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第2話
第2話
風は弱い。
視界が開けている。
崩れた構造体の外縁。
足場は不安定だ。
イリスが先を歩く。
ギアは少し後ろ。
距離は変わらない。
揃ってはいない。
「さっきの」
ギアが言う。
イリスは止まらない。
「……分かってる」
短い返答。
それで会話は終わる。
遠くで、揺れる。
遅れて。
ギアは見ない。
見なくても分かる。
“ある”。
敵が現れる。
今度は二体。
低い姿勢。
速い。
イリスが先に動く。
ギアは一拍遅らせる。
試している。
イリスは合わせない。
だが、動きが変わる。
敵の一撃が空を切る。
位置が、わずかにズレる。
ギアが入る。
一体、崩れる。
間を空ける。
深追いしない。
残り一体。
突進。
イリスが踏み込む。
今度は遅い。
ギアは動かない。
待つ。
敵が踏み込む。
その瞬間だけ、動く。
斬る。
通る。
静止。
風が戻る。
「……使えるな」
ギアが言う。
イリスは否定しない。
「前からだ」
「違う」
ギアは首を振る。
「前は“合ってた”」
一拍。
「今は“合ってないのに成立してる”」
沈黙。
遠くで、また揺れる。
遅れて。
ギアが言う。
「……あれの影響か」
イリスは答えない。
ただ、少しだけ視線を動かす。
それで十分だった。
二人は歩き出す。
揃わない。
だが、外れない。
風が通る。
何も起きていないはずの空間が、わずかに遅れる。
気づく者はいない。
二人以外は。




