第15話 今日から私メイドになります!①
今日は朝からレイと一緒に、白亜の城へ向かう馬車に揺られていた。
三日振りの城だ。
昨日、マリアンヌさんに街までついてきてもらって、通勤のほかに普段にも着れるようなドレスを買いに洋服店に行った。
私は一枚でよかったのだけど、マリアンヌさんとお店の人がノリノリで、着せ替え人形状態にさせられたのち、マリアンヌさんがどうしてもって言って、三枚も買って頂いてしまった。
きっと二週間分のお給料じゃ、全然足りないよね……。
今日の初出勤には、きれいな若草色の清楚な感じのドレスを選んだ。
長い袖部分がふんわりとオーガンジーで少し肌が透けて見える。たっぷりめの袖が気に入っていて着心地もとてもいい。
もちろん、胸元はあいていない首までしっかりあるものを選んだ。
私の前に座るレイをこっそり見る。
彼は朝が弱いのか、いつにもまして無口で、今も腕を組んで目を閉じている。
どうやら微睡んでいるようだ。
近衛騎士団の隊服に身を包む彼を、間近でちゃんと見るのは、今日が初めて。
詰襟に純白の軍服、襟元には階級をあらわすバッジ。胸元に騎士団長を表す勲章がついている。
めちゃくちゃカッコイイーーー!!
さらさらの銀髪に白い肌。スラリとした細身だけど広い肩幅の彼に、白い軍服がかっちりとして、すごく似合っている。
こうしてみると、レイって睫毛、長いんだ。
眉も細めで形もよい。私好みの眉の形してる。
なんか、いつまでも見てられるかも。
目を閉じているのをいいことに、彼の顔をじっくり観察してしまった。
彼が乙女ゲームの攻略対象キャラじゃなくて、よかったぁ~。しみじみ。
きっと攻略キャラだったら、攻略相手に選んでいた。かも知れない(笑)
そして、間違いなく課金もしちゃってたかも(汗)
なんて、わけわからないオタクめいたことを考えているうちに、私たちを乗せた馬車は城へと着いた。
いよいよ私の記念すべき初出勤の第一日目が始まる。
私は、城で掃除やお茶を運んだりする仕事をすることになった。つまり、メイドさん!!
レイからお仕事の話を聞かされたとき、あまりに嬉しくて
「ええっ!?メイドが出来るの!?ほんとに!?やったぁ~!!うふふ…」
と歓喜の声をあげてしまった。
言うまでもなく、彼からは、変な生き物を見るような目で、見られてしまったけど。
いや、だってメイドさんでしょ?
じつは、メイドさんの格好にすっごく憧れてたの。
ほんとはメイドカフェでバイトもしてみたかったのだけど、地味で人見知りの私には、無理無理って感じで。
ハードルが高すぎて、バイトに応募する勇気がなかった。
でも、その憧れのメイドになれるうえに、制服も黒のドレスに白いエプロン。
それだけで、テンションあがっちゃうじゃない。
支給された制服を手にしたときは、もうめちゃくちゃ嬉しくて。きっと顔が自然とニヤついていたんだと思う。
その場に一緒にいたレイにも「嬉しそうだな」なんて言われてしまった。
だって、仕方がない。ほんとに嬉しかったんだもん。
黒のドレスを着て、白いエプロンの腰のリボンを後ろでキュッと結ぶと、もう嬉しくて嬉しくて。
大きな鏡の前でくるっと回って、背中、前、そして横と、メイドの格好して自分の姿にテンションもMAXに喜んでしまった。
可愛いよ~、可愛いっ、可愛すぎる!このメイド服っ!!
眼鏡をかけれないのが、ちょっと残念。
この世界に来た時にかけていた眼鏡は落としちゃったから、今はもっていないけど、眼鏡&メイド服も見てみたかったな。
私は可愛いメイド服に着替えて、ドキドキしながら新しい職場にいた。
新しい仕事に就くときって、初めての環境での緊張と、新しいことへのわくわく感があって、なんかちょっと楽しい。
私の帰りは、レイの騎士の仕事が終わるのに合わせることになったので、私もそれまでは城で過ごすこととなる。
「ミツキ、お前はエリザと一緒に仕事をしてくれ」
そう言ったのは、使用人たちを取りまとめる執事長のタリアン・ドレイク・ベシエールさん。
スラリと細身の長身に、黒の執事服がピタリと似合ってる。ゆるくウェーブがかった黒い髪に、紫の瞳。細い銀縁の眼鏡を掛けて少し神経質そうに見えるけど、まだ二十代後半な感じで、彼もなかなかイケメンだ。
誰かに似ているような気もするけど……
で、私が色々と一緒に仕事をすることとなったエリザさん、というか、ちゃんのほうがしっくりくるかな。彼女は私より四つ下の十六歳。長い赤毛を三つ編みにして耳の横で輪っかにしてくくっている。
アーモンド色の瞳に化粧っ気があまりなく、まだ幼さが残っている。彼女の家には、エリザのほかにまだ幼い弟と妹、それからまだ赤ちゃんの弟がいて、彼女は四人兄弟の一番上だそうだ。
エリザもメイドとして城にきてからまだ三ヶ月ほどらしい。
「よろしくね!ミツキ」
朗らかな笑顔の似合うエリザが差し出した右手を、私は嬉しい気持ちいっぱいで握り返した。
「よろしくお願いします、エリザ!」
なんだか、良いお友達になれそう。




