女性店員編 9話 平行線のまま
------話は現在に戻る。------
そして彼と初めて出会ってから2年が過ぎ、現在に至る。
ここまで彼を好きになるまでの経緯を語ってきたが、彼とは何の進展もなくただ平凡に日々が穏やかに過ぎていく。
冷静に思い返すと、ひと目会ったときには私の脳内に潜んでいる恋のスイッチが入っていた。
即ち一目惚れと言う言葉が適切だろう。
彼と初めて出会ってからの約2年間、彼とは業務上の会話を省いて雑談さえも交わしたことがない。
Kスーパーに入社して約5年が経つが、ほぼ毎日来店される主婦の顔馴染みのお客さまとさえも雑談をしたことがないのが普通なので、別に会話なしは不自然ではないと思う。
そもそもKスーパーは店員側からお客さまに業務以外で話しかけることは原則的に禁止されているのだ。
特定のお客さまはだけを特別扱いして他のお客様を不快にさせないようにとの配慮である。
仮にもし店員側からの自発的な雑談がお店で禁止されてないとしても、生まれつき人見知りの私がお客さまに気さくに話かけるなどハードルが高すぎ、ましてや本気で好きな男性になんて無理、無理、絶対に出来っこない。
ただ唯一の救いは、彼が頻繁にお店に来てくれること。
私たちふたりの接点はここ「Kスーパー」だけなのだ。
私が休みの日やバックヤードのお仕事で売り場に不在のときに彼が来店されて気づかない日もあると思うが、彼の姿を見れるのは平均週に2回、私が彼のレジを打つのは週に1回あるかないかのペースかな。
以前、彼の姿を半月以上見れないときがあって、もうお店に来てくれないのかと、いてもたってもいられない状態に陥ったこともあった。
半分諦めかけても、久しぶりに彼が来店されると心が再燃してしまい、やっぱり私は彼のことが好きなのだと気付かせてくれた。
それにしても、ひとりの男性に約2年間も片思いをするなんて自分でも驚いているが、冷静に考えてスーパーの店員とお客さまという関係は、接触時間が短すぎるのがネックであり、頻繁に顔を合すことができる学校内で同じクラスの男子との恋や同じオフィスの職場恋愛とは比較にもならないのだ。
2年間も好きでいられるのも理由があって、彼のルックスがタイプなのはもちろん
彼は一般の男性とは違う特別な何かを感じるのだ。
私が彼のことを目で追ったりチラチラ見てしまうからかも知れないが、レジの接客中以外に遠目から目と目がよく合い優しい表情を見せてくれることがある。
スーパーのような薄利多売の流れ作業の勤務中に接客中以外でお客さまと目が合うことは滅多に無い。ほとんどのお客さまは売り場に陳列してある商品とカゴの中身ばかり見ているからね。
自意識過剰ではあるが、彼も同じように私のことを意識してくれているのかな?
両思いだったらいいな
と、1パーセント未満の希望があるからこそ、ずっと彼のことを好きでいられるのだ。
もし完全に脈なしの一方通行の片思いだったら、とっくのとうに好きという気持ちは冷めていたはず。
このままのペースなら3年、いや5年経っても、ふたりの関係は平行線のままだと思う。
私から積極的に行動するか、何かのハプニング、何かのきっかけがない限り。
でも焦らず成り行き任せ、気の向くまま
こんなときめく恋もありかな?
と、物思いにふける自分だった。
つづく。




