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仕組みに依る在り方

「来てくれてありがとうー。私嬉しいよー」


 観光しに来た人に握手して、サインとか書いて、お土産を買ってもらう。そんな感じの日々を過ごしてた。最初の頃は全然知名度無かったけど、一ヶ月もすればそこそこ話が広がって、今ではこんな感じ。給料は町長さんが出してくれてる。勇者ってなんだっけ?


「き、きてくれて、ありがとう」


 隣に居るぎこちない笑顔で観光客に接してるのは、うん。ギレーアだね。もう相当時間が経ってる筈なのに、まだこんな感じなんだよね。でも、話しかけても無視するとか、そういうことはしないから、良くはなったのかな。


「そろそろ終わりかなー。新しいお土産が販売されたみたいだから、それ見てから帰る?」


「いや、別に見なくても良いだろ。どんなものか大体予想がつく……」


「それは、そう」


 この前販売されたのは、デフォルメされた私が印刷された箱だった。中身は乾燥させたイカ、なんか美味しいらしい。その絵には何パターンかあって、剣を構えてる私とか、ギレーアバージョンもあった。うん、いつもこんな感じで、あまり代わり映えしないよね。


「それより、俺は疲れた。当分1人になりたい気分だ」


 虚ろな目でそんな事言ってるけど、もうそろそろ慣れても良いんじゃないかな? 私は別に今の状態は嫌いじゃないよ。だけど、勇者ってこういうものだっけなー、とは思ってる。


「私が居るから無理だねー」


「本当に俺は運がない」


 何だかんだ言っても面倒みてくれるんだけどね。あの引き抜いた剣<聖剣ウルティアム>勇者の象徴って事で貰ったんだけどね、私は剣とか使ったこと無いから、ギレーアが教えてくれたんだよ。だけど、私にはセンスが無かったのと、下手に技量を高めるよりも、力任せに振り回した方が効果的だろって。私は脳筋かな? 


「そんな事言わないで、仲良くしようよー。あれ? あそこに居るの誰だろ?」


 いつも泊まってる宿の前に、見かけない人が立ってた。まるで誰かを探してるみたい。私と目が合うとこっちに近づいて来た。白いローブを着てて白い肌だから、凄い白いって感じ。金髪で大人と言うより、子供みたいな印象。自信無いけど多分男の子だと思う。それよりも目を惹くのが、背中の白い翼と、頭の上の光ってる輪。もしかして、天使じゃない?


「お姉さん達が勇者? 一度会ってみたかったんだよね」


「そうなの? 私嬉しいなー。ところで君は天使だったりするの?」


「勇者さんは、僕の事天使に見える?」


 質問を疑問で返されちゃった。天使に見えるかー、って言われちゃうと、天使にしか見えないって思うよね。天使って物語だと、敵だったり味方だったり、結構極端なイメージがあるよね、私だけかな?


「おい、アッシャフォール。何をしに来た」


「あー、ギレーアじゃん。その姿は随分と久しぶりだね? 僕としては、そっちの方が君の美しさが際立って良いと思うんだよね。君らは天使と違って、自分の姿を自ら決められるのに、勿体ないよ」


「俺達は意思の元に定める。適当な事を言うな」


 アッシャフォール? そういえば昔に、町長さんが危険な天使みたいな事を言ってたような気がするよ。私の思った通り天使だったんだね。そうなると、やっぱり悪魔とは仲が悪いのかな? 一方的にギレーアが嫌そうにしてるけど。


「やっぱり天使だったんだね?」


「うん。僕は愛の天使であり、美の天使。そして、人を楽園に堕とす天使、アッシャフォールだよ。よろしくね?」


 ニコニコと笑ってるアッシャフォール君。長いからフォール君で良いかな? 危険って言われてたような気がするけど、そんな危ない人には見えないよ。私の勘違いだったのかも。


「私はオリジンスフィアだよ。よろしくねー」


「おいスフィア! こんな奴とよろしくしなくて良い」


 やっぱり、ギレーアは悪魔だから天使の事が嫌いなのかな? そういえば、よく物語とかで、天使と悪魔が争ってるみたいな設定があるけど、何でだろうね? そういうものだからって事なのかな?


「やっぱり、天使と悪魔は仲が悪かったりするの?」


「んー。そうでもないよ? 僕は悪魔に嫌われてるけど、アウトークシアは結構受け入れられてるしね? 解釈次第では、在り方が逆だった位なのに、なんでなんだろうね?」


「単純に、お前の性格が気に食わない」


 ギレーアが単純明快な答え言っちゃったよ。もうこれ以上はない簡潔さだね。それにしても、そんなに悪い人なのかなー、私からは無邪気な子供って感じのイメージしか無いんだよね。


「そんなに嫌かなー。綺麗な世界の為に、愛の溢れる世界の為に、掃除をすることがそんなに問題? 勇者さんはどう? 理想的な世界のためなら、多少の人が死ぬくらい、許容範囲でしょ?」


「そんな事急に言われても、私解らないよ」


「安心してよ。掃除だって言ったでしょ? 悪い人が居なくなれば、良い人の世界になるってこと。愛を与えあえる、理想的な世界だよ」


 うーん。そう言われると、確かにーって思っちゃうよね。急に世界の為に死んでとか言われたら、凄く嫌な気分になりそうだけど、悪い人が居なくなったら良くなる筈だもんね? それはそれで、良いことなのかも。


「おい! いい加減にしろ! お前の野蛮な考えはうんざりだ!」


「えー、僕は勇者さんに聞いてるんだよ? まぁ、いいや、今日はこれくらいにしておくね。それにしても、君は甘過ぎるよね。悪魔と天使の考え方が合わないように、悪魔と機械の考え方が合うとは限らないんだよ? それじゃー、また今度ねー」


 フォール君は大きく手を振ると、歩いて何処かに行っちゃったよ。いったい何が言いたかったんだろ。

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