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#20

「おい! あいつヤバくね?」


「あぁ、難易度最高の曲をノーミスだぜ!」


 繁村の人間離れした手の動きに、周りで見ていた野次馬は動画まで撮り始めていた。


「あいつ……」


 土井はそんな繁村を見ながらため息を吐き、女の子の方を振り向く。

 

「分かったよ、なんかまだまだ終わらなそうだし」


「じゃあ、隣きなよ」


「え? いや、このままで良いだろ?」


「いちいちマッチングする時間が面倒でしょ?」


「はぁ・・・・・・分かったよ」


 土井はため息を吐きながら、女の子の隣に座り、筐体に百円を入れる。


「あ、そう言えばアンタ名前は?」


「土井だ、土井隆昭どい たかあき


「そっか、私は神木恭子かみき きょうこ恭子で良いよ」


「はいよ・・・・・・てか、良くジャフコフでレイモンドと戦ったな」


「まぁね、私結構このゲームやり込んでるから」


「ふーん・・・・・・あ、くそ!!」


 話しをしながらでも恭子は強かった。

 土井はなんとか健闘したものの、恭子には勝てなかった。


「はい、また私の勝ちぃ~」


「お前強すぎだろ・・・・・・」


「へへぇ~まぁねぇ~」


 五戦五敗、こんなに負けたのは久しぶりだった。

 土井はため息を吐きながら、隣の彼女の顔を見る。

 やっぱり似ている。

 見れば見るほど恭子は瑞希に似ていた。

 そんな彼女を見ていると、土井はなんだか寂しくなってくる。

 もう彼女はこの世に居ないのだと、証明されているようで、土井はなんだか辛かった。


「はぁ・・・・・・悪いが、金ももう無いし俺はそろそろ行くからな」


「え? もう? あと一回くらい良いじゃ無い」


「金無いんだよ、それにあっちも終わった見たいだし」


 そう言って繁村が指さす方には、曲を終えて野次馬に拍手を送られている繁村の姿があった。


「じゃあ、そう言うことで」


「あ、待ってよ」


「今度はなんだ?」


「折角だから連絡先教えてよ、また付き合って欲しい時連絡するから」


「なんでそうなる……」


「練習相手が欲しいのよ、良いから教えなさいよ、減るもんじゃないし」


「生憎俺は他人に連絡先を教えるほどバカじゃない」


「もう他人では無いでしょ? 顔見知りくらいにはなったでしょ?」


「そんな無茶苦茶な……」


 結局土井は恭子の押しに負けてしまい、連絡先を交換した。

 いつもなら女子の連絡先を手に入れたと喜ぶところだが、今回は状況が違う。


「じゃ、私はこれで! またね!」


 恭子は連絡先を交換すると、そのままどこかに行ってしまった。


「出来れば・・・・・・もう会いたくないんだけどな・・・・・・」


 登録された名前を見ながら土井はため息を吐く。


「はぁ・・・・・・」


 恭子の顔を見る度に土井はあの夏の出来事を思い出してしまっていた。


「とりあえず帰ろう・・・・・・」


 土井はスマホをポケットに仕舞い、繁村と合流して帰ろうとする。

 しかし、土井はこのときさっさと一人で帰れば良かったと思った。

 その理由は、鬼のような形相の繁村がこちらをジーッと見ていたからだ。

 どうやら一連の出来事を見ていたらしい。


「やっべ・・・・・・」


 土井がそうつぶやいた瞬間、繁村は土井の元に走ってきた。

 土井はそんな繁村を見て、ダッシュでその場から逃げ出した。


「どぉぉぉぉいぃぃぃぃぃ!! お前! なんであんな可愛い子と連絡先の交換なんてしてんだよぉぉぉぉ!!」


「お、落ち着けアホ!! これには訳が!!」


「訳なんてあるかボケェェェェェェェ!!! お前はここで殺す!!」





「はぁ・・・・・・繁村の奴・・・・・・女の事になると人が変わりやがる・・・・・・」


 土井は家に帰ってきていた。

 あの後、なんとか繁村から逃げ切り、そのまま自宅に帰ってきたのだ。

 

「はぁ・・・・・・疲れた・・・・・・ん?」


 自宅に到着し、スマホを充電しようとするとメッセージが来ていることに気がついた。

 相手は恭子だった。


【早速だけど明日付き合って】


「はぁ!? いきなりかよ・・・・・・折角の年末だってのに・・・・・・」


 適当に理由を付けて断ろうかと土井は考えた。

 しかし、彼女の顔を思い出すとなんだか断りにくかった。


「はぁ・・・・・・もう一回会えた事になるのか?」


 あの夏の出来事から土井は何度ももう一度彼女と会いたいと思った。

 しかし、それは絶対に叶わないと分かっていた。

 だからだろうか、奇跡的に出会えた顔のそっくりな恭子の事を土井は少し気になり始めていた。


「恋って・・・・・・なんでこんなに面倒なんだろ・・・・・・」


 土井はそんな事を考えながら、スマホ机の上に置いた。

 気分転換でもしようとベットの脇にある本棚から漫画を取り出す。


「隆昭!」


「あい?」


「ちょっときなさーい」


 母親に呼ばれ、土井はベッドから立ち上がり母親の元に急ぐ。


「どうかした?」


「隣の部屋に新しい住人さんが入ったのよ、それで引っ越しの挨拶でお菓子貰ったのよ、だからこれお返しで持っていてくれない?」


「あぁ、良いよ」


 母親から綺麗に梱包された箱を受け取り、土井は自宅のマンションの隣の部屋に向かう。

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