表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「命乞いした腰抜け」と汚名を着せられた魔王、その瞳で真実を暴く ~「無能」と捨てられた逸材たちを最強へと導き、誠実な国造りを始めます~  作者: ぼん
第一部:再始

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/24

第15話:「真の価値」

 ゼノリスは、セラを見つめた。


 涙に濡れた顔。震える肩。小さな体。


 この少女は、世界に拒絶され続けてきた。魔力がないというだけで、無能だと決めつけられ、ゴミのように捨てられた。


 だが──


 ゼノリスには、分かっていた。この少女には、才能がある。計り知れない才能が。


 ゼノリスは、静かに息を吸った。


 そして──


 【至極の理】を発動した。


 瞳が変わる。


 黄金の瞳が、深く静かな深淵のような色に染まっていく。光を放つのではなく、逆に深みを増していく。世界の理を見抜く瞳。偽りを剥ぎ取り、真実を暴く瞳。


 空気が、わずかに震えた。


 目に見えない力が、空間に満ちていく。


 セラが、顔を上げる。何かを感じたのだろう。その目に戸惑いが浮かんでいる。


 ゼノリスは、セラの頭上を見た。


 そこに──黄金の星が浮かんでいた。


 淡く、だが確かに輝く星。セラの頭上で、静かに光を放っている。


 ゼノリスの視界に、情報が浮かび上がる。


 【黄金の星。☆☆/☆☆☆☆☆☆】


 【神域の身体しんいきのからだ


 ゼノリスの息が、止まった。


 ☆6。限界突破者。


 カイロと同じ。


 この少女もまた、至宝なのだ。


 ゼノリスの胸に、確信が満ちていく。やはり、そうだった。この少女は、世界が見捨てた至宝。磨かれていない原石。


 だが、その輝きは本物だ。


 ゼノリスは、至極の理を解いた。瞳が元の黄金色に戻る。


 セラは、ゼノリスを見つめている。何が起きたのか、理解できていないのだろう。不安そうな表情を浮かべている。


 ゼノリスは、セラに微笑みかけた。


「セラさん」


 セラが、びくりと体を震わせる。


「世界は、あなたを認めませんでした」


 セラの瞳が、悲しみに曇る。


「聖教会は、あなたを拒絶しました。騎士団は、あなたを捨てました。魔力がないというだけで、あなたを無能だと決めつけた」


 セラが俯く。その肩が、小刻みに震えている。


「ですが──」


 ゼノリスは、言葉を続けた。


「真実は、違います」


 セラが、顔を上げる。涙に濡れた目が、ゼノリスを見つめる。


「あなたには才能があります。計り知れない、才能が」


 セラの目が、見開かれる。


「……才能?」


 かすれた声。信じられない、という声。


「はい」


 ゼノリスは、頷いた。


「私には、見えます。この世界の誰も気づかなかった、あなたの真の価値が」


 セラは、何も言えずにいる。ただ、ゼノリスを見つめている。


 ゼノリスは、セラの手を取った。傷だらけの手。努力の証。


「この手が証明しています。あなたがどれだけ努力してきたか。どれだけ強くなろうとしてきたか」


 セラの手が、震えている。


「あなたの体には、誰も知らない力が宿っています。魔力ではない、別の力が」


 セラは、自分の手を見つめた。


「……力?」


「はい。それは、世界が見落としていた力。いえ──世界が理解できなかった力です」


 ゼノリスは、セラの目を真っ直ぐ見つめた。


「あなたの体は、欠陥などではありません。むしろ──完成されているのです」


 セラの目から涙が溢れた。


「……完成? 私が?」


「はい」


 ゼノリスは、微笑んだ。


「世界は間違っていました。あなたを無能だと決めつけた、すべての者が間違っていた」


 セラは、震える声で尋ねた。


「……本当に、……ですか? 私に本当に価値があるんですか?」


 ゼノリスは、セラの手を強く握った。


「はい。本当です」


 そして──ゼノリスは、静かに告げた。


「あなたは強い。この世界の至宝です」


◇◇◇


 セラは、ゼノリスさんの言葉を聞いた。


 至宝。


 自分が、至宝?


 信じられなかった。


 私は、ずっと言われ続けてきた。無能だと。ゴミだと。欠陥品だと。


 魔力がない。それだけで、価値のない存在だと決めつけられてきた。


 どれだけ努力しても、認められなかった。


 どれだけ頑張っても、評価されなかった。


 私は、自分に価値がないと信じていた。生きる意味がないと思っていた。


 だが──。


 この人は、違うことを言っている。


 私には、才能がある。


 私は、強い。


 私は、至宝だ。


 そんな──そんなことが、あるのだろうか。


 セラは、ゼノリスさんを見つめた。


 ゼノリスさんの目には、嘘がなかった。その黄金の瞳は、真っ直ぐに私を見つめている。


 この人は、本気で言っている。


 私に、価値があると。


 私の胸に何かが込み上げてくる。


 熱いもの。


 胸を満たす、熱いもの。


 涙が、溢れてくる。


 止まらない。


 私は、初めて知った。


 自分が、認められるということを。


 自分が、評価されるということを。


 自分に、価値があると言ってもらえるということを。


 涙が、止まらなかった。


 私は顔を覆った。両手で顔を覆い、声を殺して泣いた。


 嬉しかった。


 こんなに嬉しいことがあるなんて、知らなかった。


 誰かに認められる。誰かに価値があると言ってもらえる。それが、こんなにも嬉しいことだなんて。


 私は、生きていて良かったのだ。


 捨てられても、這いつくばっても、ここまで辿り着いて良かったのだ。


 この人に、出会えたから。


 温かい手が、私の頭に触れた。


 ゼノリスさんの手だ。


 優しく、私の頭を撫でてくれる。


「泣いても、大丈夫です」


 ゼノリスさんの声が、聞こえる。


「今まで、辛かったでしょう。誰にも認められず、誰にも理解されず……。ですが、もう大丈夫です」


 私は、顔を上げた。涙でぐしゃぐしゃの顔を、ゼノリスさんに見せた。


 ゼノリスさんは、微笑んでいた。


 優しい笑顔。


 私を、本当に大切に思ってくれている笑顔。


「セラさん」


 ゼノリスさんが、私の名前を呼ぶ。


「はい」


 私は、かすれた声で答えた。


「あなたには、まだ知らない力があります。それを、私が引き出します」


 私の心臓が、高鳴る。


「本当に……私は、強くなれるんですか?」


 ゼノリスさんは、頷いた。


「はい。あなたは強くなれます。いえ──あなたは既に、強いのです。ただ、それに気づいていないだけです」


 私は、自分の手を見た。傷だらけの手。この手で、強くなれる。


「私は……」


 私は、ゼノリスさんを見つめた。


「私は、何をすれば良いですか?」


 ゼノリスさんは、少し考えてから答えた。


「まずは、あなた自身を信じることです。あなたの体を、あなたの力を、信じてください」


 私は、頷いた。


「……はい」


 ゼノリスさんは、立ち上がった。そして、私に手を差し伸べた。


「セラさん」


 その手は、温かそうだった。


「あなたの力を、私に貸してもらえませんか?」


 私は、その手を見つめた。


 この人は、私を必要としてくれている。


 私の力を、欲しいと言ってくれている。


 誰も認めてくれなかった私の力を。


 誰も必要としてくれなかった私を。


 私は、震える手を伸ばした。


◇◇◇


 ゼノリスは、セラが手を伸ばすのを見た。


 その手は、震えている。迷いと希望が混ざり合った手。


 セラの目には、涙が残っている。だが、その目には、もう絶望はない。


 わずかな希望が、宿り始めている。


 ゼノリスは、セラの手を取った。


 冷たい手。だが、確かな温もりがある。


 セラの目が、見開かれる。


 ゼノリスは、セラを引き上げた。優しく、だが力強く。


 セラが、立ち上がる。


 ふらつきながらも、自分の足で立つ。体は弱っているが、意志は強い。


 ゼノリスは、セラの手を握ったまま、微笑んだ。


「ありがとうございます、セラさん」


 セラは、驚いたように目を瞬かせた。


「……私が、お礼を言われるんですか?」


「はい」


 ゼノリスは、頷いた。


「あなたが、私を信じてくれたから。あなたが、手を取ってくれたから」


 セラの目から、また涙が溢れた。だが、それは嬉しそうな涙だった。


 ゼノリスは、セラの手を離した。


 セラは、少しふらついたが、自分で立っている。


 ゼノリスは、小屋の入口近くに立っているカイロを見た。


 カイロは、静かに立っている。その目は、セラを見つめている。


 カイロの表情には、複雑な感情が浮かんでいる。自分の過去と重ねているのだろう。自分も、ゼノリスに救われた。自分も、価値があると言ってもらえた。


 カイロは、ゼノリスと目が合うと、わずかに頷いた。


 ゼノリスは、セラに向き直った。


「セラさん。これから、あなたの力について詳しく説明します。あなたが持つ、本当の力について」


 セラは、真剣な表情で頷いた。


「……はい。お願いします」


 ゼノリスは、微笑んだ。


 この少女は、もう絶望していない。


 この少女には、希望がある。


 そして──この少女は、私の仲間になる。


 ゼノリスの心に、静かな確信があった。


 セラは、立ち上がった。


 捨てられた少女は、もういない。


 ここにいるのは、至宝。


 世界が見落とした、宝石。


 そして──これから輝く、星。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ