遅れて重なる 第4話
第4話
風が戻っている。
音がある。
崩れた構造体の外縁。
開けた場所。
イリスが立つ。
ギアは少し前に出ている。
距離が逆転している。
「やるぞ」
ギアが言う。
イリスは何も言わない。
敵が現れる。
四体。
多い。
速い。
ギアが先に動く。
踏み込む。
わざと遅らせる。
ズレを作る。
イリスは合わせない。
だが動きが引っ張られる。
一体、崩れる。
すぐに次へ行く。
ギアは止まらない。
さらにズラす。
深く踏み込む。
敵が反応する。
読まれる。
二体が同時に来る。
ギアが弾く。
遅れる。
位置が合わない。
「……浅い」
低く言う。
もう一歩、踏み込む。
無理にズレを広げる。
イリスの動きが乱れる。
一瞬。
間が消える。
敵が揃う。
囲まれる。
「……違う」
イリスが言う。
だが遅い。
ギアが入る。
強引に割る。
崩れない。
逆に押し返される。
肩を掠める。
血が落ちる。
初めての傷。
ギアが止まる。
一拍。
ズレが消える。
ただの遅れになる。
敵の動きが揃う。
「……やりすぎたな」
ギアが言う。
イリスは何も言わない。
一体が踏み込む。
速い。
ギアは動かない。
動けない。
その瞬間。
イリスが入る。
わずかに遅れて。
斬る。
通る。
一体、落ちる。
残り三。
距離が空く。
呼吸が乱れる。
初めて。
ギアが小さく笑う。
「……天井か」
イリスが短く言う。
「違う」
一拍。
「限界だ」
沈黙。
風が通る。
遠くで、揺れる。
遅れて。
ギアはそれを見る。
今度は目を逸らさない。
「……あれも、関係あるな」
イリスは答えない。
二人は構え直す。
今度は。
無理にズラさない。
敵が来る。
一体ずつ。
処理する。
ゆっくり。
確実に。
最後の一体。
同時に動く。
今度は揃う。
斬る。
終わる。
静止。
風だけが残る。
ギアが言う。
「……使い方、間違えたな」
イリスが答える。
「ああ」
短い沈黙。
ギアが続ける。
「次は」
一拍。
「ちゃんと使う」
イリスは頷かない。
だが、否定もしない。
二人は歩き出す。
揃わないまま。
今度は。
無理に揃えない。




