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白い霧が晴れるように光が収まると私は石造りの部屋で眠っていた。

首を動かそうとするが全身がうまく動かない。

かろうじて横をみると小さな手が目に飛び込んできた、そうか私は生まれ変わったのか。


仏教やらなにやらをかじったことがあったがこんなにも素直に今の状況を受け入れられるのはまさしくあの老人のおかげであろう。


声も上手く出ないが赤子のような、というか赤子なので仕方ないがとりあえず声を上げると私の世話をしてくれているらしい女性が急いで駆け寄ってきた。


「坊ちゃんがお目覚めですね。」


綺麗な金髪に優しそうな顔立ちの女性だ。きっと世話係かなにかだろう。

彼女は私を抱えてあやすと優しげな微笑を崩さず私に接してくれた。

まるで自分の子供にそうするように。後にわかったことだが彼女は両親に劣らず俺の誕生を楽しみにしてくれていたらしい。


「マリエル!わが子が目覚めたというのは本当か!」


乱暴に扉が開かれ鎧を身に纏った豪傑が部屋に飛び込んできた。

身の丈が2メートルに達しようかという偉丈夫でこの世界の我が父ある。


「伯爵様!坊ちゃんが驚いてしまいます!」


マリエルがそういうと父は大きな体を小さくして謝る。しかしすぐに笑顔を取り戻して私の顔を覗き込む。


「悪かった、だが待望の世継ぎぞ妻にもお前にも感謝感謝だ。」


いい年の大人が、といいたいくらいはしゃいでいるのがわかるがコレも父親の姿の一つなのだろう。情け深い性格で領民に慕われているらしい。

マリエルから私を受け取ると厳つい顔をくしゃくしゃにしながら笑う。

私はどうやら望まれて産まれてきたようだ。これほどいい幸先はない。


そうおもっていたが一つの問題が起こった。

私が五歳の頃の話だ。

この世界には魔法が学問として存在するがそれを遊びの一環としてほかの子供たちよりも何年かはやく魔法を学んでいた。


「坊ちゃん、魔法とは万物の元素をイメージして作り出すものなのです。」


老齢の魔法使いがそう言って本をめくり、様々な図鑑や本を紐解いてくれた。

魔法を使うにはその元素とやらを一点に集める必要があるのだという。

それは大抵は掌にイメージすると成功しやすいがそれでも研鑽が不可欠。

初回でそれができるかな、と魔法使いも笑って言う。

うーんうーんと唸ってみるが掌にはなんにも変化はない。

そう思い火をイメージしながらすーっと息を吸い込んだところ驚いたことに吐いた息が火となって口から飛び出したことだ。

魔法使いは驚いて椅子から転げ落ち、慌てて父親に報告する運びとなった。


口から火や魔法を吹けるには人間では不可能だ、魔法の元となる元素は体内に入ると分解されてしまうし分解を超えるスピードで元素を溜め込むと怪我や病気をするらしい。

最初は皆私の体を心配していたが私が無事なのを知ると別の心配が浮上したのだ。


口から魔法を吐ける存在とはまさしく異形、人間ではありえない。

人外の特徴を有している私に皆は戸惑った。

なぜなら父も母も普通の人間だから当然だろう。

そうなると母親の密通が疑われるがコレを父は断固として否定した。

しかし父の部下たちが疑惑を母に向けたため父は神殿の司祭に助けを求めた。


すると事態はあっという間に解決に向かった。


神殿にたどり着き司祭に事の次第を告げると司祭は仰天した。

両親が魔物の子が産まれたかと心配する中司祭は部下の修道士を多数引き連れて再び現われ、父の手をとった。


「おめでとうございます! 領主殿!」


頭に?が大量に浮かぶ父をよそに修道士達は賛美歌を大声で歌い神に祈りをささげている。

興奮冷めやらぬ司祭が言うにはそれは吉兆以外の何物でもない。

貴方はドラゴンの子を授かったのだ、と。

私が生まれた国ではドラゴンは特別に神聖視されており建国の逸話や神話にもドラゴンが多数登場する。


「しかし、私の子がなぜ・・・。」


「私もおとぎ話だと思っていましたが本当にすばらしいことです。」


踊りだしそうなくらい興奮している司祭を宥めて聞くと、建国の逸話に国王の側近であり母の遠い先祖が逸話の中でドラゴンに恋をし子を生したという一説がある。つまり私の家系にはドラゴンの血が混じっているらしいのだ。


国の王族が自らの正当性を示すために自らの家系を神話に絡めることは多いが計らずも私が生まれたことで建国の逸話が真実であることが証明されてしまった。

これが歴史的な発見でなくてなんだというのか。


「よかった、我が妻は無実であったわ。」


父がまるで突風のようなため息を吐くと今度は逆に司祭が顔を真顔に変えていった。


「奥方様の悪口を言うやつは破門ですな。」


不敬罪になるやも、と答える。国を象徴する御仁なのだから、とも。


サマル王国、アダムスター領。それが信吾が新しい人生を歩むこととなった第二の生まれ故郷。

隣国リットリオ公国の近隣に位置し、フィゼラー大森林の周辺にある未探索地域を開墾する辺境伯の親族であるガランド・アダムスター伯爵が切り盛りしている割と新しいながらも肥沃な農地のお陰で裕福な土地だ。

この世界には魔法が存在している。しかしながらその魔法は誰しもが扱える訳ではない。一種の才能という奴だ。

何も無いところから火や水を出したり、怪我を治したりといった物から呪文を書き込み魔力を注ぎ込むことで発動する魔法陣のようなモノもある。

中世ヨーロッパ風の建物が立ち並ぶアダムスター領では文化レベルも中世に近く、彼に文化の機微はわからなかったが単純かつ明快な法律が広がる世界で畑を共に耕し、時に未開地の探索に同行して領地の運営に関わっていった。

領地は平穏で武術の入り込む隙が少なかった為信吾は生まれ変わった事実を噛み締めながらヴォルカーン・アダムスターとして安穏と暮らしていた。

しかしながら彼に貴族としての勉学に励むのは辛く、いつも外で体を動かしたり未開地の開墾に従事していたため貴族の子息であることを引っ掛けて探検家子爵と呼ばれていた。

そんな彼はいつしか外の世界を目指して歩くことを目標にし、優秀な弟が生まれたことも手伝い、将来ある弟に豊かな領地を委ねるべく未開地の開拓に精を出しつつ勉学に励んでいた。


そんな彼に転機が訪れたのは17歳になったその年であった。

 

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