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パリは緑色か

カメレオンマン EP1「パリは緑色か」


パリ、シャンゼリゼ通り。


のどかな昼下がり。

観光客や買い物客が、ぶらぶらと歩いている。

幅広い歩道には、カフェやブティックが立ち並び、テラスでは、パリっ子たちがお喋りをしながら寛いでいた。


グラグラグラ、グラ

ガッシャーン、


激しい轟音と共に、砕け散るガラス片。

ゴロゴロゴロ、ゴロ

何かが転げ回り、飛び出してきた。

「痛てててて」

声はするが、身体は見えない。

「無謀な作戦でしたよ、レオン」AIの声。

「成功確率は10パーセントでした」

「うるさいなぁ」

ザッザッザッ、ザッ

黒い服の男たちが現れた。

全身黒尽くめ、ガッチリとした身体。手には見たことのない黒い銃を持っている。

「どうしたんだ一体、何が起きたんだ」

カフェのお客たちが、慌てふためく。

カチャ、

黒い服の男たちが、一斉に銃を構える。

ジジジジ、ジーーー

銃身に着いている赤外線スコープの音が、大きく響く。

「あそこだーーー」

隊長が叫ぶ。


影が一つ、


通りを走っている影が一つある。

シューン、シューン、

足音だけが聞こえる。


ダダダダ、ダーーー


激しい銃声、

「おっと」

ひらりと、銃の弾を避ける影。

身のこなしが軽い、まるで体操選手だ。高く高く舞う影。太陽を背にするが何も見えない。

「太陽光の照射角75度。影の出現率80パーセント。捕獲される確率50パーセントです」

「うるさいなぁ、そんな確率より何とか対処の方法を考えろよ、メル」

「はい、ただいま計算中」

黒い服の男たち、今度は大きなロケットランチャーの様な物を取り出した。

カチャ、グーン、

伸びる銃身。

「一時の方角、構えー撃てー」

バァーン、

白煙と共に、巨大なネットが飛び出した。

パァーーン、

それは一面に広がり、その影を大きく包み込んだ。

バサッ、

「捕らえた」隊長の声。

「捕獲される確率90パーセント」AIの声。

「うるさい、」

ジ、ジジジジジージーーージ

ネットに電流が流れ出した、青い光。

「い痛ててててー、痺れ〜る〜〜」

「捕獲ー」

ザッザッザッ、ザッ、

黒い服の男たちが、ネットの回りを取り囲む。

ビグッ、ビグッ、

ネットの中、透明な人の身体の様な物が痙攣をしている。

「痛てーじゃねぇか、この野郎。怒ったぞ!」

ゆっくりと、立ち上がる透明な身体。

「パルサーエフェクト!」

「只今、出力が85パーセントまでが限界です。フラッシュエフェクトの方がお勧めですが?」

「うるさい、」

「了解」

その瞬間、透明な身体が白く光り出した。

眩しい、強すぎる光だ、

パパパ、パーーー

激しく閃光を放つ身体。

パパパパ、パーーーパン!


白、


辺り一面が白色に変わった。

……

……

収まった。

「どこだ、どこだ、」

「ターゲットロスト」

黒い服の男たちが、うろたえている。

「ちくしょう、また取り逃した」

隊長の声。

「隊長、壁に何か書いてあります」

「何だ、カメラに見せろ!」

黒い服の男の一人、ヘルメットのカメラで壁を写す。

壁には、

緑色のワンピースを着た少女の絵が描いてあった。踊っている少女。

その横に、

「カメレオンマン」サイン。

「まただ…」隊長の声。


セーヌ川

畔を飛び跳ねる影。

シューン、シューン、軽快に飛び跳ねている。

ベンチで抱き合っているカップルが一組。そのすぐ側を通りぬける影。

「ジュ デーム♡」

カップル、キスをしようとする。

シューン、

「お幸せに、」影の声。

「誰?」キョロキョロするカップル。

シューン、

そのベンチの横、紙が一つあった。

「シャンゼリゼ通りの被害の請求は、スイス銀行◯◯◯カメレオンマンまで」サイン。

川辺を飛び跳ねる影。

「絵を描いている間に、逃げられる確率が10パーセント減りましたよ」AIの声。

「いいんだよ、メル」

「それが……カメレオンマンだからさ」

一瞬、緑色の身体が現れる。

消える、

セーヌ川に夕日が落ちる…


ゴオオオオオー

ブリティッシュエアラインが、シベリア上空を飛んでいる。

機内、

「エクスキューズミー、ドウーユーハブア ドリンク?」キャビンアテンダントが伺う。

「ワン、ジャパニーズティー」

細身のサングラスの男が、日本茶を頼む。

その手、スマホでシャンゼリゼ通りの騒ぎの記事を読んでいた。

「カメレオンマン、また、ゲリラアートを描く、即完売。小さい記事、同所近くで暴漢がカフェを破壊。修理費は、カメレオンマンが立て替える?」

「ジャパニーズティー、プリーズ」

キャビンアテンダントが日本茶を差し出した。

「サンキュー」

ポーン、

「レディースandジェントルマン、羽田までの到着、あと1時間です」機内アナウンス。

男、窓から外を眺める。

「東京か、何もかも懐かしい…」


羽田空港

ビーーー

エックス線検査装置が反応する。

画面には、ミッキーマウスの顔が出ていた。

「おかしいな、ミッキーマウスの顔が映っているぞ、何だ、壊れたのか?」

空港管理官が不思議そうな顔をしている。

「もう一度、やってみたらどうですか」サングラスの男が言う。

グーン、

何事もなく通過するキャリーバック。

「OK」

通路、

「あんまり遊ばないで下さいよ、レオン」AIの声。

男のイヤホンに声が聞こえる。

「いいだろう、メル。久しぶりの日本なんだから」

サラサラサラ、サラ、

男、立ったまま、スケッチブックにミッキーマウスのイラストを描く。

上手い、プロ並みのイラストだ。

レオン、ロビーに座っている子供を見かけた。

「はい、あげる」

そのスケッチを、子供に手わたすレオン。

「ありがとう」

「あれ〜、何でミッキーマウスが緑色なの?」不思議がる子供。

イラストのミッキーマウスは緑色だった。


レオン、

「緑色の方が、カッコイイからさ…」


「パリは緑色か」ーーー続く。


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