように曲げ伸ばし運動を行う。そして、呆然としたエスピルネさんを置いて、下半身のほとんどが埋まったまま死んでしまった覇王竜の剥ぎ取りを開始する。
「多くは持ち帰れませんので、牙や爪、後、状態の良さそうな鱗とか……骨、特に頭蓋骨は防具にも使えるので持って帰りたいですが、荷物になりますので置いていきましょう」
「そうだな。おんれはフレンシアと剥ぎ取りをするから、ニャギーはそこでぼんやりしてるスピルを頼んだ」
「分かりました!」
それから剥ぎ取りを行った私達は、今回の依頼の拠点となっているランテ村へ向けて歩いていた。我を取り戻したエスピルネさんからは謝罪の言葉をもらったが、私こそ何も言えず申し訳ない旨を伝えた。
「とりあえず戻ったら村長に報告と……まぁ原因も排除したし……というかフレンシア、何か変な物も採取してたけど何だったんだ?」
「血液と、筋繊維、特に咽頭部や気管支に近い部分を中心とした体液、分泌液です」
「何でまた?」
「覇王竜が炎を吐く仕組みを探りたいと思いましてね」
「体温調節じゃないのか?」
「そうですね。ただ、炎を吐くというからには、火炎袋みたいな物があるのかと思いましたが、そういった類いの物は確認出来ませんでした。どういった方法で炎を生み出して、それを放出しているのか知りたくて……それで体液を集めてました」
鉄火竜のような仕組みなのか、覇王竜は覇王竜でまた違った仕組みがあるのか。同じ炎を吐くといっても、そのプロセスが変われば、また違った視点で生態を見る手助けになると思う。
先程の魔剣に関することは本人達の中で折り合いを付けたのか、話題に挙げようとはしてこなかった。しかし、今度は私の覇王竜解体ショーが行われ、またしても一同を困惑させることになってしまった。
せっかく目の前にサンプルがあるのにただ置いていくのは忍びない。ということで、その場で出来るだけ解体、検分作業を行っていた。元々のサイズがサイズなので上半身だけでもかなりの大きさになる。
内臓や眼球などの部位は、傷みが早いので泣く泣く廃棄。
ある程度の解体が終わったところで私は口から体内へと潜り込み、悪臭に鼻を摘まみながら食道などの器官を通って体液を採取したり、内部検分を行ったりしていた。とはいえ、中は真っ暗なので手探りで、それと一応呼吸が出来るように奥まで入らないよう注意しながら行った。
出て来た私を見たニャギーヤさんは卒倒してしまった。血液を含む様々な体液で身体中ベタベタだったので、色々と駄目だったのだろう。自分でも大胆なことをしているとは思うが、興味のあることなので止めるつもりはない。自重はするかもしれない。
その後は、回復したニャギーヤさんの水魔法で洗ってもらったが、その時もハプニングが起きた。というか原因はまたしても私なのだが、服を着たままでは中まで洗えないということで、女子しかいないのだからと全部脱いでしまったのだ。
顔を赤くしたカトラさんとエスピルネさんがすぐに顔を背けるが、チラチラと視線を送ってくるのを感じる。ニャギーヤさんは顔を真っ赤にしつつも、私のある部位を凝視している。ニャギーヤさんは身長高くてモデル体型なのだから誇っても良いと思う。
全身と服を洗ってもらった私は、強い日差しと乾燥した空気の下で、少しの時間天日干しし、また服を着た。
「はぁ、何かもう色々と考えるのが面倒になった。今日だけで色々とあり過ぎだ」
「本当にすみませんでした」
「普通はあんなことしないぞ」
「いえ、本当にもう仰る通りです」
「その後もだ。いきなり素っ裸になるとかお前なー」
「い、一応、皆さん女性ですし、他の人の目もありませんでしたので……」
「それで屋外でいきなり裸になるやつがいるかー!」
「すみませんすみません」
これらが原因で帰りの道中、説教を食らうハメになった。だが、実際に、怒っているはずの彼女の表情は緩みニヤニヤしていたので、散々困らせた私をいじって楽しんでいるのだろうと思われる。
しかし、説教の内容は至極真っ当なものなので、私は頭が上がらず平謝りを繰り返すしかない。
その様子を後ろから見ていた二人からも、時折笑い声が聞こえる為、雰囲気は悪くないのだが、私としてはそろそろ許してくれても良いのになーと思う。それを感じ取ったのか、カトラさん説教は益々激しさを増し、私は再び謝るのであった。
魔法酔い。覚えた。これは克服しなければならない案件だ。
本当に私の魔法は……強いのにその能力を十分に発揮出来ていない。
まだ成長する余地があると分かっただけ良しとするか。
フレンシアの手記より抜粋




