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俺の名前は上泉 信吾
幼い頃、祖父に誘われた道場で武術にのめり込み薙刀・剣道・柔道・・弓道・相撲・空手・古武術・果ては刺突剣術・半杖術などなどおもちゃを貰った子供のように様々な武術を心いくまで学んだ。
大学生になる頃にはいずれの分野でもオリンピックが手に届きそうなレベルになり、それに飽き足らずに知らない格闘技や武術があればその世界に飛びこんだ。
武聖などと呼ばれていい気になっていたが、やがて跡継ぎが居ないことに気付き探してみるも時すでに遅し。 結局孤独な老後を迎える羽目になった。
せっかく磨いた技術を受け継ぐものもおらず、道場も・・・。
武術の世界に君臨したはずが振り返って気付けばただ力で暴れるだけの獣のような存在であったのだ。
ああ、あの時もっと恋をすべきだった。
ああ、もっと武術に打ち込み弟子を育てたかった。
二つの後悔が折り重なり、無念と跡継ぎを残せなかった汚名を雪ぐべく天に何度も祈った。天よ、わが身を哀れみたまえ・・・と。
天に召されようとした時、彼の祈りはついに天に通じたのだった。
布団に老いた枯れ木のような体を横たえる。
もうこの命は長くない。
弟子もいない、技術も、道場も、皆無駄になる。
やがて自分の人生は紙面に記録されるに留まり、それもただの情報と化すのだろう。
若い頃はよかった、オリンピックに呼ばれた時は親戚一同が応援してくれ
同期の仲間達の祝福を受けて金メダルを量産した。
額縁には天皇陛下から頂いた文化勲章と黒帯が飾ってある。
柔道は外国の選手にも負けなかった、ルールがたくさん変わったがそれでも負けなかった。それが今はどうだ。
狭い和室の一角に、忘れ去られた道具のように身を横たえている。
むりやり体を起こし、床の間に飾られた刀を手に取る。
免許では筆記が難しかったな・・・。真剣の輝きが剣を取った青春を思い起こさせる。剣でも負けなかったな。
しかし曇り一つない刀のきらめきが自分の置いた顔を映したときひどく傷ついた。
刀はいいなあ、手入れさえしていれば百年を越えて輝きを放つだろう。
ああ、私に今一度青春が欲しい!それさえあれば!
そう思ったとき胸が痛んだ。まずい、心の発作だ。
感情が高ぶりすぎたのがいけなかったのだろう。
激痛を根性で押さえ込み、せめて最後は、せめて最後はと
無理やり布団にもぐりこんだ。
穏やかな顔をして死んでやると思った。
くだらないことだが最後に何かして死にたかった。
そして目を閉じた時。
自分の体がなにか強い力に引っ張られるのを感じた。
「上泉 信吾殿、聞こえるだろうか?」
老人の声が聞こえるが視界は暗いまま。声の質から察するに自分と同じかわずかに若いくらいか、鍛えてはいない痩せ型の体系だろう。
問い掛けにゆっくりうなずくと老人はそれを確認したのか静かに語りだした。
「本来ならば貴殿の魂は輪廻に帰るが、特別に強く錬られた魂の輝きと未練を感じて特別に引き上げた次第だ。」
そういう老人の言葉は優しげで、なんとなく自分の深い所を理解してくれるような感覚を覚える。知己を得たような気分だ。
話によると老人は自分のことを神と名乗っていて私の一生が余りに報われていないので心を痛めているのだという。
「おそらく君は生まれた世界を間違えたのだ、磨かれた宝石を石に戻してしまうのは心苦しいし君のような武人を必要とする世界はいくらでもある。」
そこで彼は最後に信じられない一言を言った。
「君の能力と知識を持ったまま生まれ変わってみないか?」
まさに天の助け、これを逃す手はなかった。しかし神はただし、と前置きをした。
「最低でも一人・・・女性と子供を儲けて欲しい。」
は?と思わず言ってしまった。 たしかに跡継ぎは欲しかったがそれって浮気では・・・。そう思っていると神はそれについての説明をしてくれた。
実は転生先の世界はとある理由で乱れることが予言で予見されており、その世界を救うべく再び預言をしたところ孤独な武神に選ばれた女性から産まれ、鍛えられた子が武人の弟子と共に世界を救うとある。
不思議に思ったが予言で武神と呼ばれる男を神が呼ばれると預言者は告げておりタイミングとして武神とは貴方しかいないと神は告げる。
大げさな話だが要は異なる世界で嫁さんと弟子を探せということ。
「?! どうなさったね?」
神が驚いたようにたずねる、思わず泣いてしまっていたのだ。
神が私の武を認めたうえに跡継ぎを作るチャンスをくれたのだ。
嬉しくないはずがない。泣くほど嬉しい。
やっと本懐が遂げられる。
そのためならば異世界など物の数にはいるものか。
快諾した私に神は大層喜んだらしく三つの贈り物をくれた。
一つは転生先で強靭かつ長命の体をくれること。
二つ目は今の記憶と技術を持ったままで生まれ変われるということ。
三つ目は・・・
「女性を落とす能力じゃ!」
良き旅を!と神様は告げると私がそのことについて尋ねる前に強い光に包まれ意識が白んでいった。