第20話 暗闇からの来訪 その2
暗闇から突如現れた男によって追いつめられてしまった瑞葉。彼女はただただ迫ってくる男に恐怖していた。――だが
「このままで…終われるかぁ…!!」
瑞葉が恐怖を押しのけて叫ぶと、辺りの水面がボコボコと沸騰したように泡を出した。
「ん…?なんだ?」
男が怪訝そうに様子を窺っていると
バシャァァァ!!
突如、辺りから2~3メートルほどの水柱が立ち、男に襲い掛かった。
「おわっ…!」
水柱は勢いよく男に衝突し、そのまま男を縛り付けた。男はもがくがビクともしない。
「どう…?これが私の魔術よ」
自分が優勢になったことで瑞葉の恐怖心は払しょくされた。彼女は立ち上がり、ライトを照らしながら男を観察する。
見た感じ30~40代くらいの男性のようだ。
「中年のおっさんがこんな夜中にレディを捕まえようって…超変態ね!それにさっきはよくもあんな怖い思いさせたじゃないの…倍返ししてやるんだから」
瑞葉は男を締め付ける水の力をより一層強める。すると、男はフッとにやけ
「魔女の嬢ちゃん…急に威勢が良くなったけど…そういうのは長続きしないからやめといた方がいいぜ~~」
「なっ…!むかつくじゃないの!」
瑞葉は男の忠告にムッとし、次なる攻撃を繰り出した。
バシャァァ…
男の向かい側の水田から水が噴き上がり、尻尾の長い竜の形になった。
「食らいなさい。超高圧噴射!」
瑞葉がそう叫ぶと、竜の口から凄まじい勢いで水が発射された。
ブオオオオオ!!
高圧水を喰らったらひとたまりもない…そう思っていたら、男はそれを待っていたのだ。
「光が一瞬途絶えたぜ」
「!?」
高圧水によってライトの光が一瞬遮断されたのだ。遮断されたことで生まれた暗闇に男は瞬時に逃げ込んだ。
「しまった…!」
瑞葉はようやくことを理解し、まんまと男に逃げられたことに焦りを見せた。
「ははは!嬢ちゃんの魔術なかなか強いじゃないの~。でもさ、この暗闇の中じゃ、俺の方が行動範囲が広いんだよね~」
どこから発しているか特定できないが、男の声が聴こえる。これではまたさっきと同じになってしまう。
「くそっ…!……な~~んて言うと思った?」
コロッと瑞葉の表情が一変。余裕の表情に変わった。すると
ゴオオォォ!!
突如、辺りに炎が走った。炎は瞬く間に草に燃え広がり、辺りを赤く照らした。
「月音!」
そこに、もう一人の魔女、月音が現れたのだ。
「随分と弱音のメールが来たからどうかと思って来たら、大丈夫そうじゃない」
「だって最初はほんとに怖かったんだもん!でも月音が来て助かったよ~」
瑞葉はそう言って月音に抱き着く。少し前まで恐怖に慄いていたのだから仕方がない。だが、月音としては、外に出るまでの強気な態度はどこに行ったのか腑に落ちない。…まぁ、長い付き合い、瑞葉が普段強気なわりに、怖がりだというのをよく知っている。
「へぇ~~。魔女狩りがいるんだぁー」
「…!」
呑気に抱きついていた瑞葉はその声にビクッとした。顔を向けると、ここに呼んでいない志乃まで来ていた。
瑞葉は月音の耳元でささやき
「ちょっと…!あいつまで連れてきてなんて言ってない!」
「彼女が勝手についてきた」
月音としては、そこらへん大して気にしていないのだ。瑞葉一人が変に対抗意識を持っているだけだ。
「おやおや、随分と賑やかになったねぇ~」
瑞葉はハッとする。男はまだどこかに潜んでいるのだ。炎で明るくはなったものの、まだ暗い部分は多い。暗闇を無くす光源としては不十分だ。
「私の推測だけど、魔女狩りは暗いところを自由に移動できるみたい」
瑞葉が二人に魔女狩りの能力を伝える。それを聞くと、志乃が前に出た。
「それなら、もっと明るくしようよ。昼間みたいに」
「昼間みたいに明るくするって…あんたにそれができるの?」
瑞葉は鼻で笑う。夜だというのにどうやって昼間みたいに明るくできるのか。そんなことできるわけないと思った。
すると、志乃は掌を出して、光の球を生成し出した。光の球は頭より少し大きいくらいになると、勢いよく上空へ飛び出した。
バァン!!
20mほど上がると、破裂音と共に、光の球は上空で飛散した。
「…!?うそ…。ほんとに昼間みたいになった…」
瑞葉は辺りを見回して呆然とした。まるで太陽が出ているかのように明るくなったのだ。
「これくらいなら暗いところもないんじゃないかなー」
志乃は周りを見て暗い部分がないことを確認する。彼女の言い方はまだまだ力を抑えているようだった。やはりただ者じゃない…。瑞葉も悔しいがそう思わざる負えなかった。
明るくなったら、しばらくしても男の声は聞こえなくなった。隠れる場所がなくなって逃げたのだろうと思い、三人は戻ることにした。――ただ、志乃はあまり快く思っていないようだ。
「なんで逃げちゃうかなー。せっかく懲らしめられると思ったのに」
志乃がそんなことを言ってきたが、瑞葉はもう怖いのはこりごりなので一分でも早く帰りたかった。




