追跡者はオレンジ色か
カメレオンマン EP2「追跡者はオレンジ色か」
「ねぇ、ねぇ、カメレオンマンて知ってる?」
女子高生が会話をしている。
「カメレオンマン?」
「ほら、世界中のあっちこっちで、ゲリラアートを描いているアーティストだよ」
「知ってる!凄い絵だよね〜」
「カッコイイよねー」
「バンクシーより派手だよね」
「そうそう、派手!私好き」
「でもね、描いている所を見た人は誰もいないんだって」
「へー、何で?覆面アーティストだから覆面しているとか?」
「違うの…」
「なに?」
「一度だけ見た人がいたんだって」
「本当?」
「筆だけが…一人で…勝手に…動いていたんだって、人には見えなかったんだって…」
「ウソ〜本当〜都市伝説〜」
「本当…」
セントラル美術大学、油絵学科の教室。
学生たちが皆、真剣に絵を描いている。静物画だ。
教授が、その後ろから指導をしている。
その中に、一風変わった絵を描いている学生がいた。静物画なのに尖ったディテール、単色、かすれた線。
教授が近づいていく。
「君は〜変わった絵を描くね〜」
「はい…」
「君は〜発想やタッチは良いんだけれど〜何か〜ワザと下手に描いていると言うか〜ワザと雑に描いているというか〜」
「はい…」
「もしかして〜利き腕が違うんじゃないのかい?」
「いいえ、僕は正真正銘、右利きですよ」
「そうかね〜」
「はい〜」
不思議そうな顔の教授。
メガネのズレを直す学生。その口元には笑みが…
何かいる、
何かそこにいる、
そう、カメレオンマンがそこにいる。
あなたのすぐ側に、
すべての物に色が変わる。
すべての物に身体が変わる。
すべての物に成ることができる。
彼は自由人、
この世界の自由人、
誰にも関わらない、
誰にも囚われない、
自由気ままに生きている。
それが、カメレオン、カメレオンマンだから…
タイトル「カメレオンマン」
ガガガガガガーーー
首都高を滑走しているバイク。
その形状は、
人馬一体、というかバイクと身体が融合され、一つのマシンとして形成されていた。
少し前、
「照合確認、アブダクション開始」AIメルの声。
カメレオンマンの身体から数本の触手が伸びた。近くにある大型バイクを取り込むのだ。カチャカチャ、カチャ、
バイクは、あっという間に難なく分解され、パーツごとにカメレオンマンの身体と一体化し始めた。再構築されたバイクは、アブダクションマシンとして再生する。
「ライディングカメレオン!」
元々のバイクの性能を活かした人馬一体型のマシンだ。EVモーターを出力とし、地上を時速500kmで走行できる。既存のバイクの性能も活かしたバイクマシン。
瞬く間に出来上がったライディングカメレオンは、首都高を走り出す。
ギュン、ガガガガガ、ガーーー
「ちくしょう、」
「いったい、いくつ機能があるんだ」隊長。
「欲しい、あの性能が欲しい。絶対、我国に…」
バシュン、ババババーーー
器用に、他の車を避けながら走るライディングカメレオン。
その遥か後ろ、見たことなのない形状の黒い車が追いかけて来た。その車も性能がいい、かなり改造されている様子だ。
車中には、黒い服の男たちが乗っている。
「今度こそ、カメレオンマンを捕獲する。Nシステムにも引っかかっているはずだ」
「完璧だ、この計画は完璧だ。次のインターチェンジで捕獲だ!」意気が上がる隊長。
「隊長、今、連絡がきましたが、カメレオンマンのバイクがカメラに映っていません」
「なに?」
「まったく映っていません」
「そんな馬鹿な、」
モニターの画面を覗く隊長。
確かに映っていない。
「…しかし、デジタルエフェクトというのは面白いな。肉眼では見えるのに、カメラや機械を通すと見ることができない。不思議な機能だよ」レオン。
「はい、現在のネット社会には盲点のシステムですね」AIメル。
ババババババーーー
滑走するライディングカメレオン。
「インターチェンジを封鎖しろ、一台の車も下ろすな」隊長が命令する。
パパッ、首都高の照明が瞬く。
「あれ、いつの間にか対向車が一台もいなくなったぞ」レオン。
「私たちを、前後から挟み討ちする作戦ですね」メル。
「そうか、でもあまいな」
「ライディングカメレオン解除、そして、ダミーライダーとして、走行維持」
「了解、」
カシュン、カシュン、
ライディングカメレオンは、カメレオンマンと分離し、そのまま走り続けた。
ひらり、
カメレオンマンは、バイクから降車し路肩に降り立つ。
パパッ、光学エフェクトを発動したカメレオンマン。
消えた、保護色だ。
ビューーン、
その横、黒い車たちが追いかけて行く。
手を振るカメレオンマン。
誰も気づかない。
「なに?」
「今、誰かが路肩で手を振っていた様な?」隊長がつぶやく。
「気のせいですよ、隊長」笠原が言う。
「そうか…」
走り去って行く黒い車たち。
見えなくなる。
「さて、帰るとするか」
シューン、
ジャンプしながら、街を飛び跳ねていくカメレオンマン。
インターチェンジ
「ちくしょう、また、やられた!」隊長が地団駄を踏んでいる。
アンカーネットには、変形したバイクが引っ掛かっていた。
カランカラン、カラン
タイヤだけが回っている。
立ちすくむ黒い服の男たち、オレンジ色の照明に照らされる。その姿は鈍く光る…
首都高の壁、
オレンジ色の車の絵が描かれていた。
隊長や部下たちも描かれてある。ちょっとコミック風。
サイン、カメレオンマン。
「追跡者はオレンジ色か」ーーー続く。




