10 走り出せ
家族に自分の気持ちを伝えた瞬間から、勇希の胸の中は、ずっと抑え込んでいた何かが解き放たれたように高鳴っていた。
勇希は部屋に戻り、ベッドに腰を下ろしたものの、じっとしていることができなかった。足先がピクピクと動き、指が何かを掴むように空を彷徨う。この高揚感は、どうしたらいいのか分からない。
その言葉を自分に言い聞かせるように呟き、勇希はジャケットを羽織ると家を飛び出した。
夜の道と公園へ
夜の街は、昼間とは全く違う表情をしていた。昼の喧騒を失い、どこか静寂に包まれた冷たい空気。それでも勇希の心は熱く、足は自然と加速していた。
走る先は決まっている。幼い頃、鈴と一緒によく遊んだあの公園だ。
(こんな気持ちになるの、いつ以来だろう。)
胸がわくわくする。心臓がドクンドクンと音を立てる。それは「やりたいことを見つけた」瞬間の純粋な喜びだった。
数分後、勇希は公園の入口に到着した。街灯に照らされた遊具やベンチ、そして冬の夜空に揺れる木々の影が、どこか幻想的な雰囲気を醸し出している。
勇希はポケットからスマートフォンを取り出し、鈴の番号を探した。
電話が鳴る。数回のコールの後、鈴の声が聞こえた。
「もしもし?どうしたの、こんな時間に。」
「俺!、勇希!」
「あれ、なんかテンション高いね。何かあった?」
「うん、あったんだ。」
勇希は自然と笑みを浮かべながら、話を続けた。
「俺さ、決めたんだ。医者になること、それにプロデュエリストになること――両方やるって。」
電話の向こうで一瞬の沈黙が訪れた。そして次の瞬間、鈴の声が弾んだ。
「……ほんとに!?すごいじゃん、勇希!」
「ありがとう。家族にもちゃんと話した。父さんには反対されたけど、母さんが応援してくれるって。父さんも、最後は認めてくれたんだ。」
勇希の声には、どこか誇らしさが滲んでいた。その気持ちが鈴にも伝わったのか、彼女の声には明るさが増していく。
「よかったね、勇希!」
「なんかさ……話したくなったんだよ。鈴に一番に言いたくてさ。」
その言葉に、電話の向こうで鈴が小さく笑う音が聞こえた。
「そっか。それって」
、鈴は嬉しそうに言葉を続けた。
「そしたら私も、全力で応援するよ。勇希が走り抜けられるように!」
電話を切った後、勇希は公園のベンチに腰を下ろし、夜空を見上げた。
(ありがとう、鈴。)
寒い夜風が頬を撫でるが、それでも心は温かかった。
俺、やるよ。本気で。
空には小さな星が輝いていた。
眠れない夜
その夜、勇希は布団に入ったものの、どうしても眠ることができなかった。
(医者になる。それに、プロデュエリストにもなる。)
自分の中でその言葉を繰り返すたび、胸の奥で小さな炎が大きく燃え広がるようだった。目を閉じてもその興奮は収まらず、身体がじっとしていられない。
(……もういいや。)
勇希は布団を蹴飛ばし、机に向かうと、まずは参考書を開いた。
勉強の時間
数学の問題集、英単語帳、生物の教科書――次々とページをめくりながら、ペンを走らせる。
(やることはたくさんある。時間なんていくらあっても足りないくらいだ。)
普段なら「めんどくさい」と投げ出してしまうような内容も、今日は不思議と集中できた。未来への決意が、勇希の中で新しい力を引き出しているようだった。
とはいえ、夜の静けさは油断を招く。ふとした瞬間、目がデスクの片隅に置かれたカードケースに向いた。
そこには、昨夜開封した「緑血族の覚醒者」が収まっている。
(勉強も大事だけど……こっちも大事だよな。)
勇希はペンを置き、カードケースを手に取った。
デッキ構築の時間
「緑血族の覚醒者」をそっと取り出し、デスクの真ん中に置く。その輝きを見つめながら、勇希は新しいデッキの構築に取りかかった。
机の引き出しからストレージボックスを引っ張り出し、次々とカードを並べていく。「緑血族」のテーマに合いそうなカードや、新たに追加するトラップカード、魔法カード――デッキのバランスを考えながら、カードを一枚一枚吟味していく。
(これならどうだ?いや、やっぱりこっちのほうがいいか……。)
気づけば、机の上はカードでいっぱいになり、勇希は真剣な表情で次々とカードを入れ替えていた。
時計の針は午前2時を過ぎ、やがて3時を指していたが、彼の手は止まらなかった。
外の空が少しずつ白んでくる頃、ようやく勇希は手を止めた。
「……よし、これでいいかな。」
机の上には、新しい構築で完成したデッキが置かれていた。その中央には、「緑血族の覚醒者」が力強く鎮座している。
同時に、参考書のページも進み、ノートにはびっしりと書き込まれた文字が並んでいた。
(結局、朝までやっちゃったな……。)
勇希は軽く伸びをし、椅子にもたれかかった。疲労感はあったが、それ以上に充実感が胸の中に満ちていた。
新たな一日の始まり
朝日が窓から差し込み、机に並べられたカードやノートを照らす。
勇希は立ち上がると、鏡を見て自分に笑みを浮かべた。
「行こう。今日からがスタートだ。」
寝不足の目をこすりながらも、その瞳には昨日とは違う光が宿っていた。
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