男性客編 2話 ためらい
女性店員さんのことが気になってしまうなんて、どうにかしてる。
30年以上の人生、様々なお店で女性店員さんと接してきた。
洋服屋に入れば営業ノルマの下心満載の店員さんが近づいてくる。
スーパーなどの小売店で店員さんにチラチラ見られると、万引きでも警戒されているのか?と嫌な気分になったり。
自分にとって店員さんは、ただの販売マシーンであり生身の自販機みたいな認識だった。
丁寧な接客とか、笑顔で応対とか全く興味なし、さっさと目的だけ済ませれば他に要求するものはないのだ。
過去に何度か、見た目が好みのタイプの女性店員さんに接客をしてもらったことはあり
「この子いいな」と思ったことはあるが、よくよく考えたら店員さんは赤の他人。
とびきりの笑顔で応対されても、接客の作り笑顔なのはみえみえなので微動だにしなかった。
それよか、人見知りで消極的の自分に自発的な行動はできないのは了解済み、接点をつくるなんて到底無理な話なので、その場しのぎ、目の保養だけで終らせていた。
でも3日前にKスーパーで出会ったレジ係の彼女は特別、今までとは違う何かを感じた。
手が触れ合ったときの感触、目が合ったときの時間が止まったような錯覚
彼女は下向きで硬い表情だったが、レジ台を挟む約50センチの至近距離で真正面に向き合っていたときの心地よい空気感。
思い起こせば中学生のとき授業中に、片思いをしていた女子の後ろ姿を無意識に見惚れていたときに似た感情。
何よりも好みのタイプの女性に出会ったとき、今までになかった感情との違いは
「また会いたい」という欲求があったことだ。
正確に言えば「また会いたい」ではなくて「また見に行きたい」が的確だけど。
彼女の姿を見に行きたいのは山々なのだが、あの時の彼女の硬い表情、気味悪がられたのではないかという不安が脳裏を横切る。
人見知り、プラス感受性が強い性格でのせいか、人の表情や言動などに神経を使いすぎる傾向があり、ちょっとでも嫌そうな表情を見せられると迷惑がられてると察して自分からその場を去ることが多かった。
しかしあの日、彼女とレジでのやり取りを思い出すと、ひとつ気になる彼女の仕草があったのだ。
二人制のレジで彼女がバーコードスキャンを終え、僕が会計係の方へ移動した後に、彼女が僕の顔をチラっと見てくれたのである。
僕は真正面を向いていたので視界の端っこでボンヤリではあるが
彼女の首が僕の方向に動いて一瞬だけ見開いた目を認識できたのだ。
しかも僕の後ろにはお客さんが並んでいなかったので、二人制のスキャン係は、自分の仕事を終えたらレジを離れてもいいはずなのに、そのまま立ち留まっていたのだ。
もし自分が逆の立場だったら、嫌いな人は絶対に見ない、目を合わせるなんて以ての外で可能ならば、すぐさまその場から離れるだろう。
あの視線は良い意味に捉えてもいいのか?
冷静に考えれば、スーパーに買い物に行くだけなのに、なぜこんなに躊躇しなければならないのか?
悪事を働くわけではない、むしろ買い物客はお店にとって歓迎されるはずなのに。
明日、Kスーパーに行ってみよう。
彼女の姿を見に。
つづく。




