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高瀬、詩衣良です。翼人です。
私はこの翼のせいで、苦労ばかりしてきました。
普通の服は着られません。
お風呂で洗うのも大変です。
舞い散る大量の羽も掃除しなければいけません。
冬は風が冷たくて痛みます。
夏は羽毛のせいで無闇に暑いです。
動かすたびに風がおきて、迷惑をかけます。
時々、重いです。
走るのも遅くなりました。
まわりの皆から奇妙な目で見られます。
変な人につきまとわれます。
こんな翼、なければ良いのに。
そう、何度思ったかわかりません。
私にとってこの翼は呪いです。
おまえは普通の人とは違うんだ、普通より劣っているんだ。そういう呪詛なんです。
そんな私に、声をかけてくる人がいました。
「きみの翼は誰より綺麗だ」
そう言って、その人はにっこり笑いました。
認めたくはありませんが。
きっと私は。
その言葉が、嬉しかった。
嬉しかったんです。
だから今、こうしてここに立っています。