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「眼鏡の変人研究者がモンスターを獣人娘に変えて愛でます ~弱らせて粘液で契約~」  作者: 新米オッさん兵士


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第3章 次の被験体と、女性だけの絆

森の奥深く、零華とプルルが小さなキャンプを張ってから二日が経っていた。

朝の柔らかな陽光が木漏れ日となって降り注ぐ中、零華は地面に広げたノートに熱心にペンを走らせていた。厚い眼鏡のレンズが光を反射し、黒髪を適当に束ねた後ろ姿がどこか研究室にいた頃を思い出させる。

「プルル、耳の感度測定はもう少し丁寧に……あ、そこで震えたわね。データ記録よ」

プルルは零華の膝の上にちょこんと座り、青い触角耳をピクピクさせながら甘えた声を出す。

「零華様……くすぐったいけど、気持ちいい……もっと触って?」

「ふふ、これは重要な実験。獣人化後の感覚共有を確認しているの。耳の付け根をこう……」

零華の指が優しく耳を挟むと、プルルが小さく体をくねらせ、零華の白衣に顔を埋めた。柔らかい体温と甘い香りが漂う。零華は眼鏡の奥で頰が熱くなるのを感じながらも、冷静にメモを続けた。

『被験体プルル:女性の触刺激に対する反応が極めて良好。男性の接近時には警戒反応が強く、契約不安定化の恐れあり。女性限定の愛情表現が安定鍵か……これは理論の大きな進展ね』

プルルが零華の胸にぎゅっと寄りかかり、囁くように言った。

「零華様以外……嫌。男の人、怖い……プルル、零華様だけがいい」

「ええ、そうね。君の反応からすると、獣人化した子たちは女性の優しい魔力にしか素直に反応しないみたい。男性には懐きにくい……それが自然な結果なのかもしれないわ」

零華はプルルの背中を優しく撫でながら、小さく微笑んだ。この現象は予想外だったが、彼女の研究心をさらに刺激していた。男性が粗暴に触れれば契約が乱れる——つまり、零華のような女性研究者がこそ、この理論の適任者だということになる。

その時、森の少し離れた方から、低い唸り声が聞こえてきた。

「ん? これは……狼型のモンスターね。ちょうどいい被験体かも」

零華は立ち上がり、プルルを優しく膝から下ろした。

「プルル、一緒に来て。新しいお友達を作りましょう。ただし、ちゃんと弱らせてからよ。殺さないようにね」

「うん! 零華様の言う通りにする!」

二人は音を立てずに森を進み、木々の影から大きな灰色の狼型モンスターを観察した。体長は二メートル近く、鋭い牙と爪を持つが、最近の狩りの失敗でかなり弱っている様子だった。

零華は魔導棒を構え、的確に魔力弾を放って狼を弱らせていく。致命傷は避け、ただ動きを鈍くするだけ。プルルも自分の粘液を軽く飛ばしてサポートした。

狼の動きが完全に止まった頃、零華はポケットから試作第17号の特殊粘液を取り出した。

「さあ……二体目よ。うまく行ってね」

粘液を狼の体に丁寧にかけると、再び淡いピンク色の光が爆発した。

光の中で、狼の体が大きく変化していく。灰色の毛が柔らかい銀髪に変わり、鋭い耳とふさふさの尻尾が残る。手足が細くしなやかな女性のものになり、強靭そうな体躯がしなやかな曲線を描く。

光が収まったとき、そこにいたのは18歳くらいの凛とした狼獣人娘だった。

銀色の長い髪、鋭い金色の瞳、頭に立派な狼耳と、腰から生えたふさふさの尻尾。体には簡素な毛皮のような布がまとわりつき、野生の美しさを湛えている。

狼娘はゆっくり目を開け、最初に零華を見た。

「……あなたが……私の……?」

声は低めだが、どこか甘く響く。

零華は眼鏡をクイッと押し上げ、興奮を抑えきれずに近づいた。

「成功よ! 私は霧島零華。君の名前は……そうだな、シルヴァでどうかしら? 銀色の狼という意味よ」

シルヴァは少し警戒した様子で体を起こしたが、零華がそっと手を差し伸べると、鼻を近づけて匂いを嗅いだ。

「零華……様? いい匂い……女性の……優しい匂い」

シルヴァは自然と零華の手に顔を寄せ、頰をすり寄せてきた。ふさふさの耳が零華の指に触れる。

「ん……零華様の手、温かい……安心する……」

零華はシルヴァの頭を優しく撫で、耳の付け根を指で軽く揉んだ。

「ふふ、反応が良いわね。シルヴァ、耳も尻尾も綺麗……これはデータとしてとても価値がある」

シルヴァの尻尾が大きく振れ、零華の足に絡みつくように巻きついた。

「零華様……もっと触って……私、零華様のものになりたい……男の人には……嫌。怖い……零華様だけ……」

プルルが少し jealousy 気味に零華のもう片方の腕に抱きついてきた。

「プルルも零華様のものだよ……シルヴァちゃんも、零華様にだけ懐くんだね」

シルヴァはプルルを見て、少しだけ微笑んだ。

「あなたも……零華様の……仲間? いい匂いがする……一緒に、零華様を守る」

零華は二人の獣人娘を交互に見て、眼鏡の奥で目を細めた。

「素晴らしい……女性にしか懐かないという現象が、ここでも確認できたわ。これは私の理論の核心かもしれない。男性が粗暴に近づけば契約が乱れる……だからこそ、私たち女性がこの研究を進めるべきなのよ」

彼女はシルヴァの尻尾を優しく撫でながら、プルルとシルヴァの頭を交互に撫でた。三人の間に、穏やかで甘い空気が流れる。

「ん……零華様……気持ちいい……」

「零華様の指……優しい……」

零華は照れを隠すように咳払いをした。

「こ、これは純粋なデータ収集よ。契約の安定性を確認するための……」

その夜、キャンプの焚き火のそば。

プルルとシルヴァは零華の両側に寄り添って座っていた。シルヴァのふさふさの尻尾が零華の腰に巻きつき、プルルの柔らかい体が腕に絡まる。

零華はノートに新しい記録を書きながら、静かに語った。

「これでパーティが二人になったわ。次はもっと大きなモンスターを狙って、本格的に実験を進めましょう。冒険者や兵士たちが来ても、絶対に人間を傷つけない。代わりに、情けなく退散させるのよ」

シルヴァが低く唸るように言った。

「零華様を守る……男どもが来たら、牙を見せてやる……でも、零華様の言う通り、殺さない」

プルルが嬉しそうに頷く。

「プルルも粘液でぬるぬるにして、恥ずかしい姿で帰すよ!」

零華は眼鏡を光らせて微笑んだ。

「ええ、そうよ。私の可愛い娘たちと一緒に、王宮の愚か者たちに理論の正しさを教えてあげましょう。『倒すより、愛でて仲間にする方が効率が良い』ということをね」

焚き火の炎が三人の顔を優しく照らしていた。

プルルとシルヴァは零華の肩に頭を預け、甘えるように体を寄せ合う。零華は二人の耳や尻尾を交互に撫でながら、心の中で思った。

(女性だけが繋がるこの絆……これが私の研究の、予想外の贈り物なのかもしれないわ)

遠くから、再び複数の足音が聞こえてきた。今度は前回より大きな部隊の気配。

零華は立ち上がり、白衣を整えた。

「さあ、準備よ。次の実験の時間だわ」

プルルとシルヴァが同時に頷き、零華の両側に並んだ。

眼鏡の変人研究者と、二人の獣人娘による、小さな女性だけの反撃が、本格的に始まろうとしていた。


(第3章 終わり)

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