現実への足音
「さて、再確認するぞ? この町を出た後、フリース山脈を登って、鉱山都市<コールス>を経由して、そのまま中央都市<イニシア>へ向かうという事でいいのか? ワシとしてはかなり無謀だと思うが」
いま何してるかというと、私とギレーアは魔王に会わないといけなくなって、町長さんと、幾岐さんと一緒にどの道筋で魔王城のある中央都市<イニシア>に行こうかなーってお話ししてて、やっとまとまったところ。
「俺は問題ない。脆弱な人間じゃないし、スフィアも、人間かと言われると、人間では無い存在だからな」
「ふふっ、コールスに行くにはどちらにせよ、フリース山脈を越える必要がありますからね。ある意味合理的といえば合理的かもしれませんね」
本当は、このフリース山脈っていうのを、迂回して進んだ方が良いんじゃないかなーって話になってたんだけど。それだと時間がかかりすぎるってギレーアの意見と、コールスって町に行った方が良いっていう、幾岐さんの意見で、今こんな感じになってる。えっと、私? 私は話をふーんって感じで聞いてるだけ。
「フリース山脈には、未だ狼や熊が出没するが、問題は無いのか?」
「それくらい俺1人で対処出来る。それより、わざわざコールスとか言う町に行く必要があるのかというのが疑問だ」
「良いじゃないですか、どうせそこまで大幅な遠回りにもなりませんし、一度紙上の折手の状況を見ておくのも悪くは無いと思いますよ」
なんか、コールスって町には紙上の折手の本拠地があるんだって。なんで行かないといけないのか、私にはよく解らないんだけど、幾岐さんはなんか考えがあるみたい。
「わざわざ敵地に行く必要が……」
「ところで、ギレーアさん? 私前から気になっていたんですけど、貴方は悪魔なんですよね? 良いんですか? 悪魔がこんなことをしていて。スフィアさんの性格から、契約を交わしたようにも思えませんし、不味いことになりません?」
あ、ギレーアの言葉が止まった。悪魔だと困る何かがあるのかな? 私は何も聞いてないんだけど、どういう事なんだろ?
「……俺は、どうせはぐれものだ。大事にはならない。それに、魔王に会うのはスフィアだけで十分だろ。俺は直前まで着いていくだけだ」
「えっ! それ私始めて聞いたよ!?」
魔王の所まで一緒に来てくれるんじゃなかったの!? 私1人で会いに行かないといけないの!? こういう最終局面って、仲間が集合するのがお約束だったりするよね!? 私の冒険仲間って今のところギレーアしかいないけど!
「俺にも都合があるんだ。こればかりはどうにもならない。というか、話が逸れたな。結局コールスへ行く理由は何だよ」
「ふふっ、そうですね。貴方が悪魔であるからこそ、行って欲しいんですよ」
あれ? これって私関係なくない? でも、こういうのって重要イベントって感じがするよね! こういうのでフラグ回収しておかないと、後々困ったりするパターンかなー。
「はぁ、おい、スフィア。お前はどう思うんだ」
「えっ、私?」
「お前以外に誰が居るんだ? そもそも、話のメインは誰だと思ってるんだよ?」
それは、そう。メインは勇者の私でした。でも、言えることなんて何もないんだよね。だって、地図とかもよく解らない、そういうイベントみたいなのも理解してないよ。最初は、流に任せるしか無いんじゃないかな。
「んー。今決まってる感じで良いんじゃないかなー。考えてもよく解らないし、なるようになると思うよ」
「お前が良いなら俺は何も言わないが……。最近やっと見えてきたが、主体性がないだろ? 受け身で何とかなると思ってないか?」
そう言われると、そうかもしれないけど。それが解ってもどうすれば良いのかなんて私には解らないよね。それなら、今のままでも良いんじゃないかなー、困ったことにはなってないしねー。
「考えるよりもなるようになれーって思ってた方が気が楽って事で良いんじゃないかなー」
「……俺は知らないからな」
「うむ。話はまとまったという事で良いか? ワシとしてはもう少し安全な道を選んで欲しかったが……。ちゃんと旅の準備はしておくように、油断はするんじゃないぞ」
出発自体は数日後になるみたい。ギレーアは明日でも良いって言ってたけど、町長さんが大変な道のりになるから準備はしっかりしないとダメって、珍しく押しきってた。幾岐さんは話が終わったらすぐに居なくなってたね。
……
それから、出発の日になった。町長さんと、町の皆が見送ってくれるみたい。なんかちょっとしたお祭りみたいで、なんとなく楽しい気分になってくるよね。こういうのって何て言うのかなー、凱旋とかだよね。
「俺は、こういうのは苦手だ……」
「そんな事言わないで、ほら、ギレーアも手を振ってー。勇者の出発なんだよー?」
相変わらずギレーアはこういう時ぎこちない感じになるんだよねー。結局慣れることは無かったみたい。気を取り直して、最初はコールスに向かうんだよね、山ってどんな感じなのかなー。
「……まぁ、悪くはなかったかもな」
「ん? なんか言った?」
「何でもない」
正直どうしたら良いのかなんてよく解んないけど、なるようになれだよね。きっといい感じに進んでいくと思うよ。




